外国人入国禁止措置に伴う、スポーツ業界への影響(2021年12月)
11月30日政府は全世界からの外国人の入国を原則禁止とする措置を採った。
外国人アスリートが参加するスポーツ業界にとっては、天と地が引っくり返るほどの事態となった。
11月8日より入国規制が緩和され、外国人アスリートの新規入国への道がようやく開いてから、僅か22日後の出来事だったからだ。
新規入国の規制緩和については、業所菅省庁(事業を所管する省庁)の審査を受けた場合に「特段の事情」があるものとして、新規入国を認めるものだった。
スポーツ業界は文部科学省の管轄になる。申請から入国迄、どれ位の期間を要するか確認したところ、概ね4~6週間という回答であった。
ところが状況が一変する、11月25日に南アフリカで高い感染力やワクチン効果減弱などの可能性がある、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が初めて報告され、翌日26日にはWHOが警戒度が最も高い「懸念される変異株(VOC)」に指定した為だ。
オミクロン株の海外における急激な感染拡大により、日本政府では11月30日0時より、原則全世界からの外国人入国禁止措置を採ることになる。
入国規制緩和措置は停止され、12月1日0時からは12月の1カ月間について、日本到着の国際線航空便の新規予約受付を中止するよう、国土交通省より航空会社に要請された。(※但し翌2日には日本人の帰国需要に十分配慮し、入国者の上限を3,500人をめどに、予約や需要動向にきめ細かく対応するとしている。)
以上が今回の入国禁止措置の大まかな流れである。
昨年より日本では、原則新規入国については禁止していたが、一部の在留資格の他、入国目的に「公益性」が認められる場合「特段の事情」があるとして、特例で新規入国を許可していた。
日本国内のスポーツではNPB、Jリーグ、Bリーグがスポーツ庁に許可を得て、外国籍選手を新規入国させる事ができた。
その他にISU世界フィギアスケート国別対抗戦など、大きな国際大会でも、外国人アスリートの新規入国が認められた事例がある。
ただ、全てのスポーツが入国を認められていた訳ではなく、全日本スーパーフォーミュラーやF1は入国を認められず、F1日本グランプリは二年連続で中止に至っている。
プロレスやRIZINなどの格闘技についても、年間を通じて一部しか入国できていない状況だ。
スポーツ選手以外の在留資格を含むと、10月末時点で約37万人の外国人が入国禁止措置により、入国に足止めをされているといった背景もある。
今回のオミクロン株の感染拡大に伴い、水際対策の問題とし議論されたのが、今まで「特段の事情」による入国者数があまりにも多すぎるといった点である。
10月は33,226人の外国人が特段の事情で入国しており、特例による入国を認める事で水際対策の抜け道となり、オミクロン株の流入に繋がる可能性があるとしている。
政府では特段の事情については、例外の極小・厳格化を議論するに至り、「厳に厳格な運用を行う。極めて必要性・緊急性が高く、このタイミングでその者が入国しなければ我が国の国益上重大な損害が生じるものに限る」と説明している。
今までの「公益要件」から「国益要件」へとハードルを上げた事になる。
日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、外交(外交官、領事官など)のビザ以外は、原則として12月2日より前に発給された査証の効力を一時停止するという厳格な措置も採られ、公用(国際機関の公務)のビザについても、今まではコロナ禍の中でも新規入国が認められていたが「必要性・緊急性の高いものに限る」とされている。
スポーツ界では前回認めらた、フィギアスケート選手について入国が認められず、12月9日から大阪で開催予定であった「グランプリファイナル」が中止されている。
プロボクシングでは12月16日に試合を予定していた、WBAアジア・スーパーフェーザー級王者ロルダン・アルデアが入国できなかった。
総合格闘技RIZINも、今年6月の東京ドーム大会においてトフィック・ムサエフが入国した実績があり、大晦日のさいたまスーパーアリーナ大会では外国籍選手5人の招聘を予定していたが、直前に入国ができない事態に至っている。
興行側からすれば「必要性・緊急性」が高いものであった。
入国禁止措置の期間については「緊急避難的対応として、予防的観点から11月30日から当面1か月の間」と説明されているが、12月31日をもって入国禁止措置が解除されるのか明確な発表はまだない。
スポーツではNPBの来シーズンが心配される。
NPBは11月にシーズンを終え、外国籍選手は本国に帰国している。
今回の入国禁止措置が発表される前に帰国している為、よほど慎重に考えている球団でなければ、現在入国が認められている再入国許可を得て出国をさせるなどの対応は難しかったと考えられ、埼玉西武ライオンズのように外国籍選手が全員退団している球団もある。
繰り返しとなるが、新規入国については「公益要件」から「国益要件」へとハードルが上がり、「極めて必要性・緊急性が高く、このタイミングでその者が入国しなければ我が国の国益上重大な損害が生じるものに限る」と政府から説明がされている。
仮に12月31日で入国禁止措置が解除されたとしても、それから文部科学省へ申請をして(12月31日迄は申請手続きが停止されている)、入国後14日間の隔離期間などを考慮すると、球団への合流は最短でも2月中旬頃になる。
入国禁止措置が延長された場合、当然に入国時期についても遅れる事になる。
連日のように新規外国人選手の契約が発表されているが、開幕までに入国が実現できるか不透明な状況だ。
内閣が一新された事に伴い、今回の入国禁止措置については決定から実行までのプロセスも、以前と比較し迅速となっているのも特徴的だ。
例えば今年の1月13日に新規入国禁止が決定された事例では、1月21日0時までは入国が認められており、入国禁止まで一週間程度の猶予があった為、それ迄に査証発給されていた外国人は入国できていた。
今回は11月29日に入国禁止措置が決定され、翌日の30日0時からは入国を禁止、本国で発給された査証の効力も一時停止するというものであった。
こういった政策の特徴についても情報収集しておく必要がある。
入国手続きを進めて本国で査証発給されても、今後同様の事態が発生した場合、実際に日本国内の土地を踏むまでは、入国の保証がないという事だ。
新内閣が組閣されたことにより、こういった政策の方向性の変化にも注目する必要がある。
これからも出入国の情報に注視していきたい。
※本情報は2021年12月12日時点の情報になります。
今後情報が変更となる場合がありますので、最新の情報は出入国在留官庁、外務省のHPなどで、ご確認いただけますようお願い申し上げます。
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