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 君の街におりる夜のとばりを
 僕の、この手のひらだけが
 ひけるとしたら、

 他には何ひとついらない、
 役目も よろこびも、
 朝日でさえも。

 君の心から
 導きだされた囁きが
 現実の大地を切り裂いて、

 ながて君の足もとをすくう、
 乾いた風が 僕の内側を駆けめぐる、
 僕はまた、君という不思議が
 花ひらくのを、観察する。

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