何者でもない者たちの物語:烈火の魔女と本読むゴブリン#5
#5.慌ただしい出立 翌日、早めに身支度を済ませたポーリンは、日の出前に待ち合わせ場所の東門へと向かった。
彼女の正装ともいえる、魔法使い用の黒いローブは背負い袋の中だ。いまは旅人風に、革製のベスト、腰当てとブーツを身につけ、深緑色のマントに身をくるんでいる。セピア色の髪は、ポニーテールにして後ろに垂らせていた。
魔法使いというよりは、小柄な女戦士のような出で立ちだが、腰のベルトに下げるのは、戦闘用の長剣ではなく、主に調理に使うための短剣と、魔法の触媒の入った小袋、