マガジンのカバー画像

何者でもない者たちの物語:烈火の魔女と本読むゴブリン

41
連載小説です。失われた魔法の探索の旅の途中、若き女魔法使いラザラ・ポーリンが、ゴブリン王国の王位継承争いに巻き込まれてゆく冒険物語です。迷い多き人生に勇気を与えたい、そんな志を持…
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

#40. 底辺の者たちの逆襲

何者でもない者たちの物語:烈火の魔女と本読むゴブリン#40. 底辺の者たちの逆襲  フバルスカヤがザギスと会ったのは、奴隷市場に引き渡される直前の、地下牢の中だった。  ザギスも、冴えない場末の牢番だった。やる気なく、上官の目を盗んでは、ずっと酒を飲んでいた。 「くくく・・・おまえも、酒が好きなのか?」  無精髭を伸ばし、髪は乱れ、ほこりにまみれながら、フバルスカヤは見張りのホブゴブリンに話しかけた。  ザギスは陰気な目を惨めな人間に向け、唾をはきかけた。 「う

#39. 酒解のフバルスカヤ

何者でもない者たちの物語:烈火の魔女と本読むゴブリン #39.酒解のフバルスカヤ  フバルスカヤの人生は、少しの栄光と多くの挫折に満ちあふれていた。  若くしてサントエルマの森の魔法使いとなったフバルスカヤは、氷の魔法を得意とし、カエルを使い魔として使う技も磨いた。彼は、将来を嘱望された魔法使いだった。  フバルスカヤには、魔法以外に愛したものが二つあった。  ひとつが、家族である。  サントエルマの森の魔法使いは、森にこもり、瞑想と研究に日々を費やすことが必要と

#38. 一騎打ち

何者でもない者たちの物語:烈火の魔女と本読むゴブリン#39.一騎打ち  <四ツ目>とヘルハウンドは、黄金の怪物ガエルに襲いかかった。  ヘルハウンドの牙と爪は、ゴブリンたちの剣や槍より強く、巨大カエルの表皮に傷を与えていた。  カエルは目をキョロキョロさせるが、ヘルハウンドのすばやい動きを追い切れない。さらに、<四ツ目>は鞭を巧みに使い、ヘルハウンドの背から樹木に飛び乗ったかと思うと、ヘルハウンドが気を引いた隙にカエルの背に回り込み剣を一付き。そして再びヘルハウンドの背

#37. 酒は足りているか?

何者でもない者たちの物語:烈火の魔女と本読むゴブリン#37.酒は足りているか?  逃げ惑うゴブリン軍を襲う巨大なカエルの前に、一頭の魔犬が立ち塞がった。  大きさでは怪物ガエルに到底及ばないが、地獄から来た犬の異名を持つ双頭の犬は、うなり声に凄まじい殺気を乗せて威圧していた。  怪物ガエルは動きを止めた。フバルスカヤが少し驚いたような声を上げる。 「・・・犬の頭が二つに見えるのは、酔いが回りすぎたせいではなさそうだなあ。ヘルハウンドか?三つ首でないのは残念だが、興味深