夜について

あまりにも暗い夜がある。

深い海の底で膝を抱えてひとりぼっちだと思ってしまう夜がある。痛いほどの静寂の中、心がきゅうと潰れ、脳みそがしゅわしゅわと溶けている気がして、誰か助けにきてよと心の奥底で小さく呟き、それでも誰にも触れられたくなくて、ひとりぼっちというか、ひとりきりというか、世界にわたししかいない夜。なんなら世界なんて存在しないと思ってしまう夜。

その時のわたしは、どう足掻いてもどこまでもひとりきりだが、きっとこの広い世界にはそんな夜を過ごしている人が他にも何人かいるのだろうと思う。海は広い。

わたしは同族と思う人にあまり出会ったことがない。(魂の置き方や光り方が似ている人という意味の同族。)ひとりだけ似てるかもなと思う人がいるけれど、彼がどんな人なのかは彼のつくった音楽でしか知らない。あと、彼のインタビュー。

誰かと結婚する時に、お互いのことを「太陽のようです」「月のようです」と表現しているのを聞いたことがある。できればわたしも太陽か月のどちらかに所属したいのだが、多分どちらにもなりきれていない。どちらにもなりきれないという所属があったらそこに所属している。自分がなににも所属できない、特別かもしれない、と思い込みたいだけかもしれない。だけど、わたしのいろんな面を比較的見せている人たちに聞いても「あなたに似てる人はあんまり思いつかない」と言われることばかりだ。孤独なのかもしれない。

どこにも所属できない分、わたしはいろんな方向にものごとを考えたり思いを馳せたりしようと意識している。それは、どこかに所属するためではなく、こういうタイプの人間だからこそできるからやっているのかもしれない。変幻自在にもならないけれど、変形は少しだけ得意だ。うねうねくねくねふわふわするのも素敵だとは思うか、わたしは芯がある人に憧れている。いつかわたしもある程度の太さの芯を持ちたい。

いつか、うねうねくねくねふわふわの中にも芯を持ち、夜を彷徨っている人の灯台になりたい。ひとりでいたい時は思い出せなくていい。見えなくていい。真っ暗じゃねぇか、光はどこだよと泣き喚きたくなる夜にほんのり光っている灯台になりたい。それはあなたを救いたいとかそういうことではない。というか、直接的に救うことは現実的に難しい。ただ、「光ってんなぁ」と思ってもらうためだけの灯台になりたい。灯台だからといってこっちに向かってこなくていい。光ってんなぁと思っててほしい。

それだけです。


本をつくります。秋に発刊することが目標です。全部の内容は公開しませんが、いくつかの原稿を公開します。ますはひとつめ。読んでくれてありがとうございます。

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