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トンデロリカ第一話原作(04)

『トンデロリカ』製作の舞台裏を公開します~。

今回お見せするのは、漫画本編『トンデロリカ』第一話の元になったプロットです。
(04)とあるように、四つ目のバージョンですね。

バージョンごとに設定自体も異なっていて、ロリカが内気な少女の案もあったりします。

文章の後に、漫画担当のアレ墨さんへのメモが載ってますね。

こちらの原作プロットは、漫画のイメージを喚起させる為の材料でして、これが直接漫画になるわけではないのです。
設定もストーリーもより良い案へ変えていきます。

という事で、最終的にこれをどう漫画にしたか、ぜひぜひ読み比べてみて下さい!
(漫画第一話はこちら!)

僕はネームが上がる度に「アレ墨さんマジかよスゲー!」って思いましたので!

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■■第一話■■


〈デラムク星〉

俺は影となって、空港に忍び込んでいた。
空港といっても、ごつごつした荒野に岩石が転がっているだけの殺風景な場所だ。
度重なるロケット噴射にさらされて、熱と汚染で草木一本生えなくなっている。

俺は「船」である四角いカプセルの間を走った。
空間ジャンプ出来るカプセルは、大型の兵卒用から小型の士官用まで雑多に並んでいる。

エネルギーをチャージしてあるのは一機だけだ。

あれだ。
目当ての士官用小型カプセル。
数多の戦場へ兵士を送り込んできたカプセルは、自らも傷つき汚れていた。

カプセルの扉に取りつこうとした、その瞬間。

飛んできた刃が、足元に刺さり、俺は反射的に飛び退った。

「なに!」

振り向く。
別のカプセルの陰から、見知った姿が現れた。

「レプセン……!」

「あんたの可愛がってた下人、彼だって根性なしでしたよ。レベル1の拷問で簡単に吐いた」

レプセンが怪しく手を動かす。
地面から剣が抜けて、宙を飛び、レプセンの手に収まる。

「さんざっぱら若い衆をイジメておきながら、自分だけは抜けようってんですか。舐めてますなあ」

「愛想が尽きたんだよ。この星にも、顔も知らねえ『首領』ってのにも」

「と申されても、どこにも行かせはしない」

並んだカプセル群から、「つるっぺた」がわらわらと出てくる。

「寄生生物(ニョロフニク)を使った新型戦闘服か。そんなもんを使うようになっちゃあ、いよいよこの星もおしまいだ」

「投降しなさい。あなたの戦闘技能を失うのは惜しい。金もかかっているしな」

「そのぴっちりスーツを着て、操り人形になれってわけか」

「再教育する手間を省けますからな。一度脱走を企てた者に自由意志など不必要だ」

「そうかい」

俺は飛び出していた。
両手に電磁ナイフを展開していた。

即座に発砲するつるっぺた。

俺は早かった。
光線の下をかいくぐり、つるっぺたを、「中身」ごと、斬った。
肉を、骨を、断つ。

切り捨てたつるっぺたを確認もせず、前へ。
向かう先に、レプセン。

レプセンの姿が六体に分かれる。
分身……!

『ピピピ……』
俺のバイザーが分身を分析する。しかし。
『呼吸音、心音、体温、すべて同数値』

だろうよ。俺が仕込んだ通りだ。

六人のレプセンが曲刀を振り下ろす。
六人が、別の剣技を繰り出す。


六人のレプセンと、俺が、交差。


俺はカプセルに取りついていた。
満身創痍。
戦闘服のあちこちから火花が上がっていた。


背後に、五人分の黒い影と、四つに分割された一人の体。

「バカな……」

「俺には分かるんだよ。一番ブサイクで惨めな野郎がお前だってな」

まるで鏡を見てるみたいにな。

俺はカプセルの操縦系に戦闘服のデバイスを接続した。
起動。


※ファルクスは気付いていないが、カプセルの内部には一匹のニョロフニクが忍び込ませてある。
こいつが、地球でつるっぺたを生み出す事となる。


ロケットエンジンに火が入り、カプセルを上空まで打ち上げる。
圧し掛かるGが思考を中断させる。
宇宙空間まで出たところで、ジャンプエンジンに切り替わる。

空間ジャンプのコンパスを開く。
逃げても無駄だと分かっていた。

「何をやってるんだろうな、俺は。どこにも、行く道なんかないのに」

脱走兵狩りは、執拗で凄惨だ。
いくら発信器を切ったところで、基地衛星をしらみつぶしにされちゃあ、いくらも隠れていられん。

突然、カプセル内に警報が鳴り響く。

「追手か!? 違う」

コンパスがうねっている。火花が散った。目標座標が定まらない。狂っている。

空間ジャンプ特有の体が引き千切れるような感覚が襲ってきた。

どこへ飛ぶんだ。
どこで死ねばいい。

いいさ。

どこでも。

地獄でも。


〈地球。ロリカの部屋〉


「ねえ、家庭訪問どうだったの? うん、この後うちだよ。どうしよ~。もうすぐ先生来ちゃうよ~」

無州倉ロリカの自宅の部屋。

家庭電話の子機を手に、中学一年生のロリカが話している。
ベッドにちょこんと腰掛けて。

ロリカは制服姿。


「先生どうだった? 格好良かった? ヨミには分からないのだよ。ふふふ……。え、筋肉? 目立ってた? 見たいな~。え、いや、たぶんロリコンじゃないよ。だから出来ないよ、告白なんて……。ちょっと、これから会うのに変なこと言わないでよー!」

不意に、電話の音が飛んだ。
「あれ? もしもし? ヨミ?」

バチバチと明滅する照明。
窓ガラスも軋みを上げる。

「何……!? 何……!?」
きょろきょろと周りを見回すロリカ。

そんな彼女の前に、突然、カプセルが出現した。
ジャンプアウトしたのだ。

ロリカ「ええーー!?」

カプセルの扉が開き、戦闘服姿のファルクスが、よろよろと出てくる。

ロリカ「ええーー!?」

※カプセルに忍び込んでいたニョロフニクが、ファルクスの目を盗んで、廊下へと逃げる。


「グルル……(お前が地獄の鬼ってやつか? 食ってみるかい、この俺を……)」

ファルクスの戦闘服に、ビシビシと亀裂が走る。

そしてヘルメットが、パコーンッと派手に割れる。
中から、犬のような、アライグマのような、ファルクスの素顔が現れる。

ロリカ「ええーー!?」


ファルクス、はあはあと荒く息を吐きながら、割れたバイザーの片割れだけを拾い、装着した。

バイザーをつけたまま、スイッチをいじる。
床に落ちていた戦闘服のパーツが光の粒子に分解され、消える(昇華)。


ロリカ、そんなファルクスを指さしながら、
「な、な、なにこのバカ面の毛むくじゃら!」


ファルクスのバイザー
『ピピピ……翻訳完了……』


ファルクスはロリカにゆっくりと歩み寄る。

それから、ロリカのほっぺを両手でつまみ、ぐにーっと広げる。

「お前だってバカ面じゃねえか! このつるモジャ野郎が!」

と一喝。

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今回のバージョンは、
作品全体のテーマを「大切なもの」にしてみます。
本当に大切なものは、心を前に進める力を与えてくれる。
ファルクスとロリカは互いを「大切なもの」に成長させていきます。
そして最終的に、「大切なもの」である相棒から与えられた力によって、互いに別々の道を行く事になります。

反対に、ニセモノは、心を縛り付けます。
レプセンが縛られているのはこれです。


「第一話、最悪な出会い」って感じになりました。

ファルクスの設定は「脱走兵」「抜け忍」にしてみました。
これは、以前劇画狼さんが電話で言っていたことを採用しました。


ファルクスがロリカの顔をぐにーってやったシーンは、最終話でルッカにもやります。
その時の顔が、ロリカとルッカで同じになるように。


戦闘服はギャバンのように、瞬時に装着出来るタイプにしました。
普段は光の粒子としてバイザーの中に収納されている感じです。


戦闘服のホログラム機能を、作品の中でちょこちょこ出します。


ファルクスが全てを失って、地球にやってくる話です。
そして、ラストはロリカと出会ったところで終わります。

ファルクスの戦闘シーンは、ベテランらしい冷静で残酷な戦い方です。
撃たれても慌てない、とどめを刺すことを躊躇しない。

ロリカとヨミは親友関係です。
フランクに話せる間柄です。
ファルクスが仲間を得られなかったのとは対照的に、ロリカは友達と楽しく過ごしています。


ニョロフニクのシーンは、
カプセルに忍び込んでいる描写だけあれば、地球に着いてからの逃げ出すシーンはなくても良いかなと思います。

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ぜひぜひ、漫画第一話をもう一度読んでみて下さいませ!

漫画って面白いメディアだ! と思っていただけるはず!


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