山田哲人のホームランに込められた覚悟
山田哲人通算250号ホームラン。
おめでとうございます。
プロ野球界では66人目、ヤクルトでは池山隆寛、バレンティンに次いで3人目という快挙だった。
ここで池山隆寛の名が出てくるなんて。
つくづく、あの人は「ヤクルトの顔」なのだと思い知る。
2000本安打のレジェンド、若松勉がつけた背番号「1」は、若松引退から2年のブランクを経て、1992年、池山隆寛の背中で息を吹き返した。
若松引退の前年、讀賣巨人軍の背番号1が永久欠番となっており、「ヤクルトの背番号1を永久欠番に」という署名活動も展開されたそうだ。
もしこの当時、背番号「1」が永久欠番になっていたら、背番号「1」をつけて14年ぶりの優勝をもたらした、神宮で跳躍する池山隆寛を見ることはなかった。
そして今、その池山から「ヤクルトの顔」を継承する山田哲人の背番号「1」を見ることはなかったのだ。
どういう経緯で背番号「1」が残ったのか知る由もないが、その運命の巡り合わせに感謝している。
若松勉、池山隆寛、岩村明憲、青木宣親、山田哲人。「ヤクルトの顔」という以外は、バッティングスタイルも守備位置もキャラクターも違う背番号「1」。
共通点があるとしたら、それは「覚悟」だ。
ここぞという時の山田哲人は、これまでもたくさん見てきた。
2015年日本シリーズ。ヤクルトの対戦相手は、2年連続パ・リーグ覇者、福岡ソフトバンクホークスだった。
4勝1敗、ソフトバンクの日本一を、我が本拠地・神宮球場で見届ける羽目になったヤクルトファンの心の拠り所は、唯一の勝利となった第3戦の「山田哲人3打席連続ホームラン」だった。
それから6年後の2021年。
背番号は「23」から「1」となり、キャプテンとして迎えた日本シリーズ第5戦。
8回裏、3点ビハインドの切羽詰まった状況で、山田哲人は同点スリーランを放った。
終盤に見せつけた、絶対に諦めない姿。
6年前に野球センスと身体能力で打ち切った3本のホームランとは違う、チームを牽引する責任を背負った「覚悟」のこもったホームラン。
キャプテンとして、このチームを勝たせる。その思いがフルスイングに乗り移った、気迫あふれるホームランだった。
4月2日土曜日は、4連敗で迎えた。成績は、3勝4敗。
負けが込むと、気持ちも沈む。中盤まで1対1と試合が動かない閉塞感が球場を包んでいた。
そんな空気を一瞬で変えるのは、山田哲人のホームランだった。
連覇の先の、常勝軍団を見据えた今シーズンは、苦しい立ち上がりとなっている。
しかし、キャプテン・山田哲人は、自らの手で勝利を手繰り寄せる「覚悟」を持って、グラウンドにいる。
気になるのは、それが孤軍奮闘になってはいないか、ということだ。
覚悟は十分に伝わった。あの250号ホームランには、山田哲人の覚悟と責任が詰まっていた。
そんな今だからこそ、周りを見てほしい。
ひとりじゃない。ともに闘おう。
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