見出し画像

自然の中で野球をする

2020年7月10日は、有観客試合の開幕日。きっと忘れない。

もうすぐ球場に到着します。
今日はここから。
ダイヤモンドだぁ!

SNSに上がるワクワクの声に、私もつい顔がほころぶ。千葉ロッテマリーンズ・谷保恵美嬢の「おかえりなさい」のアナウンスに、ついに泣く。

今日のスワローズ戦は、ほっともっとフィールド神戸の讀賣巨人軍ホームゲーム。日テレG+をつけ、ざんざん降りの雨に驚く。日本は広い。残念ながら雨天中止となってしまった。今日こそ、石川雅規を勝利投手に。この気持ちは熱いまま、明日以降に持ち越しだ。

今日のこの“有観客試合”を楽しみにして、全国から駆けつけた野球ファンのために、讀賣の捕手・岸田行倫が、雨のヘッドスライディングで場内を沸かせる。こんなこと「させられる」のは、大抵若手だろう。調べると岸田はまだ23歳。元気なパフォーマンスに、こちらも元気が出る。
ヤクルトの、こういうときの“べーラン担当”は、三輪正義だ。引退した彼を連れ出してもいいのだが、どこにいるのやら。ヤクルト側からは、誰も出ないのかしら。

出てきた!宮本丈。岸田と打ち合わせた後、走り出す。岸田は3塁へ逆走。競走か!どっちが先か。場内には、運動会の定番曲「天国と地獄」が流れ、さらに気持ちが盛り上がる。たけし頑張れ!勝負は岸田の勝ちだった。ハイタッチしてお互いのベンチに戻るふたり。今日の日を残念な結末にさせない、いい光景だった。
しかし、水たまりの力を借りたとしても、さすがプロの野球選手。きれいなヘッドスライディングだった。

画像1

▲R1.9.22 自身の引退試合で「やらされた」三輪正義・現広報

現地の人は、中止になって残念だったと思う。それでも、こうして野球選手という応燕する人の思いやりに触れたこの日を、どうか思い出としてその懐に深くしまってほしい。

私は、野球は自然に囲まれていてほしいとずっと思ってきた。
雨風、灼熱の太陽と身も凍る寒さ。中止になれば、その分試合消化は後回し。終盤の過密日程に苦しめられる。
なにより選手の健康を害する危険のある自然との対峙は、今の時代にそぐわないアナログな思考なのだろう。ドーム球場によって日程消化が成り立っている現状があることも、重々承知の上だ。それでも思う。

自分ではコントロールできない自然を相手にするということ。
そのことを受け止め、その中で自分のできることをすること。
そのできることが、野球であること。

私はただ、それが誇らしいだけなのだ。
いつからそんな風に、野球を感じ始めたのだろう。全く思い出せない。

自然と、自然の中で野球をする人。それは、野球場の風景になっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?