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訳あってレフトスタンド ●S×DB○9回戦

30年以上神宮球場に通って、この景色を見たことがあっただろうか。記憶を辿っても、思い出せない。

せっかくの山中浩史の先発。今日こそ勝利を。こんなときに、訳あってレフトスタンド、だったのだ。

望遠レンズはほぼアップのまま。ズームを変えない作業は楽なように見えて、ピントが合っているのかどうかも分からないほど、ファインダーの選手が小さい。
私は“接写好き”なのだと再確認する。

それでも、もうカメラなしの野球観戦はあり得ない。こんな日には、こんな日だけの写真を。そう思い直して、いつもどおり、撮って撮って撮りまくった。

外野手が近い。レフト・青木宣親がこちらに向かって走ってくる光景は、ここだけの風景だった。

遠くで投げる山中浩史は、いつもどおり体を大きく沈ませ、テンポ良く投げていく。
配球など、バックネット裏から見ていたって私には分からない。でも、山中が接写で表情を写せなくても、一球一球渾身の力で投げていることが伝わってくる。球場にいるということは、そういうことなのだなと、そう思う。距離じゃない。
そんな山中と一緒に写る、内野席からは撮れないマウンドの「YS」マークが誇らしかった。

いつもと違う角度だからだろうか。いつもより距離が遠いからだろうか。体温が、いつもと違う。それでも、戦う選手たちに置いていかれないようにずっとカメラを構え続けていた。そして写真は、戦う選手を捉えてくれていた。

内野ゴロでアウトになり、思わずヘルメットを地面にたたきつける、坂口智隆。
36歳という年齢は、ベテランとくくられる。キャンプでは短縮メニュー。落ちる体力に見合った練習時間の中で、1年間野球をする体をどう維持するのか。いや、ぐっちや雄平は、維持ではなく常に向上しようと努力している。
最前線で今も戦っているぐっちの体温を、距離が遠いせいで感じられなかったのだとしたら、私はファン失格だ。ぐっちに顔向けできない。

訳あってレフトスタンドにいた私は、遠くのビジター席で、勝手に落ち込んで、ともに闘っていなかった。
ごめんなさい。勝つために応燕するから。次こそ、勝とう。ペナント中の2日の休養は、貴重だよ。また、水曜日。

R2.8.9 sun.
S 0-4 DB
明治神宮野球場

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