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「導」山田哲人の今年の漢字

令和3年12月13日月曜日。今日、年末恒例の「今年の漢字」が発表された。

「金」。東京オリンピックは、閏年でない今年に延期された。開催自体に賛否両論が飛び交う曰く付きの大会で、オリンピアン、パラリンピアンは常に感謝の言葉を口にし、謙虚に戦っていた。

野球は、2008年を最後にオリンピック競技から外れていた。自国開催と競技人口規定の緩和という後押しで復活したが、次回2024年パリ大会から再び外れる。
野球というスポーツを世界に示す、数少ない絶好の機会に、日本は1点を削り出すチームプレーで金メダルを勝ち取った。

その中に、山田哲人はいた。
メダル授与は、プレゼンターからではなく、選手同士でかけ合うニューノーマルだった。マスクで半分隠れた顔でも、笑顔であることは伝わった。
MVPにも選ばれ、侍ジャパンも最優秀男性チーム賞を受賞した。

子どものころからオリンピックに憧れ、ずっと「オリンピックに出たい」と言っていた、てっちゃん。心から、おめでとう。胸に輝く金メダルは、山田哲人そのもの。誇らしく輝きに満ち、これからも山田哲人の野球道を明るく照らしていく。

山田哲人が戻ってきた東京ヤクルトスワローズは、セ・リーグ優勝と日本シリーズ勝利という2つの金メダルを手に、最高のシーズンを終えることができた。
高津臣吾監督の「絶対大丈夫」を合言葉に、一人ひとりが地に足をつけ、自分にできることを考え、一球入魂で敵に食らいついた結果だ。

そしてそこには、監督の言う「一枚岩のチームスワローズ」を作ったキャプテン・山田哲人がいた。

守備に着くときにはいち早くマウンドに行き、中継ぎのピッチャーを迎える。
ピンチの時のマウンド会議では、一番最後まで声をかけ続ける。
セカンドから外野を振り返り、常に外野の守備位置を確認する。

今まで見たことのなかった後輩たちとのツーショットを見るのが楽しみで、神宮に日参するシーズンだった。
日に日にキャプテンになっていく山田哲人を見つめ続けたその先に、優勝があり、日本一があった。
だから、「2年連続最下位からの大躍進」言われても、私にとってその結果は、必然のように思えたのだ。

山田哲人が、日本一になった後、手記で今シーズンを振り返っている。
昨年、国内FA権を取得し、悩んだ末に権利を行使せずヤクルトに残留した。
そして、自分でも「らしくない」と思うキャプテンを志願した。環境を変え、甘えを断ち切ろうという決意からだった。

主将らしいことはしていない。ただ若手に言うべきことは言った。開幕直後の中日戦。代走で出た新人の並木が三塁走者でスタートが悪くて本塁で憤死した。帰りのバスで横に座り「お前の立場上、足でアピールするのが大事。息の長い選手を目指すなら、できないとあかん。分からないことがあれば、どんどん俺に聞いてくれていい」と言った。バントを失敗して一人でイライラしていた塩見に「チームは勝っている。一人で雰囲気を悪くするな」と怒ったこともある。きつい言い方だけど期待しているからこそ言った。

ファンには、いつも若手を鼓舞し、励ます姿しか見せなかったキャプテン・山田哲人の、厳しさ。
気づけば山田哲人も、キャリア11年の29歳。自分より年齢もキャリアも若い選手が増えてきていた。
キャプテンとしてチームを見渡すことで、見えるものがあった。そしてそれを、臆することなく伝えたのは、優勝に向けて全員が同じ方向を向くためだった。

今年の初詣で地元・大阪の住吉大社へ奉納した絵馬に書いたのは、「導」の一文字。
神様に誓ったその言葉を守り、チームを優勝まで導く、名キャプテンになった。

野村克也の格言が、頭をよぎる。

「地位が人をつくり、環境が人を育てる」

いい野球を見せてもらった。勝ったから言うのではなく、素晴らしいキャプテンシーと、それに応える一枚岩のチームの、なんと清々しいことか。

そして私は、誇らしい。

山田哲人の今年の漢字は、「導」。だったね!てっちゃん!

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