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「代打・荒木貴裕」という仕事 ○S×DB●17回戦

今日の着弾も、いつもどおりの7時半だった。カメラを組み立て、バックスクリーンを見ると、文字が緑色だった。

今日から「燕プロジェクト」。黄緑の燕パワーユニフォームの無料配布。選手も燕パワーユニを着用し、球場全体が“ミドって”いた。週末は、レディースデーだ。こんなシーズンで、こんなイベントができる日が来るなんて。

「ピッチャー、歳内に代わり、藤井」
5回裏の攻撃。昨日に引き続き、先発投手を見ることができなかったが、昨日は4回、今日は5回。進行が早い日のようだ。せっかくの歳内デビュー戦だったのに。写真を撮れなかったことが、本当に悔やまれる。

1点ビハインドのまま、7回裏の攻撃を迎えたヤクルトは、村上宗隆のフォアボール、坂口智隆のライト前ヒットで1アウト1・2塁のチャンスを迎える。ネクストは、廣岡大志。
たいしが決めるのか。今月から流し始めたチャンステーマで盛り上がるスタンド。誰も声を出していない。それでも、神宮の体温が上がっていくのが分かる。廣岡大志という、ワクワクさせる野球選手にはうってつけの場面だった。

結果は、空振り三振。2アウトとなった。

「バッター、井野に代わり、荒木」

捕手・井野卓の代打で、荒木貴裕が登場した。後ろのマダムが言う。

「1割1分9厘」

そう、荒木貴裕は今シーズン、結果が出ていなかった。貴裕の笑顔を、しばらく見ていない。それでもベンチは、貴裕を根気強く使い続けた。しかしとうとう、8月31日に登録を抹消された。
1軍に上がってきたのが9月11日。2アウト1・2塁。ここで勝負をかけたいところで出てきた、荒木貴裕。何とか決めてほしい。その一心で、声を飲み込みチャンテを歌う。

きれいに打ち返した打球が、レフト前に飛んでいく。そのボールに見とれているうちに、2塁ランナーの村上宗隆が同点のホームインを果たした。

その後、逆転のタイムリー内野安打で、ぐっちのヘッドスライディングという稀有で貴重なホームインを引き出した宮本丈が、本日のヒーローとなった。
ヒーローインタビューで、ホームに走る坂口が見えていたという、宮本丈。
「お願いします」。そう願いながら走っていたそうだ。

点をもぎ取った、ヤクルト戦士たちが誇らしい。そしててっきり、今日のヒロインと決めてかかっていた荒木貴裕の美しいヒットを思い起こして、勝利に浸った。

代打・荒木貴裕。この役割の貴裕を見るようになって久しい。代打の仕事は、職人技だ。どの球を、どこに打つか。頭を使い、準備をして、一発勝負の緊張感を乗り越えるには、経験も必要だ。

だから、貴裕なのだ。打率ではなく、任せられる人が、荒木貴裕なのだ。

「スタメン・荒木」に焦がれる思いは胸の奥底にしまっておいて、10日ぶり連敗脱出すわほ。体も空気も、重かったことでしょう。お疲れさまでした。

R2.9.16 wed.
S 3-2 DB
明治神宮野球場

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