2024日本シリーズ最終戦に思う、福岡ソフトバンクホークスの横綱相撲
2024年の日本シリーズは、4勝2敗で福岡ソフトバンクホークスを下した横浜DeNAベイスターズの優勝で幕を閉じた。
横浜DeNAベイスターズの皆様、日本一おめでとうございます。
横浜は、26年ぶりの日本一。1998年は、マシンガン打線と大魔神・佐々木主浩が横浜ベイスターズ(当時)を優勝に導き、勢いそのまま日本一をもぎ取った。
横浜ファン曰く「長い暗黒時代」を経てたどり着いた頂点に、当時25歳でその優勝を経験している監督・三浦大輔は、まさに感無量。感動を噛み締めながら感激を抑えきれない、うれしい優勝監督インタビューだった。
ソフトバンクは、横浜スタジアムでの第1戦、第2戦の2連勝を手土産に、福岡へ帰って行った。
CS(クライマックスシリーズ)を勝ち抜きリーグ3位からの「下剋上優勝」を狙う横浜の希望を打ち砕くスタートダッシュに、やはりリーグ優勝チームに分があるのは当然か、と思わざるを得ない、危なげない戦いっぷりだった。
しかし、みずほPayPayドーム福岡の第3戦、第4戦、第5戦と、ソフトバンクは地元でまさかの3連敗を喫する。日本一を決められなかっただけでなく、逆王手をかけられ横浜に戻ることとなってしまった。
日本シリーズは、4年ぶりの進出だった。
それまでのソフトバンクは、2017年からの4年間、日本シリーズで優勝している無敵のチームだった。
しかも2018年、19年はシーズン成績2位からの進出で日本シリーズを制している。
短期決戦の戦い方を熟知した日本シリーズ常勝軍団が、満を持してというべきか、貯金42という圧倒的なシーズン勝利で日本シリーズに乗り込んできたのだ。ファンの期待もふくらむ。
だが、2018年第3戦から続く日本シリーズ連勝記録を「14」でストップさせ、そのまま4連敗。今日の第6戦は11対2という大差の敗戦で最終戦を迎えてしまった。
ソフトバンクのチームづくりは、他球団のファンから批判的に捉えられている。
各チームの大黒柱がFA制度でソフトバンクに移籍するケースが往々にしてあるためだ。
自軍に影響を及ぼさないファンですら、それを拝金主義として批判し、打倒金満球団に燃えている。
だが、チームづくりは各球団カラーがあり、本来他者から批判されるべきものではない。
福岡ソフトバンクホークスの球団理念は、「めざせ世界一!」だ。*1
これは、福岡ソフトバンクホークスオーナーで、ソフトバンクグループ会長・孫正義の経営理念でもある。*2
そして、福岡ソフトバンクホークス会長は、讀賣巨人軍V9という常勝軍団を知る世界のホームラン王・王貞治。
世界一を目指す経営者と、常勝軍団のノウハウを持つ世界一の野球人が、世界一の野球集団をつくろうとしている。
そのために、FA制度を利用し大型補強をし続け、四軍制を敷いて育成選手を1チーム分抱える。
すべては「世界一」のため。それが、福岡ソフトバンクホークスという球団のチームカラー、チームづくりなのだ。
そんな、世界一を目指すチームが、日本一を逃すという皮肉な一夜を迎えてしまった今日。
負けたら終わり、逆王手をかけられた大切な試合で、なすすべなく大敗するチームに、私は「横綱相撲」という言葉を重ねていた。
横綱相撲とは、横綱らしい堂々とした風格で、果敢に攻めてくる力士を受け止めつつ、それを余裕で返し勝つことを言う。
たしかに、今季のリーグ優勝は敵なしの圧勝で、横綱と呼ぶにふさわしい成績だったと思う。
だが、リーグ優勝から3年遠ざかっているチームが、横綱相撲を取る余裕を見せることが仇となった、ということはないだろうか。
横綱相撲は、相手を受け止める余裕があるものだ。
しかし、福岡では1得点しか取れず、無失点イニングはワースト記録となってしまった。*3
そして、最終戦の大敗。向かってくる相手をどんと構えて受け止める横綱相撲を展開する場面は、なかった。
仕事の評価というものは、100%の仕事をしても、120%の力を出さなければ「現状維持」でしかない。
「勝負は時の運」のスポーツであれば、準備だったり一球一球への考え方が、100を120にする付加価値となる。
勝つために取り組む姿勢=プラス20の部分こそ、横綱相撲を支え、勝敗を左右するのものなのではないか。
日本シリーズ中、ソフトバンクの首脳陣のコメントが舌禍を招いた。*4 *5 *6
揚げ足を取るようだが、今日の最終戦は、勝って当たり前の戦力を持つチームが、当たり前のように勝てるわけではないのが野球だということを知らしめたと思っている。
横綱である人が、横綱相撲をすることの厳しさ。
果たして、横綱・福岡ソフトバンクホークスはその重みを分かって横綱相撲をしようとしているのだろうか?
私はこんなことを思い、憤りながら野球を見ていた。
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