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渡邉大樹「勝たなければ」じゃなくて「勝ちたい」 ●S×DB○8回戦

私はどうしても、勝ちたかった。

讀賣が負けたからだ。

1位讀賣とのゲーム差が4.0。同じく4.0のベイスターズとは2厘8毛差の2位。この週末3連戦、2位3位の直接対決で勝利し、2位を固守したい。
そんな中での讀賣の3連敗は、大きな後押しだった。
1位讀賣との差は、讀賣がコケることも期待しなければならない厳しい状況であることに変わりはない。だからこそ、今日はチャンスだ。

でもそれは、ベイも同じだった。追いつき追い抜かれ、順位が入れ替わってしまった。

勝ちたい、絶対勝ちたい。

1点ビハインドの9回裏。1アウトで出塁した代打・宮本丈は希望だった。そしてその希望は、代走・渡邉大樹に引き継がれた。

だいきは足が速い。長距離砲で、俊足。それだけでワクワクする。この土壇場で足を買われた、一塁上に立つだいきを見つめる。

「ホームに帰ってこい!」

そう屈託なく言い切れる、野球選手。もう希望しかなかった。

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あっけない幕切れという慣用句が当てはまるのかどうか。
牽制アウト。だいきが「違う違う」と手を振る。高津臣吾のリクエスト。判定覆らず。
ゲームセット。
希望を絶たれた瞬間、だいきは何かをつぶやき、ベンチに戻ってきた。

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私はどうしても、勝ちたかった。目先の一勝がほしかった。目先の一勝が手に入らなくて、1位が落ちてきてくれた大チャンスを逸して3位に落ちたことが、悔しくてたまらなかった。

でも、よく考えるとその「勝ちたい」は、いつの間にか「勝たなければならない」に変わっていた。今日勝たなければ、2位を守れない。1位の背中が見えるところに居続けないと。この機を逃すと、次があるかどうかも分からない。
勝たなければ。勝たなければ。

プロの世界は、その考えで正解なのだろう。勝つために野球を極める。それがプロ野球集団で、プロ野球選手だ。いつもそんな焦燥感を抱えて、野球選手は野球をしているのか。胸が苦しくなる。

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足の速いだいきに対して何度も入った牽制を物語る、土埃で汚れたユニフォーム。
勝てなくて、本当に残念だった。恐れていた結果になってしまった。
でも、残念な選手などいなかった。頼もしく戦った野球選手が、そこにいた。

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だから、せめて私は「勝たなければ」をやめて、「勝ちたい」を極めようと思う。「勝たなければ」の世界に生きる野球選手を、「勝ちたい」の祈りで後押しする。それが私の役目で、いい。

だいきが笑顔で神宮に来てくれますように。だいきと一緒に優勝できますように。
だいきのために、勝ちたい。

大好きなだいきへのメッセージだ。明日もまた、神宮で会おう。

R2.8.8 sat.
S 4-5 DB
明治神宮野球場

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