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応燕したい人がいるということ

#カツオさんの好投にファンは拍手で讃える **

ツイッター上で一晩の間に広がったこのパワーワードは、拍手の絵文字とともに一気に拡散され、トレンドワード入りも果たした。

ナイスピッチング!
他球団のファンだけど応援します。
なんだこの優しいタグは。
200勝目指して頑張れ!
泣ける……
ヤクルトの誇り。
秋田出身なので応燕してます。
平和な世界。
19年間も先発ローテで活躍なんて、すごい!
次は絶対勝つぞ!
ヤクルトファンでよかった。

たくさんの野球ファンの思いが集結する、あたたかい場所だった。

昨晩、このタグに気付き、いいねを連打していたところ、初めて“いいね規制”を体験した。笑
スパム対策のこの規制は、解除はされるが時間を置く必要があるらしい。
夜も深い。いったん寝よう。そして、浅い眠りから覚めたこんな朝っぱらから、規制解除されたいいねの続きを押している。

石川雅規には、『200勝投手になる』という目標がある。その目標達成まであと29勝というところまでこぎつけた。

石川は、40歳の自分の体としっかり向き合っている。毎日10km走り込み、「投げ込む」調整をする。野球選手としては恵まれない体つきでも、プレートを踏む位置を変えながら一球一球丁寧に投げ込む制球力で、バッターをなぎ倒す。見ていて痛快なピッチングだ。自分のことをよく分かって、地に足の着いた行動をする姿に、こちらも自然と背筋が伸びる。

そして何より、チームの精神的支柱だ。登板前には、キャッチャーと相談し、投球プランを組み立てる。
年下だけになったヤクルトキャッチャーズが、最年長投手の石川とコミュニケーションを取るには、体育会系の縦社会では大変なことなのではないか。
ただ石川は、自ら人の輪に入っていく気さくな人柄だ。いいところは積極的に真似て、褒める。そんなことを自然にできる、壁のない人だ。

開幕初戦、好投を見せた石川の後を継いだ梅野雄吾が打ち込まれ、同点に追いつかれる。0回1/3、3失点で、石川の勝ちが消えた。チームをピンチに追いやってしまった。先輩の勝ちを消してしまった。梅野はベンチで顔を上げられない。勝気な梅野のこんな姿も珍しい。よっぽどショックで、悔しいのだろう。

そんな梅野に気付いた石川が、立ち上がり、梅野の傍に寄る。肩を叩き、一言二言話しかける。どんな言葉をかけたのか。梅野は幾度かうなずくのが精いっぱいだった。

年長者の振る舞いとして、当たり前のことだと言ってしまえば、そのとおりだ。でも、石川だってグラウンドで厳しい勝負の世界に身を置いている、現場の人間だ。思うところもあるだろう。それでもこういう行動を取るのは、石川が、『チームの勝利のために自分を置いておける人』だということの証のように思う。

この人は、誇りなのだ。

この人が笑顔でマウンドにいられますように。
この人が勝ち投手になりますように。
この人が、200勝投手になれますように。

そんな願いを込めて、必死で応燕したい人なのだ。

そんな“応燕したくなる人”に、勝ちがつかない試合が、2つ続いた。ファンは焦りがある。いくら盤石なこころとからだがあっても、それは未来永劫ではないことを、野球ファンなら知っている。そんな焦る気持ちを抑えて、ただ応燕する。ファンができることは、これくらいのことなのだとも思う。
でもだとしたらそれは、野球ファンの誇りだ。

拍手は今も鳴りやまない。この潔い拍手の音が、どうか石川雅規を後押しできますように。


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