山田哲人の表情筋の、緩やかな変化

9月17日金曜日。東京ドームのビジターゲームで、ヤクルトファンを沸かせる「事件」が勃発した。

『山田哲人、豊かな表情が“かわいい”と話題に』

7回表二死一塁。一塁ランナーの山田は、牽制で飛び出し挟殺プレーとなった。一時、一塁手ウィーラーのタッチをかいくぐり二塁へ到達したが、讀賣のリクエストによりリプレー検証となった。

フィールド内で結果を待つ間、侍ジャパンのチームメイト、坂本勇人と談笑する、山田哲人。リラックスモードの中、検証を終えた球審がグラウンド内に出てきて、アウト宣告をする。盗塁失敗。スリーアウトチェンジとなったその瞬間、山田哲人がテレビ画面に映し出された。

変顔!?

山田哲人の表情に、全国で観戦しているヤクルトファンは萌えに萌えた。
目を見開き「やっちまった」とでも言いたげな表情のあと、頬を膨らませる。
今までの山田哲人にはない豊かな感情の表現に、驚き、感激したのだ。

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山田哲人には、表情がなかった。いや、表情を出さない訓練を重ね、表情がない状態を維持しているように見えた。

山田哲人はスーパースターだ。2015年、ヤクルト優勝の立役者で、達成した「トリプルスリー」は流行語大賞にも選ばれている。
ヤクルトファンのみならず、野球ファンからも常に注目を浴びる存在だ。皆がその一挙手一投足に注目している。

様々な声援が、山田哲人に降りかかる。ときには、心ないヤジや見当違いの励ましに、カッとすることもあるだろう。
しかし、ヤクルトの顔たるもの、そのカッとした表情をファンに投げかけることはできない。

笑顔と怒気の二面性は、その乖離が激しいほど、対人関係において不信感を植え付ける。一度怒りの表情をファンに見せてしまえば、次からの笑顔は受け入れられない。

ファンに愛されるため、怒りを収める。野球選手の仕事は、野球をすることだけではない。野球を好きになってもらうために振る舞うことも求められる、厳しい職業なのだ。

山田哲人は、スターであるが故に、表情を隠す必要があった。だから今まで、山田哲人は表情筋を揺らさず、すべてをぐっとかみしめていた。
そんな山田哲人が見せ始めた「表情」。今年、キャプテンという役割を自らに与え、チームを見渡し、チームメイトに寄り添っている。

元々それほど表情豊かではない山田哲人が、人と接するということをし始めた。そんな、キャプテンとしての経験を日々積み重ね、山田哲人の表情筋は、緩やかに変化し始めている。

自然体に、演じることなく、キャプテンを、スーパースターを表現できれば、きっと今まで以上に野球を楽しめる。
実際、仲間に囲まれ、チームを勝たせるために邁進している今、山田哲人は、野球が楽しそうだ。

かーわーよーーーーーーーーーぉぉおおおぉぉーーーーーーーー!!!!!!!

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