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こっちだって元山飛優

佐藤輝明。初ホームラン。

打った瞬間は、撮りはぐった。昨日のデビュー戦、両親が神宮に足を運んでいたことは、夜のスポーツニュースで知った。初ヒットに、喜びと安堵の表情を浮かべる二人。グータッチで息子の門出を祝福する、明るい夫婦だった。

お父さんお母さんは今日、また神宮にいただろうか。打たれた田口麗斗と同じ目線のバックネット裏から、バックスクリーンに吸い込まれた打球を見送り呆然としている間に、佐藤輝明はダイヤモンドを一周していた。

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このルーキー。阪神ファンはさぞかし楽しかろう。だってコイツ、ヤクルトファンをもワクワクさせるのだから。

寄りによって、神宮で。ヤクルト戦で。コイツはやりよった。
初回、2点を先取した2アウト3塁の場面で、プロ初の2ランホームランを放った大型ルーキーは、登場したときの「あー、佐藤輝明かぁ」という、敵チームの嘆きをもたらすオーラをすでにまとっている。

今シーズン、コイツを見るたび、ずっとこうなのか?

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▲祝福と感謝の拍手に応える佐藤輝明

ヤクルトの先発・田口麗斗は、3回表に2点を追加され、なおも2・3塁の状況で降板した。2回1/3、6失点。どう調整するのか。シーズンはじまったばかりだ。

序盤に6点差を追うことになったヤクルトは、9回表を終わって3対9。終盤に来ても6点差は変わらなかった。あと3人で攻撃が終われば、このまま負ける。もう、打って7点取るしか道はないのだ。

9回の先頭・中村悠平がフォアボールで出塁したあと、その男の打席が回ってきた。

元山飛優。2021年ドラフト4位の大卒ルーキーだ。

3回から、スタメン・西浦直亨に代わってショートに就いていた元山は、阪神のベテラン・桑原謙太朗の初球、高めストレートをライトスタンドに運ぶ。

ホームラン!?やった!シーズン初カード、本拠地の神宮2戦目での初ホームランに、ヤクルトファンは驚きながらも、沸きに沸いた。正直、不意打ちのホームランだった。

それと同時に、私はこの試合を諦めていたことに気付いた。6点差を4点差に詰めた元山の姿を見るまで、「あと3人か」と勝手に決めつけていたのだ。

勝負を投げ出したアスリートを見ることほど、切なく、腹立たしいことはない。私の大好きなヤクルトのユニフォームを着た選手が、野球に対してそんな態度なら、私はヤクルトという球団に失望するだろう。

しかしそれは、逆の立場でも同じことだ。ヤクルトファンが勝手に勝負を決め、「あと3人」などと、淡々と野球を見ていたら、ヤクルト戦士は皆、ファンに失望する。

情けなかった。申し訳なかった。

佐藤輝明。同い年の、ウチのルーキーを知っているか。そいつは、親子ほど年の離れたオールドファンに、勝負を決して諦めない、戦う姿勢を見せつけるヤツだ。
こっちだって、元山飛優がいる。どうかしのぎを削って、野球道を邁進してほしい。

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打った瞬間は、撮りはぐった。

R3.3.27 sat.
S 5-9 T
明治神宮野球場

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