清宮幸太郎のホームランを、私はどこで見るのか

また見逃してしまった。清宮幸太郎のホームランを。

祝日の鎌ヶ谷スタジアムは、好天に恵まれた。絶妙なコントラストの青空と天然芝は、野球場の開放感を後押しする。
陽射しが肌を刺す。いつの間にか夏は終わっていたと、もの悲しい気持ちで花火を見上げた数日前の肌寒い神宮が嘘のようだった。

鎌スタ観戦は、7月21日以来二度目だ。真夏の灼熱地獄に耐えきれず、客席を離れコンコースへ避難している間、清宮幸太郎がホームランを打ったことを、場内アナウンスで知った。

そして今日、再び避難が必要となった晴天の鎌スタコンコースで、「清宮選手、ホームランです」のアナウンスを聞いた。
また私が見てないときに打っちゃって。

日本ラグビー界の雄、清宮克幸の息子がラグビーではなく野球をしているという驚きとともに、そのスポーツエリートの遺伝子を受け継ぐ活躍で注目された、清宮幸太郎。
高校生離れしたパワーとミート力。早稲田実業高校時代、1年生から夏の甲子園に出場し、Uー18日本代表として侍ジャパンのユニフォームにも袖を通した。
高校生のホームラン記録更新という記録とともに2017年ドラフトの目玉候補となった清宮は、8球団競合の末、北海道日本ハムファイターズが交渉権を獲得した。

スター高校生をたくさん獲得し、球団で育てる方針のファイターズへの入団に、野球ファンは納得し、その行く末を期待した。

ファイターズなら、安心だ。

超高校球児を任せるだけの信頼を寄せられる。そんな「育成のファイターズ」への期待もまた、超ド級だった。

清宮は、1年目から一軍帯同し、ホームランも打っている。先輩のお兄さんたちにかわいがられる、18歳の高校生だった。
ファイターズファン1年生だった私は、ファイターズというチームの空気を知らなかった。だから、清宮幸太郎を育てるベンチのあたたかさが、私のファイターズの知識となり、蓄積された。

2年目のオープン戦で、有鉤骨骨折という「強打者の宿命」と言われる怪我に見舞われた。復帰したものの、以降一軍定着とまでは至っていない。

2021年。4年目のシーズンを迎えている。もうすぐ、同い年の大学4年生が入団してくる今シーズン、清宮は札幌から声がかかっていない。

『HEAD NORTH(北を目指せ!)~夢の舞台へ~』

ファイターズの二軍には、こんなスローガンがある。清宮幸太郎とともに入団した当時の二軍監督・荒木大輔(現一軍投手コーチ)が発案した。
「鎌ヶ谷ファイターズ」から「北海道日本ハムファイターズ」を目指せ。
若い選手を後押しするこのスローガンどおり、清宮幸太郎は北にある夢の舞台にいるはずだった。

今日は、5対7でファイターズが敗れた。試合が終わり、スタンドに向かって鎌スタDJ「DJチャス。」がマイク越しに叫ぶ。
「清宮選手。ホームランボールプレゼントがあるのに、“場外”はやめて」
場外ホームランだったのか。悔しい。次は、絶対。しかし、

清宮幸太郎のホームランを、私はどこで見るのか。

「HEAD NORTH」。清宮幸太郎は、北を目指さなければならない。だから、次のホームランは、札幌ドームで打つのだ。だから私は、自宅で中継を見ながら、やはり今日のように思うのだ。

「私が見てないときに、打たないでよ!」

清宮幸太郎の野球人生に、幸(とホームラン)多からんことを。

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