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近藤弘樹に慣れていく

今日はいつもより、道が空いていた。入庫は、6時56分41秒。PayPayの支払い画面で確認できた。7時前に絵画館駐車場にいるなんて、平日ではまずない。

それでも、神宮球場まで歩く途中で、「ワーッ」という歓声と、スタジアムDJ、パトリック・ユウの「ムラカミ!」というアナウンスが聞こえた。

東京音頭が聞こえないということは、点は入っていないのか。

決定的瞬間を見逃したかもしれない悔しさを、そんな風に逃がしながら自席までたどり着くと、6回表、先発・スアレスが投球を始めるところだった。

スコアボードは、4回裏に2点、5回裏に3点。
速報を確認する。ついさっきの「ムラカミ!」が、スリーランホームランだったことを知る。

30分早まった試合開始で、5回終了時で1時間40分の経過時間ならそれは、攻撃時間が長い証拠だ。
それだけ長く、試合を見ることができる。感謝しなければいけないこの状況で、村上宗隆のスリーランと、太田賢吾のタイムリーツーベースに立ち会えなかった悔しさが、じわじわと胸に迫る。

むかつく。

スアレスは、6回2安打無失点でマウンドを降りた。
7回、今野龍太は、宮﨑敏郎にソロホームランを与えてしまうが、後続を抑え、1失点でしのぐ。
8回・梅野雄吾は、ようやく戦線復帰した、オースティン、ソトを代打で迎えることになった。
盛り上がる、ベイファン。皆、待っていたのだ。

梅野は、オースティンのセンター前ヒットとセンター・塩見泰隆の悪送球で、1アウト2塁のピンチを招くが、続く桑原将志、ソトを抑え、無失点でマウンドを降りた。

9回。リードのまま迎えたこの回には、勝利のクローザーを送り出す「Blah Blah Blah」(アーミン・ヴァン・ブーレン)が流れる。
イントロが終わり、いつもならここで鳴り響くのは、守護神・石山泰稚の「夢色傘 feat Alice」(泉佳伸)だ。

しかし今日は、違った。

「君は100%」song by ポルノグラフィティ。

近藤弘樹の登場曲だった。

近藤は、昨年オフ、東北楽天ゴールデンイーグルスからやって来た。
2017年ドラフト1位で入団した近藤は、3年で楽天を自由契約となり、ヤクルトと育成契約を結んだ。
背番号は「012」。後に、楽天時代の背番号が「12」だったことを知った。

育成ながら一軍帯同した春季キャンプで、近藤は猛アピールした。キャンプ中のインタビューでは、こう述べている。

「新人の頃のように緊張したが、あまり考えすぎないようにしている。(考えすぎると)体が動かなくなる。自分を表現できればと思う。武器は“高速シュート”」

一度地獄を見ている。生き残るために、気合いを入れて臨む姿がそこにはあった。

ヤクルトへの移籍により、岡山商科大学のチームメイト、蔵本治孝と再びチームメイトになった。
楽天時代に同僚で、一足先に移籍している今野龍太に「いろいろ教えてもらっている」と話していた。

「チームの雰囲気は違うが、何故かやりやすい感じはある。早く(ファンの)皆さんにピッチングをお見せできるように頑張ります」

そんな約束を語った近藤は、その実力が認められ、開幕前に支配下登録を勝ち取り、今日、その約束を果たした。

これから私は、「Blah Blah Blah」からの「君は100%」を、どれだけ聞くことになるのだろう。1時間半遅刻し、村上宗隆のホームランを見はぐって、むかつきながら迎える9回、ブルペンから走ってやって来る近藤弘樹に、慣れていく。

R3.4.13 tue.
S 5-1 DB
明治神宮野球場

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