2020_0606 私は妹だよ レビュー

(全敬称略)

私は妹だよ(2020_0606)

作 菅原悠人
https://www.sugawara.online/

https://20bf194a-2e52-4a91-aff8-d4266994a4b2.filesusr.com/ugd/f8d30d_1b7c9ce04d824cb3a1598ea10c4ad6f1.pdf

男 ゆう兄
https://twitter.com/yuu_aniki

女 机の上の地球儀
https://twitter.com/tsukuenoueno

総論

1:1のミニマルな構成でしたが
指標時間60分で、その実演は70分を超えるという
大変なボリュームでした。
作品のテーマ自体も少し重めでしたが
ストーリー進行に大きな動きがあり、
最後まで退屈せずに拝聴できました。

今回、この上演を拝聴して
少人数長丁場になる作品は、配役のバランスがすごく大事なのではないか
と感じました。

ある程度長い時間をかけて話が進んでいくと
どうしても聞き手の集中力がダレてきますが
甘い・しょっぱい・甘い・しょっぱいの
『みたらし団子方式』で音のキャラクターが異なる演者同士が
精確に緩急つけて話を進めていくと間延びしないものだと感じました。

男に関して

発声に結構な特徴があり
アタックが弱く、ディケイ・サスティンが長いという
立ち上がりが遅く余韻が残る声をされていました。

発生技術や演技云々を評するログではないので
それに関してどうこう述べるつもりはありませんが
私はとても個性的で一つの武器だと思います。

というのも、アタックだけ弱くてディケイ・サスティンは
しっかりしているというのは意外と居ないタイプだと思います。

特に声劇をやる男性は、多分意図的にだと思うのですが
アタックを強く意識されている方が多く
聞きやすいしタイミングもジャストにしやすい反面
最初に耳に入った時のフィーリングが似通ってしまう感覚
があります。

立ち上がりが遅く、後から追い抜いていくタイプは
アタックが強く高音がしっかり出てる方達の中で
逆に際立つので、個性的に感じるのかもしれません。

また、声自体に軽いディストーションがかかったような
荒々しさがあり、はじめて耳にした時に
古き良き時代のアメ車のエンジン音を連想しました。

「デュォルルル(この辺から音が大きくなって)ルルルウォォォンン!」

こんな感じ。(古き良きアメリカ!)

冒頭の演技は棘が含んだものですが、
終盤にかけて朴訥な感じに変化していきました。

それでも最後まで上記のアメ車感
保たれていました。ゆったりしてるけど適度な緊張感がありました。

本人のキャラクターが役に強く出る演者さんだと思います。
この持ち味を生かすためには、余白を長く取る必要があります。
結果、60分の台本が70分になってしまったとしても
それがアメ車の個性だと私は思います。

女に関して

声質と表情の使い分けがとても上手な方だと思います。
高音パートはとにかくアタックがしっかりしていて
ともすれば金属音になりかねないところもありますが
狂言回しや司会進行、地の文など
ジャストタイミングで聞き取りやすく埋もれない』
際にはこの高音パートは最適解だと思います。

少し音高を下げた声は一転して
シルキーで陰のある声質に変わります。

個人的にこの方の声の旨味はここにあるように感じます。
おもろうてやがて悲しき
このギャップが非常に強く作用して
ある種の投げ技感を覚えます。

明るく高い音で間合いにすっと入り込み
しっとりしていて、どこか暗い声で投げ落とす。

これ、うまく使うとハマるんですよ。
一段階、段差を噛ませられると
サビやブレイク前の一瞬の無音みたいに。
ものすごく声が頭に入ります。

結果、先ほどの男の評と組み合わせて
実はこの劇は1:1でありながら
1:2の3人劇のようにも受け取れます。

二人劇になるのか三人劇になるのか
女役の演技の幅とギャップがどれだけ大きいかで
印象が随分変わるんじゃないかなと思いました。

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