茶色い海に金魚(5/15 15:00~)レビュー

茶色い海に金魚(5/15 15:00~)

全敬称略

作:大沢ケイト
サヤカ:m.a
コウスケ:たかはらたいし

今回はdiscordを用いての上演でいわゆる裏劇でした。
原則裏劇レビューはしない方針ですが
私自身がこの一幕をとても楽しみにしていたこと、
またお二人からレビューの同意を得られたので
投稿させていただきます。

サヤカ:m.aに関して

m.aさん、冒頭の初手から
全力でお芝居をぶつけてこられて
登場から一分足らずですっかり聞き入ってしまいました。

最初からサヤカがバーン!と立っていると思いました。
立ち上がりとか様子見とかがなくて
もう最初からフルスロットル。
これやる人滅多にいません。
大体の人は最初ちょっと様子見マイクテスト感でます。

でもm.aさんもう最初からフルスロットル。
これは効きます。説得力が違います。

その後のお芝居も思い切りがよく
起伏に富んだ感情をダイレクトにぶつけてくる
とてもエネルギーに富んだものでした。

この作品は、サヤカの縦横無尽の振る舞いと
場面を引っ張っていくトルクの強さが
特に重要なのかなと思っているのですが
m.aさんのサヤカは最初から
アクセル踏みっぱなしでほとんど失速しない。

たまに(いや割と)噛んだとしても
それを違和感なく自然に通せるくらいの
迫力・説得力・高低差があって
死ぬほどウザいのになかなか捨てられない女の
良いところをしっかりと演じていたと思いました。

コウスケ:たかはらたいしに関して

過去何本かこの作品の上演を拝聴しましたが
たかはらコウスケは過去一、リアルに病んでます。

いかにもソレっぽい、どこかスカした
『かっこつけた病み風』じゃなくて

もう良いからお前心療内科行け。
心療内科すっ飛ばして精神科でもいいぞ。
いくのはサヤカさんじゃなくてあんただよ。
という、丁寧に精緻にしっかりと狂った男でした。

作品後半にかけてコウスケが巻き返していく流れに乗って
激昂していくのがある種の定石なのかなと思うのですが
このコウスケは最後までじっとりと湿っています。

ドロドロした情緒をサヤカにぶつけ切っておらず
最後の最後まで自分の中の水溜りにいるような
本当に病的で憐れな人を演じてました。

一言で言うならばもう閉塞そのものですよ。
いつまでも瘡蓋にならない傷口。

良いんだよ、もう出して良いんだよ、
って言うタイミングでも
最後まで出さない。出し切れない。でも逃げない。離れない。
うわあなんだこれってなる寒気。

これ、プレイヤーたかはらたいしの真骨頂では?と感じました。

吐き出しきれない澱のようなものをたたえながら
近づきはしないくせに離れることはできない、
こういうスタンスを終劇までキープしていたため
m.aさんが全力で振り回せるという
構造的な相性の良さもあったと思います。

二人揃うと茶色いどころじゃない、
そんなゾクリとするお芝居でした。

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