2020_0807 パラノーマンズブギー外伝『帽子を深くかぶると』レビュー

2020_0807 パラノーマンズブギー外伝
『帽子を深くかぶると』レビュー

(全敬称略)
ススキドミノ 作

総評

今までのパラブギとはまた違う雰囲気の
外伝にふさわしい作品だったと思います。

岩政悟と佐野の直球同士のぶつかり合いに
母として徹する幸子、密に入りすぎない酒井と
各キャラクターが外伝という作品の属性を
逸脱しすぎていない、連続シリーズの中の
一つの劇としてちゃんと一線引かれた上演でした。

岩政 悟:エス.ケーに関して

本編での岩政は非常にキャラクターが濃く
ハッキリとしたデザインを選ぶことができますが

今回のティーン岩政は迷いながら自分でも
迷走を理解していて、それでなお望まぬ道を進んでいる
という、非常に繊細な描写を要求される役回りだと思います。

この方、燻った十代の鬱屈とした感じを
声と角度と間でしっかりと伝えてきてます。

葛藤、息遣い、不安定さ、単純さ
17歳ならではの岩政悟を直球で演じたように思います。
クライマックスの『繰り上がり』は見事の一言。
演技の温度や高度を瞬間に変化させる
切り返しの精度と鋭さは完璧。

全編通してとても好印象でした。bravo!

岩政 幸子:すてらに関して

妙齢の女性をしっかりと演じられてる。
このぐらいの年代の演技って
わかりやすいデフォルメができないから
匙加減が難しいと思うんです。

演技自体も悟のペースについていくスタンスに
徹底されていて、フィナーレまで待ち続ける。

そういう意味でも単に母親という役だけでなく
母親という役目まで意識されていると思います。

酒井 ロレイン:ヒスイに関して

今回のこの方の演技は
ロングトーンが非常に印象に残りました。

スーッと気持ちよく伸びる音は
今回の役者たちの演技の中には
あまり多くなかったので
特に目立ったのかなと感じました。

今回の役回りではブレーキ役として
各所で活躍されていましたが
この人は演技がクロスフェードする
タイミングを見切るのがめちゃくちゃ上手だと思います。

入りと引きがスマートでスムースなんですね。
決して相手の芝居を邪魔しないです。

佐野 俊夫:アルコ(摂氏零度座長)に関して

佐野は68歳という年齢でしたが
この方は『68歳だからこういうデザインと演技』
というやり方は絶対していないです。

佐野の持つ役目から、本来の68歳の演技よりも
若く父性的な振る舞いを選んだように感じました。

中盤から後半にかけてゆっくりと
アナログのメモリを回すように
演技と声の年齢を下げていく差配と
要所要所のオーバードライブは流石でした。

ナレーション:オルット3に関して

今日のオルット3さんは
まさかのナレーションのみ!

早切り替えなしでゆっくり臨めたのか
いつもより湿度のある、ナレーションでした。

どこか懐かしく郷愁を感じさせる上演に
ぴったりの声でした。

音響:ゆう兄とガロ 動画:アダツ

今度こそラスト。
裏方組のお三方、長らくお疲れ様でした!

BGMのチョイスが非常にエモーショナルで
一七歳の衝動を彩ってくれてました。

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