2020_0614 東西戦争 〜最終戦争のその前に〜 レビュー

(全て敬称略)

東西戦争 〜最終戦争のその前に〜
机の上の地球儀 作
公演 2020_0614

総評

参加者のアイコンを統一し、背景画像を駆使するなど
創意工夫をしてファンタジー物に
重要な世界観をしっかりと盛りたてていました。

全キャラに設定が細かく存在することもあり
事前にいかに雰囲気を作れるかどうかが
とても鍵になると思います。

この劇、音響の仕事がとにかく細かいです。
非常に細かく手を入れています。
この下支えがあることでファンタジーに
とても強いリアリティが生まれています。

またこれは推測ですが、作者は
固有名詞をいかに美しく発声させるか。
に、腐心されたのではないかと思います。
ある意味、詩的(ポエトリーリーディング)な
要素が強い特殊な台本だと思いました。

短時間で行ったり来たりする
6人劇でしたが構成にはっきりと
メリハリがついているため
それほどごちゃごちゃした感じはしませんでした。

実存の名詞と架空の音づかいのバランスが絶妙で
架空の世界をとても上手に表現されていると思います。
ファンタジーなんだけどどっかにありそうな感じが出てます。

プレイヤーもバックアップもみんなで全員で
一枚の大きな絵を描くような仕組みで
とても好きでした。
参加者に愛された作品ですね。

この上演後に最終戦争の動画を拝聴しました。

総じて、非常に野心的な作品だと思います。
メディアミックスのお手本のようです。
いずれは声劇とラップをシームレスに行き来するような仕掛けで
聞いてみたいと思いました。

なお、冒頭の事前説明を噛みまくっているのはご愛嬌ということでw
本当にテンパってたんだろうと思いました。

ガリウス:まこに関して

音を尖らせた発声がとても似合う方です。
絞り出すような声の出し方をしても
喉を傷つけないタイプとそうでない人がいると思うんですが
この人は終始唸るように声を出しても大丈夫そう。
狼の二つ名に最適だと思います。

キリエル:麻音に関して

白粉の匂いが漂うな年増感が
出ているなと思いました。
鼻にかける声をうまく使って
実態の掴みづらい飄々とした感をうまく出せていると思います。
ちょっと歌を諳んじるように、ほのかに歌劇っぽく
演技したのかと推測します。

グェン:ユウトに関して

本当に三十路?と疑ってしまう
少年のような声は天性の武器と断言できます。
それから、この方は、
セリフに対するリズム感が抜群に良いと思います。
ここで言うリズム感とは、タメやメリハリとはまた違うもので
セリフがとても自然なリズムで発せられているので
長めのセリフもさりげなく入ってきます。

シャルロット:陽月に関して

声に演技に清廉な高貴さを感じます。
声の線が細いのですが、聞きづらくはない良いバランスです。

今回の演者さんの中で一番声の線は細いのですが
ラストの迫力は圧巻でした。

今回のエーベルヴァイン・トリオは
特に声のバランスが良いと思います。

ボールペン、クレヨン、筆ペンのように
声のキャラクターがかなり違っていてとても聞きやすいです。

パトリシア:おたえに関して

トリックスター的な振る舞いをする
幼い彼女の声ですが、実は全員の中で一番性的な声だと私は思います。
バリバリの淑女に子ども服を着せているような倒錯感があり
パトリシアというキャラが持つ怪しさを無意識に嗅がされることになります。

これがなんとも言えずミステリアスな雰囲気を醸していると思いました。

シド:麻倉墨生に関して

冒頭のナレーションがNHKの時代ものを思わせるような
ゆとりと余裕のある声をされてます。

ただ単に声が低いわけではない、むしろ比較的高いですが
ゆったりとした印象を与えます。
ややスタッカート気味な発声が小気味よく
放たれる風格にどこか親しみやすさを加えています。

総音響:Studio【KEMUЯI】 宣伝動画・画像作成:なる 

今回の上演をバックアップされたお二人
劇のクオリティを上げるうえで非常に重要な役回りです。
ファンタジー物の場合、こういう下支えがあるのとないのとでは
全然違う印象になると思います。
剣戟一つ鍔鳴り一つもファンタジーの骨子だと思います。

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