2020_0701 パラノーマンズ・ブギー EP5 ケチャップ色の世界 レビュー

(全敬称略)
2020_0701 パラノーマンズ・ブギー EP5 ケチャップ色の世界
ススキドミノ作

総評

EP5になり段々とストーリーが紐解かれて
話の筋がやや複雑になっています。
また、キャラクター同士の応酬も
相応の背景に押されながらになります。

そのため、全体的な空気が重くなりがちですが
その分、布石や伏線が回収された時の
ダイナミズムたるや過去最高だと思います。

参加者全員が『待ち』を理解し、意識して
要所要所で感情を爆発させる、そんな劇だと思いました。

棗・ヨミ:やこっこに関して

この方の演技は相変わらずスピード・リズム・音のサイズ感が
どれもかなり安定しています。

今回は話の中心点にいて、長い尺のセリフも多かったのですが
持ち前の安定性で、スラスラと心地よく
かつ冗長にならずに観劇することができました。

この特性があることで、シリアスな場面の
ド
中心に据えられた時にも非常に舞台にハマります。
場面設定が重かったり、ハードルが高くても
全体的に安定しているので興が醒めないんですね。

声自体も高すぎず、すらりとした声をしているので
同EPで新規参入された濃いキャラの濃い声たちを
うま〜く中和し長時間の上演を聴きやすくしてくれてます。

棗とヨミのスウィッチングのさじ加減は絶妙でした。
演じ分けようとして不自然にならず
それでいてはっきりとした境界線を作っていました。

レム(安藤):シトリンに関して

出番冒頭はゆっくりと踊るようなテンポで
絡みつくぬめりのある声を出しています。

一度、別の上演でこの方の声と演技を拝聴したのですが
この時はかなり雰囲気を変えていました。

話が進み、緊張を緩解させた後は
そこまでの対照が素晴らしいです。
アイスブレイク感満載。

細かいところでいうとこの人は
吐息混じりの声になんとも言えない不穏感があって
それが『花畑に埋められた地雷』みたいでグッときます。

木元:たかはらたいしに関して

ビットクラッシャーというエフェクトを連想させる
表現的なヨゴシを感じる声をしていると思いました。
ス音やツ音のジャキっとした感じが実に歯切れ良い一方で
相手のセリフの温度と高度に対して
瞬時に意図と創意を汲んで
的確なカウンターを当てていくような
返し技の演技を得意としているのでは、思いました。

エピソードのクライマックスでは
一人語りの自分の演技にさえ
カウンターを当てることで
駆け上がるようにテンションを高めていき

最後でどっかんと大爆発しています。

キリコ:ただゆずるに関して

可愛らしさと上品さを上手く両立させていると思います。

説教臭くなりすぎず、かといって
キャッチーにもなりすぎず。
良い塩梅で「女性ならではの自在性」を扱っていると思いました。

進行役の安心感とキャラクターとしての愛嬌を
並行して出せるのは貴重なタレントだと思います。

攻めるも退くもどちらもできるタイプで
役のタイプを選ばないのでは?

花宮:KiRi❇︎に関して

今回、中盤の登場から控えめにすっと舞台に上がってこられます。
台本上のキャラクターのカラーもあるのでしょうが
ご自身の出鼻では舞台の並びで自ら後ろに回った感があります。
全体的な出演料は少なめでしたが
その中で敢えて一部引き気味で演じることで、
後半に強く前に出れた印象が残ります。

クライマックスでは聴きやすいしゃくりと泣き声で
場のテンションを高く保ちながら
木元の大爆発にスポットライトを差し向けました。

今回はサポートに徹されたのかなと感じました。


速見:ススキドミノに関して

めちゃくちゃハマり役でしたね。
私は別の上演で、この方の声はカラメルであると感じたのですが
このキャラクターの渋み走った甘味はまさにカラメルのそれでした。

とても良い配役です。
特に、億劫そうに出す声が中毒性を持っていて
いつまでもいつまでも余韻を残し後を引きます。

テクニカルな部分でいうと
ビブラートというよりはヴァイブレーションという
表現の方がしっくりくる豊かな声の揺らし方
が印象的でした。
感情豊かで力強い速見の背中が見えるようでした。

大藤:ゆう兄に関して

最初期の大藤を思わせる余裕と間をとった演技から始まり
一気に半転してダークヒーロー然とした
荒々しい響きを聞かせてくれました。

息を止めたり、こぼしたりするハジメッチの演技は
なんとも言えない圧力があって良いですね。
低い音なのに密度は高い、とでも言いますか。

その影響でしょうか、粗暴な言葉や叫びであっても
知性と品が漂っているように思います。

シン:あんずに関して

過日、このキャラクターとこの演者さんの配合を
JUST(まさにこれ・この人)とレビューしました。

太く、少し苦く甘い速見の声と並ぶと
声のキャラクターが真逆に位置していて
結果的に彼女の特性がさらに強調されて感じました。

セイとの組み合わせではその強調は弱調に半転し
少しマイルドに聞こえ、相手によって表情が
コロコロ変わるような印象を受けました。

そして、この辺の瞬間的な顔色の移ろいが
台本描写と一致して実にうまく作用していました。

セイ:ニーヅに関して

正方形のように綺麗に整えられた声だと感じました。
一言にして、端正な声です。

アクが強いキャラ、色の濃い演者の中で
このキッチリと切り出された声は逆に特徴的に聞こえます。

平常、苔むした蹲のような優雅さがあるのですが
逆にこの端正な声が怒気や嫌悪を孕むと
それはもうすごい。殺気で人払いをされているようです。

この整った声が強く押し出されて少しだけ歪むとき
非常に強力な説得力と迫力を放ちます。

最後の女言葉も変に声色を造らず
臨まれていましたが、実に嫋やかでした。

N・コメンテイター・伝馬側近・教団員:オルット3に関して

今回も安心のオルット3節でした。
今まで以上にナレーションによる推進力が
要求される舞台だったと思います。

丁々発止の剣戟を読み上げるリズムや拍子が
そこはかとなく時代劇を思わせました。

集中力と持久力の必要な配役お疲れ様でした。

全話継続のナレーションで問題になるのは
コンディションの維持と声のキャラクターを
一定にしておく必要があることだと思います。

今回も安定のオルット3というのは
ある程度、一定でなくてはいけないという条件を
しっかりとクリアされていた安心二重丸のサインなのでした。

今回も動画はアダツさん、
音響はゆう兄さんとガロさんのタッグでした。

バックアップお疲れ様でした。

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