2020_0627 第1回こえ☆シネマ レビュー

(全敬称略)

総評

冒頭に進行ナレーションで音響チェックがありましたが
この気遣いありがたいです。どんだけいい演技されても
音量差が大きすぎたりすると素に帰ってしまうのです・・・。

イントロを始め、全編に散りばめられた
遊び心がとてもよいと思いました。
さながらシアターにいるようなギミックが随所にありました。

こういう余裕が文化を豊かにしていくと確信します。
とてもよいのですよ。心地よいのです。

エンタテイン(相手を楽しませる)の情動が感じられます。
その延長線上に、参加者全員が楽しそうなのが伝わってくる。

音響の入り込み方が極めて密でした。
SEを攻撃的に使うことで場のスピード感を引っ張っていくという
スタンスは従来の声劇のシステムではなかなか見受けられないです。

自転車のブレーキ音なんて普通出さないでしょ?
だからこそ圧倒的なリアリティが生まれる。

これは斬新なチャレンジ、新しい構造による改革だと思います。
今回の上演はこの形を世に知らしめるために
行われたと私は認識してます。

演技に関しては、台本を無下にするのではなく
演者さんたちが建設的にドリフトしているのが印象的でした。
劇の勢いによってセリフの一部を預けるように蛇行していく。
演者が心底楽しむことで生まれる副産物、
これは物語に色を添える多大な魅力だと思います。

深紅の約束(プロミス)ススキドミノ作

ジン:高橋紫檀に関して

一瞬若いように聞こえるが
実はめちゃくちゃ落ち着いている声です。。
この余裕が早いテンポのセリフを劇になじませています。

また副次的に他の演者さんのセリフに余裕を与えてると思います。
全体的なテンポに干渉できる人って意外といない気がしますね。

ヒジリ:イヅカに関して

俗っぽい表現極まるんですが、この人の声はキュンキュンしています。
キュンキュン、というのはアニメチックとかではなく
撃たれたら摘出しにくいドムドム弾みたいな意味です。

このキャッチーさ(初見殺傷力)は今回のようなイベントの一発目、
勢いが必要な時にバシッとムードを押し上げてくれます。
いわゆる『掴み』をがっつりやれる人だと思いました。

ソウヤ:赤月辰巳に関して

草原のような爽やかな声をしてます。嫌みが無いです。
爽やか(だけどちょっと技巧的)な声はたくさんいるんですが
この人の声と演技は嫌みがないです。
本当に爽やか。多いようで、意外といない。
ナチュラルボーン・フレッシュ・爽やか。

サチ:くまちゃんに関して

この人は目の細かい声をしています。
雑とか耳障りとかではなくてザリザリっと印象に残ります。
スピード感が要求される早い展開の劇では
このように短くても印象に残る声は有用だと思う。
パッと出てきても存在感がすぐに生まれます。


ナレーター:益荒男に関して

ナレーターという立場ではありますが
率先して世界観を作るために
自ら転がっていくような勢いが印象的でした。

今回上演のキャストの方たちの声は
比較的高い音にまとまっているので
この方の温もりある中低音が耳に新鮮でした。

ゴリラ座の夜

ハイジ:ススキドミノに関して

この人の声と演技はカラメルに似ていると思います。
基本甘いんだけど後味に苦味があります。
その旨みのピークは呼気を混ぜた発音にあります。
また、巻き込むような語尾のたたみ方もセクシーです。

ピーチ・ゴリラ:ぬるに関して

男性の声でも、ケバケバ荒れた節がないです。
とても聴きやすい。「うん」の一つに彼の魅力がある。

上品とも優雅とも違うとてもスムースな声。
実はこれ最も自然な(過剰演出でない)声の形の一つだと思う。
こういう声って癖になるよねえ。

あと、この人のセリフのリズムにはとてもリアリティがあります。
この自然なリズムが一人いると全体のバランスが引き締まると思いました。
ゴリラの時の宇宙人感はお見事。

フーコ:しまさぶろーに関して

お砂糖でコーティングされたような声。
とても聴きやすく、なめらか。

いたずらっぽい照れ方はお見事です。可愛いです。
女性には珍しい縦に厚みのある声だと思います
二部の四人の中では最も音の形が安定しています。
彼女の声の形があるおかげで他の3人は好きにやれてる感がありました。


ホズミ:ヒスイに関して

若々しさ、みずみずしさをしっかりと表しながら
不必要に装飾せず全体的にさっぱりしています。
「超ムカつくんだけど」って言われたい・・・。
一緒に日サロに行こう!(錯乱)

失礼極まりないんですが、こんな若々しい声が出るのか!と思った。
別の上演およびナレーションで聞いている声の人の娘かと思うくらいでした。

企画の進行もとっても滑らかでした。第二回を楽しみにしています。

音響:せりざわ 楽曲提供 flamboyband

もう演者の一人にカウントしてもいいんでないかという
くらいの頻度での積極的介入でした。
結果的に何が起きたかというと、
劇全体にスピードとドライブ感が生まれました。
多くの人が楽しむ上でスピード感は必須だと思っていたので
この『音響のせり上がり』はいろんな可能性があると思います。


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