2020_0609 死という対価 レビュー
(全て敬称略)
死という対価(2020_0609)
作 だいふく
https://haritora.net/sp/look.cgi?script=16085
シスター / 瀬良
https://twitter.com/sabamiso4410
アラン / peace
https://twitter.com/peaceVoiceActor
総論
教誨室の中で死刑囚とシスターが
最後の接見の中で生きることの意味を
少しずつ照らし合わせるお話しでした。
お互いに、とどめの一撃をどうさすか
間合いを探りような気配の冒頭に始まり
短めの台本は、過去が語られるにつれ
心理的距離が近づきどこかで共鳴するまで
一気に加速し、最後の別れまで突き進みます。
リズム良く進みながらも、場面・段階ごとの
二人の精神的なバランスと距離を違和感なく
滑らかに移していかれた印象があります。
テーマは重く、尺は短く
その結果として非常に切れ味のある内容になっていると感じます。
冗長になりすぎず答えを出しにくいテーマを扱いながらも
終幕後は妙な爽やかささえありました。
シスターに関して
この方の演技は相変わらず聞き取りやすく
発声も安定しているのですが
このシスター、とにかくダウナーに響きます。
奥に長く横幅の広い回廊を
一定の歩幅で進んでいくような厳かさがあり
その口調が澄んだ声質とあいまって
神聖さと底恐ろしさを湛えています。
中盤で過去を語り、感情を小爆発させるまで
ひたすら溜めて溜めて溜めて溜めて……
自分の過去をうろつくようにのそりのそりと
話す様は、ここで懺悔しているのが誰なのか
わからなくなるミスリードを誘いました。
教誨室のシスターなので
当然ですが、諭すような話し方をしますが
諭していた相手は、果たして本当にアランだったのか
それとも自分自身の人生だったのか
落ち着きと悲哀、そして含みのある豊かな演技だと思いました。
アランに関して
冒頭、教誨室でくすぶるアランは
自棄を起こしているとも、茹だっているともいえる
とぐろを巻くような雰囲気で
演技にもそれが濃く反映されています。
最低限話してはいるが、相手のことを受け入れるつもりも
自分の言葉を届けるつもりもない
というような喋り方で、音としてちゃんと聞こえているのに
観客である私の耳や脳には今ひとつ響かないという
不思議な体験をさせてくれました。
逆に、シスターは教誨で諭すように話すわけですから
その温度差がはっきりと浮き彫りになって
非常に対比が強く表現されていたと思います。
後半の小爆発を引き金にして
今度はアランが諭すような口調に変わります。
こうなると、とても聞き取りやすく
耳に入ってくる声に一変します。
この方の声はどちらかというと本来マイルドで
冒頭の巻きつくような喋り方よりも
諭すような話し方が非常にマッチするんだと思います。
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