2020_0801 スクリーンに一輪レビュー
2020_0801 スクリーンに一輪レビュー
(全敬称略)
羽白深夜子 作
総論
開幕前のアナウンスという手段を使われました。
なるほど、こういうやり方も良いですね。
ムードたっぷりにストリングとテノールを鳴らしながら
上品な案内が、私が今観劇の席にいることを
優しく伝えてくれます。
このキャストでのスクリーンに一輪は
幻想的な雰囲気を終始湛えたまま
役者それぞれの特性とキャラクターを活かして
上演されたと思います。
同じ台本でも解釈は人によって
これほど変わるのだなぁと
楽しく観劇させていただきました。
間鳥琴子:月宮はるに関して
この琴子には病的なまでの清らかさがあります。
透き通り過ぎて魚が棲むことが
難しくなるくらいの水辺があるとします。
その水辺は綺麗で澄んでいるのですが
遊んでいるとなぜか、だんだんと息が苦しくなってきます。
喩えとしてはいかがなものかと思いますが
毒に冒されるというよりも被爆するような感じなんです。
深いわけでもなく、足も容易くつくのに
なぜか溺れてしまうような錯覚。
どこかくすぐったい、甘酸っぱい声で
使い方さえ変えれば少女のようなのに不思議です。
やや細く絞ったブレスで、隙間なく
セリフを声に乗せて流し込んでくる芝居には
どこか水責めのような感があります。
この部分がこの方の独特の節回しかもしれません。
間鳥蒼士:ガロに関して
岩場で尖った砂利を踏んだときを思わせる
声と節回しを選んでいます。
今回の上演の琴子と白来は
フロート感のある演技をしていたので
この方の石っぽさ、ソリッド感が
上手く噛み合うバランスだと思いました。
この方は、キャラクターによって
大きく印象が変わるタイプの
演者さんではないので
逆に他のキャストとのバランスで
その作用と雰囲気が変わる側面を持ちます。
ネットリとした節回しが強いため
後半からクライマックスにかけてが
この方とこの劇との相性が最も良かったです。
白来冬哉:ゆーたこに関して
羊皮紙に綴られた物語を紐解くように
舞台の幕をそっと引き上げました。
上品さをたたえながらも優しさと優柔不断さの
両方を抱え込んだような今ひとつ
沸きれないキャラクターをデザインしています。
声を通すでもなく、浮かべるでもなく
浮かんでは沈むような声の置き方をされていて
後半過ぎまでの
この『敢えて振り切らない』というチョイスが
三人劇のバランスをしっかり支えていました。
しかし、クライマックスではこれまでの
当たり障りのない毒気なさを
ひっくり返して有り余るだけの振り幅を見せてくれます。
このダイナミズムは見事で、気持ち良ささえ伴いました。
音響:Studio KEMUЯIに関して
今回の上演の方向性を決めたのは
実はこの方の影響が強いように思います。
ぶつけてくる音楽によって芝居の印象はかなり変わります。
全編を通して白昼の悪夢のような気配を漂わせることができたのは、
音響のバックアップのおかげも多分にありますね。
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