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島って理想郷じゃないかと思うけど、理想郷が優しいとは限らないよね。

話が前後しますが、先日遠い島から来たズンさんの話、の続きです。

シマ島に来てわたしが一番驚いたことは、「いろんな人が助け合って生きている」という事実です。こういうと「まあよく聞くフレーズだよね」って思うでしょうが、助け合って生きていくというのはきれいごとでも何でもなくて、

いいも悪いもぜんぶまるっと受け入れる


ということを意味します。

たとえば徘徊する高齢者がいたとして、そういう人がいることをみんな知っているので、見かけたら誰かが家まで連れていきます。知的障害のある子どもや、おじさんおばさんがいたとして、スーパーでわめいたりからんだり時には怒り出したりしても、「おばさん、わかったわかった」といって誰かがなだめて事をおさめます。

男とか女とか、子供とか年寄りとか、日本人とか外国人とか、健常者とかそうでないとか、そういうわかりやすいカテゴリーを超えて「今この島にいる人たちで船をこいでいく」という空気は、これまでわたしが見たどの場所とも違っていました。

ああこれってもしかして理想の社会なんじゃないか、などと思ったりもするのですが、現実はなかなかきれいごとではすまされないものであります。

シマ島に「ヤンデンボのカズ」と呼ばれるおじさんがいます。

ヤンデンボが何を意味するのかはわかりませんが、齢60すぎ、肩より長いざんばら髪を揺らし、蛍光色のシャツとズボンに身を包み、ギラギラと目を光らせているカズはなかなか異様な雰囲気をまとっています。

そして一日中島の中をさまよい歩いては観光客にからんだり、店に入って文句を言ったりするのですが、正直何を言っているのか理解不能で、つかまって困っている観光客をよく見かけるのです。

そういうときは島の誰かが追っ払ったりして、誰かにこっぴどく怒られるとしばらくおとなしくなるのですが、なにかの拍子にまた元気を取り戻しては他人にからむ、ということのくりかえし。なかなかに厄介なおじさんです。

そこで、ズンさんです。
ズンさんがシマ島の神社を観光しているときに、ヤンデンボのカズが何やら叫びながら、つかつかとやってきました。うわ、まずい。どうやって追い払おうか。緊張しているとズンさんは全く動じず、笑顔でカズの相手をし始めました。

どうやらカズは数日前から神社周辺の掃除という任務を与えられたようで、神社にやってくる知らない人物をことごとくチェックしているようでした。そのことをズンさんはニコニコしながら聞いて相手をしていて、カズも珍しく気持ちよく帰っていったのでありました。

カズと普通に会話した旅行者は初めて見ました。ズンさん、すごいですね!と声をかけると、

「ああ、全然大丈夫ですよ。うちの島にも似たような人がいるんで。彼の場合はカマを持って追いかけてきますからね。カズさんはかわいいですよ♪」

さすが秘島、レべチでした。。。

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