見出し画像

革命のツイード

ここ5年程、僕はずっとAURALEEが好きでとにかくたくさん買ってきた。

シャツ、カットソー、アウター、スラックスにデニム、スウェットにニット。ほとんどのアイテムを買ってきた。

とは言えAURALEEだからという理由で買ったことはない。良いと思ったアイテムが結果的にAURALEEに多くあったからだ。

もちろん、皆様にブランドで買ってもらおうとは考えていない。

大前提としてこういう風に着たい、こう着たらお洒落だろうか、今持っている服にはこの服がきっと合う。

よく分からないけどもしかしたら格好いいんじゃないか。

そんな風に着飾る楽しさを、心躍るような感覚を大切にしながらフランクに選んで欲しい。

ファッションは良い意味でそれ以上でも以下でもないと思うし、だからいつまでも楽しいんだと思う。


ただ、今回は少し僕の嗜好に傾倒してしまうかもしれない。

それほど心を震わす、いや魂に響くようなアイテムに出会ってしまったのだから。

この人いつも心動かされてるなと思われるかもしれませんが、展示会にはそれを求めて行っている部分もあります。笑

自分の心が動かなかったアイテムがあったとして、自分自身でそのアイテムを皆様に紹介するとなった時に、僕はそれで皆様の心を動かす自信はないです。

決してそのアイテム自体の良し悪しではなく。

僕は自分の目で見て、手で触って、耳で聴いて、実際にやってみたその経験でしか人の心を動かす事は出来ないと思っています。

なので色々な経験を積みたいと思う今日この頃です。

とにかくやってみるという事が後々大きな財産になり、困った時に助けてくれることだってありますからね。

さて毎度のごとく話が脱線してしまいましたが本題に移りましょう。


僕をこの道に引き込んだと言っても過言ではないAURALEE。

本当に沢山買ってきたし、いつも期待以上のシーズンを、世界観を届けてくれた。

これ以上の物は中々出てこないだろうという服を作っておきながら、次のシーズンで易々とそのラインを超えてくる。

AURALEEのお陰で素材にも興味を持つようになって、羊の毛刈りをしに奈良まで行ったこともある。

なんなら綿を摘んでみたいし、実際に生産現場も見てみたいし、体験出来るならやってみたい事はいくらでもある。

それぐらい興味も持たせてくれた。

そんな僕にとって思い入れのあるAURALEEから最高のアイテムが届きました。

見た瞬間に買うと決めた。仮にタグが無くとも、値段がついてなくともこれは買っただろう。


AURALEE                  "HOMESPUN TWEED SHIRT BLOUSON"

画像1

画像2

画像3

画像4

これは最高傑作だと個人的に思います。


ふわふわなツイード。

そんな物は存在し得ないと思っていた。

無論多くの種類があるが、ツイードは元来、地厚でがっしりとした生地感。硬くて頑丈。

ヨーロッパでは親子3代でツイードのジャケットを受け継いでいく家庭もあるほど耐久性も高い。

だから無骨な印象だった。

それがどうだろう。目の前にあるこのふわっとしたツイードは。

まるでニットのようにトロッとしている。

画像5


ホームスパンツイード。

「家庭で紡いだ」という意味を持ち、元々は原毛を手染し、紡ぎ、手織りした物。

太さの揃っていない毛糸を用いることで生まれる不揃いさや素朴さ、手織りでゆっくりと織ることによるふっくらとした柔らかさ。

この2点が最大の特徴だ。

画像7

元々はアイルランドやスコットランドの農家を中心に織られていたが、現在の日本では北海道や東北地方で生産されているらしい。

このツイードはそれこそ東北地方は岩手県にある日本ホームスパンとAURALEEの言わば共同制作。


このHOMESPUNに関しては手織りではないものの、それに近いスピードでゆっくりと時間をかけて織っている。

それはそれはゆっくりと、おもむろに。

画像6

最新の高速織機に比べると悠久にも感じられる長い時間。

まさに幾星霜を経て織り上げられた生地はたっぷりと空気を含み柔らかく、包み込むように暖かい。

その存在感からは想像もつかないほど軽く、ふっくらとしている。

これなら肩もこらないし、インナーも着やすい。

これは間違いなく革命のツイードだ。

画像8


従来のイメージを覆し、ツイードを避けてきた僕に新しい世界を見してくれた。

袖を通した瞬間に頭の中ではファンファーレが流れていた。

今まで行ったことがない見たことがない物に触れる時の、世界がパッと開けていくようなあの期待感と高揚感。

これほど心踊る服に出会ったのは初めての体験だった。


ボタンレスのデザインも適度なリラックス感と、さらっと羽織るには最適で良い塩梅になっている。

画像9

ボタンレスなのが、という意見もあったかもしれないがこれはボタンレスで間違いない。

ロンTの上からでも羽織れる気軽さがある。

画像10


勿論裏地も。

画像11


そしブランケットステッチのクラフト感もまた良い。

画像12

画像13

この生地感だとほつれてしまうのでミシンだと叩けない。

手縫いなのか分からないけど手縫い感があって凄く良い。

デザインも含めて全てが完璧なバランスで完成されている。

画像14

画像15


そしてこの迫力のある見た目。

ウール、シルク、コットン、アルパカ、ナイロン。5種類もの素材をそれぞれ番手や染色、加工が異なった糸に紡績し使用している。

画像16

まるで「シャネル・ツイード」が代表的なファンシーツイードのよう。

使用している糸が多すぎて、岩井さんにも出来上がりがまるで想像出来なかったと言わしめるほど。

ファンシーツイードのようなゴージャスさに、ホームスパンツイードの粗野な風合いと柔らかさが加わった、今までにないツイードだ。

間違いなく歴代最高傑作の一つだろう。


5種類もの素材を使い、多くの糸を使い、一見すると派手かもしれない。

しかし、その素材たちを包み込むようにバランス良く纏まった姿は美しい。

その存在感ゆえに素材と同じように包み込んでくれるので何でも合います。 

グリーンを差し込もうが何とかしてくれます。

画像17


AURALEEが意味するのは「光る土地」。

この服はまさしくそれを体現している太陽のような服だ。

秋晴れの澄んだ陽光が、夏のヒリつくようなそれとは異なり、眠気を誘うような心地よさ。

画像20


そんな空間で着ているような優しいイメージが湧く。

でも袖を通すとそんなイメージとは裏腹にこの服が持つ圧倒的な力強さに高揚し、頭の中で鳴り響くのは夜明けのファンファーレ。

何回でも、何年でも大切に着続けたい。

画像19

画像20


今回はこの服に対する僕のイメージを好き勝手に述べただけになってしまいました。もう凄すぎて生地とかよく分からないので。笑

たまにはこういう回もあって良い......はず。


池本

AURALEE / HOMESPUN TWEED SHIRT BLOUSON








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?