別格のシャツ、中核をなす
こんにちは。池本です。
9月に入って朝晩は少し涼しくなってきましたね。
早く昼も涼しくなってくれと思うこの頃ですが、良いシャツが入ってきたのでご紹介しようと思います。
僕も密かにしっかりと狙っているシャツ。春夏でご紹介したシャツはありがたいことに買えなかったので。
POSTELEGANT「Cotton Typewriter Shirt」
非常に質の高いアメリカンシーアイランドコットンを使用し高密度に織り上げたタイプライター。
タイプ、えっ、タイプライター!?
袖を通したときに感じた柔らかさにしなやかさ。
包み込むようにふっくらとした生地感。およそタイプライターとは思えないハリコシのなさ。
全然ペーパーライクな感じがしない。僕の知っているタイプライターとは明らかに一線を画す。
ただ生地からは高密度に織られた物特有のオーラを感じる。
良いシャツって有無を言わさぬ存在感を放ちます。
実際に近くで見てみるとこの打ち込みの強さ。
格の違いを見せつけるように細かく、綺麗な高密度。
拡大して取ってますがコバステッチも内側1mmです。
相当レベルが高い。
さて、何故タイプライターなのにここまで柔らかいのか。
実はこのシャツ、使っている糸が60番手の単糸。
120/2(120番手の双糸)すらスタンダードになりつつあるこの時代に60/1(60番手の単糸)。
ここにこのシャツの魅力が詰まっていると思う。勿論素晴らしいはディテールは一旦置いといて。
そもそも単糸と双糸とは何かというところから。
「単糸」は読んで字のごとく1本の糸。
「双糸」はその単糸を2本撚り合わせた糸を指します。
基本的にドレスシャツで細番手の双糸が多いのは、本当にざっくり言ってしまうとその方が高級感が出て、強度が増すから。
双糸にすると単糸に比べて糸の太さが均一になる分風合いが良くなり、加えて80番手以上の細い糸を使用すると事が多いのでしなやかで柔らかい。
けれどよくある120/2のタイプライターのドレスシャツになるとどうなるかというと、硬くハリ感が出て膨らみのないペーパーライクなあの生地になる訳です。
タイプライターはそもそも平織りなので密度が高い。
120番手ぐらい細い糸を使ってもやっぱり硬さが出ます。それも良さ。というかタイプライターってそういう物。
ではこのシャツはどうでしょう。
60番手の単糸。
まず単糸だと双糸に比べる柔らかくふっくらとした生地感になる。
また、双糸に比べると糸が均一な太さにならないので毛羽だったり、ネップが出たりといわゆる綺麗な目面にはならない。
だがしかし、このシャツ。
60番手とは言え糸の品質が良すぎるが故に、そしてかなり高密度に織っているので目面は120番手の双糸に引けを取らない。
加えて120/2とかのタイプライターに比べてハリコシが無く柔らかい。
重ね着を想定して作っているということで納得した。
これならインナーにきてもごわつかない。
Vネックやクリケットのインナーにきっと合う。STRIPEも素晴らしいし、SAXの色なんて特に間違いないだろう。
そしてタイプライター特有のパリッとした肌触りをほんのり残しつつも、包み込むような優しく暖かみのある肌触り。
タイプライターなのにトロみがある。
これは革命のタイプライターだ。
ただ、写真では本当に伝わりにくい。伝えられない。
なのでこればっかりは実際に着て触って欲しいです。
このままももちろん良いけど、個人的には洗ってシワ感残して着たい。
こなれた雰囲気が出て良さそうです。
細部も少し見てみましょう。
襟はフラシ芯。
この運針の細かさ。インチでだいたい19~20ぐらい。
その上、襟端のコバステッチは内側1mm。一般的には5mmが多いけど、この運針で1mmとは恐れ入ります。
脇の折り伏せ。ここも相当細かい。3mm幅。
春夏で初めて見た時に驚愕しましたが、本当に技術力が高い。
紡績から生地、縫製、染色に至るまで一貫して国内屈指だと思う。
誤解を恐れず言えば「格」が違う。もちろん他が駄目とか悪いという意味ではないです。ただ純粋に、凄い領域で服を作っている印象を受ける。
袖は後付けではないですが、二枚袖で少しカーブ気味。
カフスが無く、袖のたまりが出ない。もちろんタック無し。
閂もしっかりしてます。
背ヨークは少し狭めかと思いきや、肩を前に出し背幅を広く取った仕様。
二枚袖の仕様と合わせてこれは着やすくなっている。
前肩にして可動を良くしつつ、二枚袖で若干前にカーブした袖。
人体の構造的にも着やすいし、これならジャケットのインナーにも着れる。
ここはPOSETELEGANTのコンセプト「エレガントのその先へ」がしっかりと体現されていると個人的に思う。
パッと見はドレスシャツでしょう。このシャツを着た人が前から歩いてきたら間違いなくそう思う。綺麗で良いシャツ着ているなと。
だが工夫された素材感やディテール、実際に袖を通すと、例えばテーラードジャケットのように鎧を着ているかのような感覚は無く肩肘張らないリラックス感がある。
身体に沿うような非構築的な要素が強い。
カチッとした見た目とは裏腹にフワッとした着心地をくれる。
ブランドとしての「核」
これを感じやすいのは意外とシャツなんじゃないか。
恐らく技術としての「格」を体現するリバーを見てなお、そう思う自分がいる。
「別格」の技術がブランドの「核」を支え、また「核」となる信念があるからこそ日の目を浴びる技術がある。
未だに展示会に行けていないにも関わらずこの熱量で紹介したくなる何かがある。
言葉よりも雄弁に、とはよく言ったものです。
決して分かりやすい服ではないけれど、是非手に取って袖を通してみてください。
池本
POSTELEGANT / Cotton Typewriter Shirt
合わせたボトムス
AURALEE / SUPER FINE WOOL COTTON TWILL SLACKS
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