理に適う
今シーズンの入荷も残すところあと僅か。
夏物のアイテムも一通り入荷が終わりました。
ブログを始めて約1ヶ月、拙い内容ながらも
目を通してくださる皆様、いつもありがとうございます。
次は何について書こうかなと考えていた時、このSSから新しくスタートしたのにご紹介していないブランドがあることにふと気がつきました。
前回入荷があった際にすぐになくなってしまったので、ご紹介しようにも出来なかったのですが。
今回ご紹介させていただくのは「YLÉVE」
このSSから待望のメンズラインがスタート。
お問い合わせも大変多くいただきました。
僕らもレディースラインはよく見ていましたし、
実際にアイテムを見に県外のお店をまわったりもしました。
その時から、はっきりと分かる作りこみの良さ、
色使いやサイズ感、そして素材の選定などセンスを感じる部分が多く、非常に印象的でした。
そしてメンズラインがスタートするタイミングでお声がけいただき、このSSからの取り扱いに至った訳ですが、そのYLÉVEからこの春夏一押しの半袖シャツが入荷したのでご紹介させていただきます。
本日の主役、OMBRE STRIPE S/S SHです。
言わずもがなレトロなオンブレ調のストライプが目を引く1着。
経糸にコットン、緯糸にシルクを用いたイタリア産の生地を使用。
しっかりとハリ感を出しながらも薄く、やや透け感がある。
色使いのセンスもさることながら、
何と言ってもこのオンブレストライプのグラデーション。
6色もの糸を用い、糸を連続させる部分とそうでない部分の繰り返しでこの濃淡のグラデーションを表現していますが、何とも贅沢。
前のポステレガントじゃないですが、南国のような解放感と少しエスニックな要素もあり、リゾートにおいてのエレガントさを象徴するな色と柄。
個人的に、こんな風にぼやっとした雰囲気は好きです。
とはいえ、オンブレチェックは90年代のグランジファッションに代表されるように、どちらかと言えばカジュアルでもっと言えば根本的にはアウトローなんですよね。
だから少しストリートの匂いもあるんですけど、
ストライプにするところがYLÉVEらしくて品がある。
僕が感銘を受けたのは色使いと生地のバランス。
生地を近くで見ると織目は隙間が見えるほど粗い。そしてこの軽さと透け感、上品な光沢にパリッとしたハリ。
ちなみにこんなに薄いのに何故ハリ感があるかというと、シルクの特性が関係しています。
シルク、日本では絹。
カイコガの幼虫である「蚕」がサナギになる時に口から糸を出して繭を作るんですが、この糸が絹です。
古来より高級繊維として扱われ、他の繊維としても非常に高価なのは皆さんもイメージがおありかと思います。
もう少しシルク自体についてお話したいところですが、本筋からずれる上に長くなってしまいますので割愛します。
この辺りは例のごとく、店頭でお伝え出来ればと思います。
シルクは「セリシン」と「フィブロイン」という2つのたんぱく質が主成分であり、2本の「フィブロイン」を覆う形で「セリシン」があります。
イメージで言うと巻きずしの具材が「フィブロイン」で米と海苔が「セリシン」のような感覚です。
それぞれに特徴があり、シルク特有の美しい光沢、しなやかさと滑らかな肌触りは「フィブロイン」が持つ性質です。
一般的なイメージを生んでいるのがこの成分です。
では「セリシン」はどうか。
「セリシン」は少し硬さがあり粘り気があるのが特徴ですが、シルクでハリ感がある物は少ないです。
というのも、この「セリシン」をアルカリ水溶液で溶かし「フィブロイン」だけを残して使うことが多いからです。
この工程を「精練」(練り)と言いますが、こうしてシルク特有の風合いを生み出している訳です。
ただ、あえて「精練」の度合いを加減することでハリ感を持たせる加工があり、度合いに応じて「半練り」「3分練り」などと呼ばれます。
実際にどこまで調整しているか具体的には分かりませんが、このシャツにパリッとした質感があるのはそういった部分から生まれています。
こうした加工を施すと風合いの調整や、非常にデリケートな素材である絹に強度を持たせたりと、より応用を利かすことが出来ます。
加えてハリ感と同時に、少しシャリっとした質感にもなるので春夏素材には適した加工でもあります。
つまり、理にかなった加工がされているシャツなんです。
長くなりましたがちょっとした素材についてのお話でした。
本題に戻りますが、この織りの粗さと透け感、恐らく織りの組織はオーガンジー。
通気性も良く、
夏に最適な季節感のある織り組織。
先述した色と柄使い、素材の選定から、
織りの組織まで、何故こうしたのかしっかりと意図を感じます。
ただオーガンジーは透け感が強いのが難点な部分も。その分レディースのアイテムとしては好んで着られる印象があります。
透け感が強いとインナーとのバランスが難しく、
敬遠される方も多いかもしれませんが、そこでオンブレストライプの配色。
ただ色味が良いだけではなくグラデーションの濃淡を調節することで透け感を抑えており、デザインがデザインとしてのみ完結せずに別の役割を果たしている。
これが本当に素晴らしい。
僕はこの春夏のYLÉVEの展示会には行けていないので、
意図したかどうかは自分なりに解釈するしかない部分もあります。
しかし、はっきりと訴えかけてくる
この一糸乱れぬ完璧なバランス感。
ふとある一節を思い出していました。
スペインはバルセロナにある、かの有名なサクラダ・ファミリアの主任彫刻家の外尾さんがガウディ建築について記した著書の一節です。
若輩者の青二才ながら、ガウディに興味を持った時期がありまして読んだことがあるのですが、本当にこの通りだなと。
ちなみに1番好きなガウディの作品は「カサ・ミラ」です。
夏用の服としてオーガンジー、しかし透けが強いのでこの配色のオンブレストライプで透け感を軽減。そしてその柄と色調の組み合わせが、同時にエスニック的なエレガントさを象徴している。
一切の無駄がなく、
一つ一つに意図が込められている。
デザインが表面的なデザインのみで終わらず、
構造的な問題を解決する役割を担っているので、一見派手に見えてもしっかりとバランスが取れ洗練されている。
まさしく「理に適った」服です。
見た目のインパクトに敬遠されず、是非ともお試しいただきたい1着です。
今週末もお待ちしております。
池本
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