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ただ、シンプルに

こんにちは。池本です。

皆様、そろそろ羽織物が欲しくなり始めた頃じゃないでしょうか。

昨今は暑い期間が長く、軽く羽織れるライトアウターの需要が高まっているように感じます。


そういったアウターを秋冬に買っておけば春夏も着れますし、物によってはコートのインナーにさしたりと意外と出番が多いのも魅力。

そんなライトアウターの中で、今期是非とも皆様にご紹介したいと思っていたアウターがあります。


取り扱いを始めて5シーズン目になるCale。

ハイクオリティな縫製技術に加え、オーセンティックでありながら既存のデザインにとらわれないモノづくり。

シンプルだが今までになかった服を生み出すセンス。

当店ではそれらを裏付けるかのように、徐々にその存在感を高めていき、皆様にお求めいただく機会が増えています。

特に今春夏はシャツが好評で、多くの方にご覧いただきました。

「らしさ」というタイトルで執筆しておりますのでご興味があれば是非ご覧ください。


さて、そんなCaleの中で今回ご紹介するのはこちら。

今期のCaleのアウターだと個人的に1番良いと思ったアイテムです。


Cale                                                                "WOOL HERRINGBONE VISTO BLOUSON"

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バラクータのGナインのようなスウィングトップ。

襟はドッグイヤーカラー。フロントはダブルジップ。

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裾や袖にリブは無し。アンブレラヨークもなく、タータンチェックの裏地も無し。Gナインに比べるとディテールはミニマルな部分が目立つ。

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袖はラグラン仕様。二枚袖で少し前にカーブ。袖先にはガゼットがあり、袖周りに少しゆとりも持たせ、インナーを選びやすくなっている。

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ポケットはフラップ無しのドットボタン。ポケットの裏地は恐らくフランネル。冬でも温かそうです。

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身幅、肩幅ともにややゆったりとはしていますが、決してオーバーサイズではなく、どちらかというと少しタイト。

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それ故にスッキリとした印象で、丸いシルエットではなく品のあるシュッとした大人らしい雰囲気に仕上がっている。


僕が何故このスウィングトップが素晴らしいと思ったかというと、それは理に適った服だから。


角度によっては無地に見える太ピッチのウールヘリンボーン。

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昨今、ヘリンボーンは細ピッチの物が多く展示会で見た時にまず疑問だった。

何故太ピッチなのか。

結論から言うとこれが一番「理に適っている」から。バランスが取れていると言ってもいいかもしれません。

太ピッチの理由は使っているウールとその加工に関係がある。

この生地には繊維が細く光沢の強いウールを使用し、そこにヴィスト加工と呼ばれるハリ・コシをしっかり出し、シワになりにくい加工を施しています。

ちなみにこの加工によるシワのなりにくさは感動ものです。

展示会の時に佐藤さんがいきなり袖を捻じりだして、全然シワにならないんですよ、と。

何周も捻じっていて流石にそれはなるでしょう、と思っていたら本当に一つのシワもない。

これはガシガシ着れるやつだと確信できました。

脱いで適当に置いても、こんな風に手にもっていてもシワにならないので良い意味で雑に扱えます。

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加えて打ち込みも強く、高密度に織られている。

そうすることによって生まれる光沢感と硬さ、先述した通りシュッとしたシルエット。


ここに細ピッチだとギラついて凄くゴージャスな感じになってしまう。

もちろんそういう服もあるが、それはCaleの目指すところではない。

だからこその太ピッチ。これこそが適正。


そして、ブラウンのパイピングテープ。

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ここに抜群のセンスを感じました。ここなのか、と思われるかもしれませんが。

着ると全く見えない部分。でもここにCaleなりの服作りに対するアプローチが現れていると思う。。神は細部に宿る、ではないですがさりげない部分にこそ優れたセンスと、デザイナーの意図が発揮される。

何故このパイピングが良いと思ったかを説明する前に、まずこの服には裏地が無いという事がポイントになります。

何故裏地がないのか。

それは裏地を付けると純粋に価格の上昇、そして厚みによるシルエットの変化が起こるから。

先述した通り諸々のディティールはゴルフジャケットとして作られたGナインのような丸み、野暮ったさが無い。シルエットもスッキリさせて綺麗に品よくまとめられている。

ここに裏地を付けると恐らく目指したシルエットにはならない。

なので、あえて裏地を付けていない。


ここで問題になってくるのが裏地がない事によって、縫い代が剝き出しになりその部分が身体に触れると硬く、肌当たりが悪くなりそのまま着心地に影響する。

つまり裏地を付けない代わりに、パイピングテープを施し縫い代部分を隠す必要が出てきている訳です。

ここでパイピングを付ける事自体はそれほど特別なことではないかもしれないけど、見えない部分だし同色のパイピングテープで済ますのが普通。

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しかし、そこに意匠を凝らしブラウンを持ってくることで、ただ機能を付け加え構造的問題を解決しただけでなく、あたかもそういったデザインであったかのように構成されている。


この生地だからこの縫製で、この縫製だからここにはこれを、という風に必要だからやっている事が殆どで一切の無駄がない。

服を作るという事について、ある意味では非常にシンプルなアプローチ。


だからこそ「理に適っている」

そして、それを突き詰める事で新しい服を作り出している。


シンプルの極致には斬新さがある。

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ただCaleの服の新しさとは、今までに存在していなかった大発見のような新しさではなく、既に存在しながらも見落としていた部分に光をあてているような感覚があります。

"人間は何も創造しない。ただ、発見するだけである。〜故に独創とは、創造の起源に還ることである"

神の建築家、ガウディの言葉ですがCaleには似たアイデンティティを感じます。

構造的問題を解決する為に、ひたすらシンプルに適正なデザイン、縫製を施していく。0から1ではなく、1+1を誰よりも丁寧にした結果3になる。

ふわっとしていますが、僕はそんなイメージを持っています。

アプローチの仕方が良い意味で異端というか。

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Gナインとは異なるディテールも、太ピッチのヘリンボーンも、裏地が無いことも、そしてパイピングテープ。

とって付けたような表面的なデザインは無い。


これら全てが意図されたことであり、一つ一つに意味がある。

そしてこの服を形づくっている。

だから洗練されていて美しく、着た時に気分が高揚する。


根本はオーセンティック。だけど確かな技術力によって作られる生地、そこに適したディテールと縫製を加えるセンスは異質。それこそがオーセンティックでありながらも、既存の枠にとらわれないものづくりの支えとなっていると思います。


因みに気持ちジャスト目に着るのが個人的にはカッコいいと思います。


是非店頭にてご覧ください。


池本

Cale / WOOL HERRINGBONE VISTO BLOUSON























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