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「やっぱり契約破棄していいですか!?」

原題:Dead in a Week: Or Your Money Back
監督:トム・エドモンズ
製作国:イギリス
製作年・上映時間:2019年 90min
キャスト:トム・ウィルキンソン、アナイリン・バーナード、フレイア・メーバー、マリオン・ベイリー、クリストファ・エクルストン

  芽が出ない小説家が行き詰まり、人生に幕を下ろそうと自殺を試みるが要領が悪いのか、死神にまでそっぽ向かれているのか自分の意志が悉く潰される。橋からの投身自殺で躊躇している場で遭遇した男性に名刺を渡され物語は始まる。

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 そもそも死を扱ったブラックコメディの取り扱いについては、特にこの時代(つまり現代)細心の注意が必要と承知しての以下コメントである。
  「死」そのものを茶化すことは出来ない元で制作する以上、加えてこの作品がノワールでない以上作品は死の「周辺」を描くことになる。
 「英国暗殺組合」こうしたところには如何にもといったセンスがある。作品冒頭、組合カウンタでの事務員とのやり取りも実に軽妙。壁に貼られたノルマ達成表といい、事務員と武器貸与のシーンは図書館での遅延常習者相手のような軽さ。全体としてどこにでも在るような平凡な営業事務所と変わらない。とてもここが人の死を生業にしているなど見えない。

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 上の写真のように絵だけ抽出すると暗殺シーンと言われても納得であるが、老齢のノルマ未達成暗殺者が「さぁ今よ」という肝心な時に靴のヒールが折れるようなこけ方をしていくコメディである。

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 武器を手にした上下の写真だけを見ると、表情といいノワール作品然。

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 最近の映画を観て感じることの一つにBGMが台詞並みの位置づけであること。これは良くも悪くもどちらにも該当する。作品はとても良い出来であっても、BGMが前時代的センスで残念だった作品に時折出会う。
 この作品ではBGMの効果を逆手に取り、明らかに展開はそうでなかろうシーンを盛り上げることでコメディに仕上げている。

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 要所要所にキラリとするシーン、印象的な台詞と散りばめられているのだが、全体としてバランスが悪い。予算が少ない地方の花火大会のようとでも伝えるといいのか。一つ一つの花火は見事だが、次が上がるまでに時間が掛かり過ぎて余韻を繋ぎ合わせることが出来ていない。

 その中で光っていたのがノルマをこなせない退職がせまっている暗殺者の妻。少ないシーン、当然限られた台詞で夫婦の絆を描いてみせる。最後はパートナーを守りろうとするGJの姿に助演賞ものだった。
★★☆


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