今週読んだ漫画(〜2022/01/26)

―――希少種である獣人の男・飛高繋がクラスに特例生として転校してきた。急に紛れ込んだ"獣人"という初体験に戸惑いながらも、彼の当たり前な優しさに触れたことで段々と恋に落ちていく主人公・朝霞万理であったが、相性の良すぎる万理の『ニオイ』を前に繋は獣人としての本能を刺激される様子で……ピュアに煮詰まった異種間高校生ラブストーリー、開幕!―――

■獣人×人間の傑作TL作品である『獣人さんとお花ちゃん(全2巻)』と世界観をガッツリと共有した同作者さんの学生モノ少女漫画が始動。手放しにめちゃんこ面白いです。なにを置いてもまず絵作りが魅力的すぎますね。毛先の1束1束まで精緻に描き込まれた少女漫画として見所たっぷりの線細めの絵柄で、さらに主人公である万理ちゃんは殊更にちんまいチビッ子な女の子として描かれているのに――そんな画面上に突如として一切の誤魔化しもなく人間よりも遥かに逞しい"獣人という生き物"の体躯がドン!と現れてしまうのだからこれに萌えずに何に萌えるというのか。1コマ1コマが否応なしに目を引いて強いですわ。■繋くんが隣席にやってきた際の万理ちゃんの「いつもキレイだってながめてた 大空が大きなカベで覆われた」という静かな独白がとても好き。繋くんをありのままの男の子として受容する万理ちゃんの優しさを描きつつ、その上でしっかりと逃げ道なく繋くんを人間離れした姿形の存在としてこの現実世界で描き続ける真摯さにも見惚れます。■ずぶ濡れになった繋くんにシャワーを貸しつつも「でも獣人よね?大丈夫なの?」とはつい素で訊いてしまう万理ちゃんの母親の描写などが最も分かりやすいなと感じましたが、どれだけ人柄の良さそうなキャラクターであってもやはり前提として獣人とのコミュニケーションに一定の距離を置いているところがおしなべて共通するこの世界の常識として描かれている部分も好印象。『思ったよりも世界は優しい人で溢れている』の切り口で繋くんを受け入れていく方向には舵を切らずに、あくまでも『思ったよりも人々はちゃんと話せば分かってくれる』の主軸からブレないところが良いですね。これに関しては前作の逆パターン(※人間という種族に対する根深い嫌悪感を抱えている獣人達に体当たりでコミュニケーションを取って徐々に徐々に受け入れられていく主人公の図、が前作)を綺麗に踏襲して行っていてそこもまた読み応えがあります。■それにしてもタイトルが秀逸ですね。タイトル回収の半分を1話でやってのける豪胆なセンスにも脱帽。「ここの生徒なら大丈夫ですよ 一緒に越えちゃいましょう」と塀の上から万理ちゃんが笑顔で手を差し伸べたあの瞬間そのものが繋くんにとっては大きなきっかけだったんだよな~~というカプ萌えが唸りを上げる。■前作が前作(しっかりと沢山のエッチがあるTL作品)かつ、忌み月(獣人における発情期の意)の設定などもあちらと明確に共有している結果、あっ成る程~~、ここで2人が下手を打ったらマジの性行為になっちゃうんだな~~…というタイミングが読者側としては露骨に分かるところもなかなか、悪い読み方ではありますが、ハイ、堪りませんね、ウッス…。次巻もめちゃくちゃ楽しみです!

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