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Disarmonia Mundi『Mind Trick』(2006)

イタリアはAviglianaにて、Ettore Rigotti(当時はDs)を中心に1999年に結成されたデスメタルバンド。

Nebularium』でシーンにデビューし、質の高い楽曲を作り続けているが、相次ぐメンバーチェンジで、2024年現在残っているのはEttoreと2002年ごろに加入したClaudio Ravinale(Vo)のみ。

2ndアルバム『Fragments of D-Generation』発表時からSoilWorkのBjörn "Speed" Stridが加入しており、ボーカル2名体制+ギター、ベース、ドラム、キーボードの7名で活動していた時期もあった。
(このタイミングでEttoreはドラムからギターにチェンジ)
この『Fragments of D-Generation』は各方面から好評を得たものの、大所帯過ぎたのか、リリース直後にEttoreとClaudio、Björn以外が脱退、つまり楽器隊はEttore以外誰もいなくなってしまう。
その影響でプロモーションツアーも満足に回れなかったとの事。

しかし、そんな危機を天才Ettore、無敵のマルチプレイヤーっぷりを発揮し、全ての楽器を一人でレコーディングするという離れ業を駆使して乗り越え、作り上げたのが本作『Mind Trick』。

メロデスとしての美しさの影に見え隠れする危うさ、そしてメタルコアの力強さや勢いを併せ持ったいいとこどりの秀逸な一枚となっている。
もっと有名になっていいのに。

Mind Trick


ちなみにこの作品以降、Ettoreはプロデューサー業に重きを置き、DestrageBabymetal、2011年にスタジオジブリのコンピレーションアルバムなんかにも参加しちゃったりしている。
本当に多才な方です。

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Ettore Rigotti - Guitar,Drum,Bass,Keys
Claudio Ravinale - Vo
Björn "Speed" Strid - Vo
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■Resurrection Code
静寂から勢いよく弾かれるように激烈ギターリフが飛び出し、滑らかな叙情メロディがコーラスを彩る開幕曲。
北欧のキラキラみもありつつ、重いビートも感情豊かなギターソロもある濃密なチューン。

■Mindtricks
Björnの吐き捨て型グロウルが映える疾走系メタルコア。
軽快に疾るメロデスの美しいメロディはそのままに、独特のクサミとダサさは抜いてモダンに仕上げた透明感すら溢れるチューン。
もっとコッテリしていた方が好きな、ハードコアなメロデスマニアからしたら物足りないかもしれないが、オシャレなメロデスから沼に浸からせたい人にはオススメな一曲。

■Celestial Furnace
モダンを意識した重いビートに叙情系ギターワークがリードし、デスシャウトとグロウル、クリーンボイスのコーラスが代わる代わる押し寄せるメロデス。
ギターソロも含めて全体的にSoilworkの影響受けすぎちゃったやつ。

■Nihilistic Overdrive
初期のイェーテボリスタイルの影響が滲み出てしまった哀愁感漂う曲。
この手のメロデスは100億回くらい聞いた自分にとっては聴き馴染みしかないサウンドだが、やっぱり遠くでメタルコアの香りも感じられて2度美味しい。

■Parting Ways
高音吐き捨てグロウルが主導権を握るゴリゴリっとした鋼鉄感溢れる哀愁メロデス。
時にテンポを落としたり、ファイティングクワイヤとデスシャウトがユニゾンしたりとやっぱりイェーテボリスタイル。

■Venom Leech and the Hands of Rain
出だしのリフからSoilworkやIn Flamesが溢れ出ちゃっているメロデス。
甘暗いメロディとは裏腹にVoはBjörn、Claudioどちらもストロングスタイルの発音強め。

■Liquid Wings

ザクザク切りながらメロディアスに疾走し、かつ強靭なビートを叩き出す様は、北欧系バンドというか、オーストラリアのOrpheus OmegaBe’lakorあたりに通じるものを感じる。
惜しむらくは、音像のぼやけ具合。
是非もっとソリッドな音像でリマスターしてほしい。

■Process of Annihilation
跳ねるようなタイトなリフワークとボーカルワークが、シンプルな構成に奥行きを与える強力なエッセンスになっている。

■Last Breed
スラッシーなリフで切り裂くように突進する曲。
ブレイクダウンがあるかと見せかけて、最後まで全速力で走り切る爽快なメタル。

■Taste of Collapse
北欧系列の哀愁の泣きのギターイントロとキラキラキーボードが渾然一体となったミドルテンポのメロハー。
デス声でなければEuropeやH.E.A.T.、GOTTHEARDあたりの新曲といわれても…いや、流石にそれは言い過ぎか。

■Mouth For War
メタリックスラッシーな一曲。
と思いきや、2:30あたりからのギターソロを境にパンキッシュに疾走し出す。
勢い一発のガツっと切れ味鋭い曲。


■ Celestial Turnace (Acoustic Version)
突然のチルすぎるハードポップ。
野太い漢コーラスにニヤケが止まらないが、メロディは抜群に良い。
緩急にやられてしまう一曲。


■ Ringside Seat To Human Tragedy
どこかで聞いた事あるグロ声とエロいクリーンボイスだなと思ったらスカシンのChristianがフィーチャリングされてました。
彼が歌うと全部Scar Symmetryになっちゃう不思議。


■Moon of Glass
正統派メタルコアの香りが充満するサウンドに厚みのある曲。
ギターもベースもディストーションがしっかり聴いてて、アルバムを締めるには非常に後味が良い。


総合満足度 87点(北欧メロデスかとマインドトリックされてしまうレベル)

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