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ARCHITECTS『For Those That Wish To Exist』(2021)

UKを代表するポストハードコア/メタルコアバンドArchitects

ドラムのDan Searle とギターのTom Searleの双子の兄弟を中心にBrightonで結成し、2006年に『NIGHTMARES』でデビューを果たすと、メロコア、ポストハードコアファンを中心に絶大な支持を得てきた。

4thアルバム『Daybreaker』くらいまでは王道ハードコアの激情一発タイプだったが、その後は叙情メロディを多めにフィーチャーしたり、ストリングスを多用したり、デスメタル風のブラストやアグレッションを全面に出したりと、アルバム毎に様々な実験を取り入れ、その音楽性を豊かに広げながら、Bring Me The HorizonEnter Shikari 等と一緒にUKハードコア界を牽引してきた。

しかし2016年にバンド創設メンバーであり、中心人物だったTom Searleが皮膚がんにより他界、残されたDanは悲しみに打ちひしがれながらもTomの遺志でもあった、バンド活動とツアーを続けるという決意を下す。そんな中制作された『Holy Hell』はセールスこそ伸びなかったが、その3年後にリリースされた本作『For Those That Wish To Exist』はEpitaph Recordsからリリースされた通算9枚目となる作品で、改めてTomの悲しみを乗り越えたと同時に、彼ら初のUKチャート1位を獲得し、ランドマークとして輝くアルバムとなった。

For Those That Wish To Exist

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* Sam Carter – lead vocals
* Josh Middleton – lead guitar, backing vocals
* Adam Christianson – rhythm guitar, backing vocals
* Alex "Ali" Dean – bass, keyboards, drum pad
* Dan Searle – drums, percussion
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■Do You Dream of Armageddon?
やや機械的なエフェクトをかけながら、優しく語りだすSamの声から始まる荘厳で優雅なチューン。

■Black Lungs
ぶっといメタルコアなリフが冒頭からガツンと来て、コーラスに入った瞬間にストリングスで奥行きのあるサウンドが展開される。
開幕からSamのシャウトもクリーンVoもエモ過ぎ注意です。
拳を握らずにはいられない曲。

■Giving Blood
機械的なノイズが絶えず反響する中、テクニカルなバスドラがボトムを支え、時に力強いスクリーム、時にとろけるようなウィスパーで囁くSamの彩り溢れる声音(こわね)がクセになるメロディアスな一曲。
ギターのAdamも一緒に歌ってます。

■Discourse Is Dead
ヘヴィなギターリフにストリングスを加えた奥行きのあるサウンドで、或いは幻想的な雰囲気すら甘く浮かんでしまう曲だが、強靭なシャウトがガッシリと曲全体を支配しているおかげで、ナヨい雰囲気は全くない。

■Dead Butterflies
壮大なストリングスと綺麗なクリーンで幕を開けるスローチューン。
退廃的な曲のタイトルと、美しいメロディがバンドの風格を感じさせる。
Dead Butterflies〜♪がいつまでも耳に残響して離れる事を知らない。

■An Ordinary Extinction
機械的なコンピュータ音に導かれ、リズミカルなクラップと共に軽快に進行したかと思いきや、いきなりの悲哀に溢れる激情シャウト。
最近のBMTH的な空間を意識したサウンドクリエイションだが、Architectsがやると意外と新鮮に聞こえる。

■Impermanence ft. Winston McCall (Parkway Drive)
Samの強烈な慟哭シャウトと、重いギターサウンド、そして厳かなクワイヤが混じり合い、織りなすミドルテンポの濃密な曲。
2:48からの強烈なブレイクダウンでParkway DriveのWinstonの咆哮が飛び出し、この曲の濃度をさらに上げている。

■Flight Without Feathers
Samのアンニュイなクリーンボイスと神聖なクワイヤ、打ち込み系のドラムでしっとりと聴かせてくるバラード。
タイトルと相まって哀愁感が極限まで充満している。トリップ注意。

■Little Wonder ft. Mike Kerr (Royal Blood)
軽やかなシンセノイズと共に始まるキャッチーでポップなチューン。
ダンスでも踊れそうだなと思いきや、ふふーん♪と調子乗っていると2:30からの突然のブレイクダウンに頭を振らされます。

■Animals
なんといってもMVのカッコ良さでご飯5杯は余裕でいけてしまうアルバムを代表する曲。
メロディアスなコーラスと2:16からの空襲警報に似たアラームと共に発動するヘヴィすぎる単音リフで恐怖と歓喜の坩堝に叩き落とす。


■Libertine
クリーンだがどこか憂いを含んだシャウトでメロハー的な煽情を含みつつ、ゆったりと浮いたり沈んだりを繰り返しながら進む。

■Goliath ft. Simon Neil (Biffy Clyro)
単音ザク切りギターリフで逞しい音像を切り拓いたと思いきや、後半のブレイクダウンではスコットランド出身の人気バンドBiffy ClyroのSimon Neilの吐き捨て系激唱シャウトが緊張感と昂揚感を高めに高める。
Nobody’s proving me wrong〜!」のセリフが強くて好き。

■Demi God
壮大なストリングスとクリーンヴォイスで、緩やかに、しかし天を揺るがす程の自分たちのサウンドに対してのある種の信念を啓明していくかの如き力強さを感じる曲。

■Meteor
前曲がやや内に入る深層的な美しさを伴う曲だったのに対し、この曲は外の世界に向けて陽気に情熱的に息巻く彼らの剛気が見える曲。
極めて平凡的な表現をすれば、
アップテンポでめちゃくちゃアガる王道のハードコアサウンド!!!

■Dying Is Absolutely Safe
タイトルがなんともいたたまれないが、このバンドのさまざまな起伏を伴う旅路と、Tomの悲しみを必死に浄化、消化、昇華しようとするカタルシスなのかなと感じてしまう。
アコギと穏やかなストリングスに包まれた綺麗で哀しい曲。

総合満足度 83点(悲しみからの脱却に必聴なレベル)

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