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Nightwish『Once』(2004)

フィンランドが世界に誇るシンフォニックメタルバンドNightwishTarja期の集大成とも言える2004年発表の5th Album『Once』。
二日酔いでぐったりしてるような天使のジャケットが印象的。

母国フィンランドではもちろん、ドイツ、ノルウェー、ギリシャ、ハンガリー等の国でチャートトップを獲得し、トリプルプラチナを受賞した彼ら史上最も売れたアルバム。

ONCE

しかし、この時からTarjaと他のバンドメンバーの間には深刻な溝ができており、このアルバムのツアー終了後にTarjaはバンドから解雇を告げられ、泥沼の脱退劇を演じた事は世界に衝撃を与えた。

サウンド的には前作からの踏襲でストリングスをベースとしたシンフォニックなバックグラウンドに、ディストーションギターが乗るゴージャスな作り。
しかし、前作と異なるのは、管楽器を含めたフルオーケストラ編成で、音の厚みが圧倒的に増していること。
メロディラインの美しさはそのままに、楽曲のクオリティが格段に上がっていてNightwishと言えばこの曲!という名曲がこのアルバムからたくさん生まれている。
Nightwish を聴いた事がない人にまず勧めたい一枚。

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Tarja Turunen – vocals
Tuomas Holopainen – keyboards
Emppu Vuorinen – guitars
Marko Hietala – bass, vocals
Jukka Nevalainen – drums, percussion
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■Dark Chest Of Wonders
Nightwish史上1,2位を争うヘヴィなギターリフから幕を開ける壮大な抒情詩。
シンフォニックなオーケストレーションも、Tarjaのオペラティックな美声も、Jukkaの激しくも正確無比なドラミングも前作を凌駕し、一気にワールドワイドのバンドのレベルになった。
コーラスは間違いなく鳥肌モノだし、最後に転調して最高潮に盛り上がりながら一気に駆け抜ける感じも全てがシンフォニックメタルの最高地点にある。

■Wish I had An Angel
Tarjaが紡ぐ美しくもキャッチーなメロディにMarcoのヒステリックかつ野太い声が重なり、当時のラインナップの充実さを感じる代表的な曲になった。
打ち込みかと聞きまごうくらい正確なドラムも一周回って情熱的。


■Nemo

そのキャッチーすぎるピアノのリフとメロディが故に一時期色んなラジオでかかりまくっていた曲。
中間部は幻想的な転調とTarjaの美しすぎるコーラスで多くの日本産メタラーを癒しの渦に巻き込んだ。
MVも寒そうでフィンランドっぽくて素敵。


■Planet Hell
クワイヤから始まる映画音楽のような幕開けにJukka の勇壮なドラミングとEmppuのヘヴィなギターリフが乗っかってくる。
Marcoのヒステリックなスクリームと壮大なストリングス、コーラス、シンフォニックヘヴィメタルの金字塔的な作品。

■Creek Mary's Blood
Tarjaがしっとりと、時には激しく歌い上げるハードバラード。
メロディラインも、サウンドも素晴らしく、実は隠れた名曲だと思う。

■The Siren
オリエンタルな響きのヘヴィなシンフォニックメロディックメタル。
前半の曲に比べたらやや地味だが、しっかり細部まで作り込まれている曲。

■Dead Gardens
アップテンポのリズムに、ディストーションゴリゴリのギターが跳ねるように乗っている。
コーラスは静かな水辺をそっと風が吹き抜けるかのような美しいメロディラインだが、裏でEmppuのゴリゴリギターがしっかりと刻んでいるため、全体のサウンドとして良い感じのヘヴィメタルに仕上がっている。

■Romanticide
前半はディストーション効いたギターがぶりぶり鳴りまくり、オペラティックなソプラノがメロディを紡ぐいつもの展開。
2:20あたりから突如としてEmppu の速弾きが登場したかと思ったらMarcoの野獣のような咆哮とリズム隊が暴れまくる疾走パートに以降し、その勢いのまま幕を閉じる。

■Ghost Love Score
10分の壮大で劇的なメタル絵巻。
映画音楽的であり、クラシックオペラでもあり、とにかくシンフォニックメタルの完成系だと思う。この曲を聴くだけでもアルバムを買う価値はある。
特に5:30あたりからの展開が鳥肌が止まらない。
雲の切れ間から光が差し世界に救いが満ち溢れたかのような開放的なワルツ調のメロディに続いて、7:10からの勇壮な旋律、そして7:42からのパイレーツオブカリビアンに出て来そうな展開を挟み、8:30からのグランドフィナーレを迎える。
もう涙が止まらない。

■Kuolema Tekee Taiteilijan
Tarjaが巻き舌を絡めながら全編フィンランド語で歌う小さな一曲。
メタリックなバックグラウンドサウンドはなく、ただひたすら美しいメロディを紡ぐだけ。

■Higher Than Hope
アルバム最後を飾る曲。
壮大で、展開に満ちた曲だが、Ghost Love Scoreの衝撃のあとだからか、やや地味に聞こえてしまうのは贅沢病だと思う。


総合満足度 94点(一期一会 Once-in-a-lifetime chanceなレベル)

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