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SABATON『The War to End All Wars』(2022)

スウェーデンが世界に誇る暑苦しい程の存在感を放ち続けるみんな大好きミリタリーメタルバンド、SABATON

単なるネタバンドとして生暖かい目で見られがちだが、母国スウェーデンでは戦争や英雄などの史実に基づいた歴史をテーマにした曲が多い為、教育題材として使われる程、真面目でメインストリームをいくバンドらしい。
ちなみにSABATON とは中世ヨーロッパで装備された甲冑の一部で足に履く鉄靴の事。

1999年、Joakim Brodén (Vo)、 Pär Sundström (B)らを中心に母国ファールンで結成、自主制作CDを制作し、2005年にブラック・ロッジ・レコード」と契約し、1stアルバム『Primo Victoria』をリリース。
今の成功を鑑みると俄かには信じられないが、アルバムのリリースは結成から6年経っており、割と難産だった。

2008年には『The Art of War』をリリースし、アメリカをはじめ各国でツアーを敢行し、さらにスウェーデンで「サバトン・オープン・エア」フェス主催、2010年には豪華客船上でのライブ「サバトン・クルーズ」を新たに企画するなど、世界的に認知されていく。

しかし、上昇する名声に反してバンド内には方向性の不一致、不和が溢れ、2012年にはなんと初期メンバーのOskar Montelius、Rikard Sundén、Daniel Mullback、Daniel Mÿhrが離脱するというバンド結成以来の危機に陥ってしまう。

それでもバンドは精力的にアルバムをリリースし続け、2024年現在、10枚の似たようなスタジオアルバムが世に出ており、Wacken Open Airをはじめ、各国のフェスでメインやコ•メインアクトを張れるだけのビッグバンドに成長している。

本作は毎回似たようなジャケットでリリースされる彼らの作品の中でも、割と区別しやすい部類の『The War to End All Wars』(2022年)。
Nuclrar Blastからのリリースで、いつものサバトン印の暑苦しい曲が並ぶ一枚。
Joakimの雄々しい声にばかり注目がいくが、実はギターソロがどの曲も素晴らしく、SABATONの魅力はギターソロにあり、と言っても過言ではない。

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* Joakim Brodén – lead vocals, keyboards
* Pär Sundström – bass, backing vocals
* Chris Rörland – guitars, backing vocals
* Tommy Johannson – guitars, backing vocals
* Hannes Van Dahl – drums, backing vocals
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■Sarajevo
快活なネオクラシカル風のイントロギターがスピーカーを揺らした刹那、いつもの漢臭い野太い声が大気を振動させる。
疾走メロディックパワーメタルのお手本の様な徹頭徹尾クサみを帯びた旋律が、時に愉快に響き渡る一曲。

■Stormtroopers  
一打一打に重さを込めたドラムに乗せて雄剛に昌和する力強いミドルテンポチューン。
安心のJoakim Brodénのややしゃがれた強靭なボイスが「あぁ、今サバトンを聴いてるんだなぁ」と実感させてくれる。

■Dreadnought
跳ねるリズムに勇壮なコーラスが重なり屈強な意志を感じる音像を作り出している。
戦地に赴くファイターを鼓舞するかのような、猛るオーディエンス(戦士)の集団が眼前に容易に再現されてしまう。

■The Unkillable Soldier
Joakimの巻き舌を混ぜた威丈高な歌唱がミドルテンポに乗せて闊歩する。
ギターソロは短いながらもテクい高速フレーズを吐き出し、ここだけ抜き出しても十分にメタラーの血を沸騰させる破壊力を備えてある。

■Soldier of Heaven
血潮沸る轟音と骨を揺るがす6弦サウンドで脳天から雷鳴を落とすかの様な衝撃を与えてくる。
しかし不思議と粗暴さや雑さは全く無く、聴けば聴くほど丁寧に曲が構築されている事に気づかされる。
空襲警報のようなギターソロも緊張感と焦燥感が溢れていて素晴らしい。

■Hellfighters  
情熱的に、一つ一つのリズムを噛み締めるように進軍する一曲。
意気昂然、それでいてどこか包み込むような包容力も併せ持つ。

■Race to the Sea  
鼓舞されるっ!只管にッッ!
これから困難に立ち向かう全てのメタラーの応援歌とも言うべき勇猛果敢な一曲。

■Lady of the Dark
ややテクニカルでキレの良いリフに豪快な魂の叫びが谺(こだま)するミドルテンポチューン。
ギターソロは叙情的でメタリックで、全世界のクサメタラーの溜飲を下げてくれる。

■The Valley of Death
ヘヴィメタル然とした鋼鉄リフに雄々しいJoakimの声、ピロピロしたギターソロ、否が応でも高揚感は湧き上がる。


■Christmas Truce
クリスマス休戦を告げるバラード。
強靭な抱擁力が広がる。

■Versailles
ストリングスと語りで進む戦士達の讃美歌のような曲。


総合満足度 85点(全ての戦争がこのアルバムを聴いて終わってほしいレベル)

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