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IMMINENCE『Heaven In Hiding』(2022)

ヴォーカル兼バイオリンという異色のスキルをもつEddie Berg とギターのHarald Barrett が高校時代に出会い、スウェーデンのTrelleborgで2010年に結成したポストハードコアバンド、IMMINENCE

お互いに音楽の趣味や将来のバンド像が一致していたことから意気投合し、すぐに作曲やジャムセッション、そして自らツアーをブッキングするなど急速に歯車は動き始める。

2014年に『/』でWe Are Triumphant Records(Victory Recordsのサブレーベル)からデビュー。2017には『This Is Goodbye』をリリースし、シーンにそのプレゼンスを示す。

本作は、基本路線は前作踏襲しながらも、よりハードなビートにエレクトロ要素と耽美なバイオリンを練り込み、唯一無二の音像を完成させた2022年発表の『Heaven In Hiding』。

Heaven In Hiding


ストリングスと称して電子的に作られた弦の音色を挟み込む手法は良くあるが、彼らは本物の、生の、しかも一本のバイオリンを極厚のサウンドの中に織り込むという繊細かつ温故知新の試みを高い次元で成功させている。

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* Eddie Berg – lead vocals, violin
* Harald Barret – lead guitar, backing vocals
* Alex Arnoldsson – rhythm guitar
* Christian Höijer – bass guitar
* Peter Hanström – drums
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■I Am Become A Name
アルバムの開幕を告げる電子の海に漂うインスト。

■Ghost
ハードコアなギターサウンドとタイトなビートにバイオリンの美しい調べが飛び交うミドルテンポチューン。
いわゆるArchtects路線の美メロと直情型のシャウトが全体の骨格を作っているのだが、バイオリンを曲の芯に据えることで生み出される荘厳さが他のバンドと一線を画している。

■Temptation
1:05あたりの「Temptation〜〜!!!」激唱シャウトと絡まる癒しのバイオリンの旋律が同じEddie Bergという1人の才能あるアーティストから放たれているという事実に改めて驚嘆。
感情的には両極に位置していそうなお互いのサウンドが一つの音塊になって迫ってくる様はもはや恐怖に近い悦び。

■Surrender
リバーブの聞いた透明感溢れるギターに導かれ、コーラスで大盛り上がりを見せるエモ、メロコア王道の曲。
ブレイクダウンで落とし切った後は、より情熱的にシャウト一撃をキメてくる。

■Chasing Shadows
電子的なシンセワーク、Djent 香るタイトで分厚いギターサウンドに、叙情的なバイオリンが優雅に切れ込んでくる、The Imminence的なナンバー。

■Moth To A Flame
悲しみ、いや憂いに満ちたEddieの高貴なソロヴォイスに、狂おしい程の壮大なチャントが合流し、剛毅なギター音と気炎万丈なドラムも合わさって濃密な音の情報が繰り広げられる。
エモさで言えばアルバム随一の曲。

■Alleviate
Eddieがしっとりと、しかし雄大に、伸びやかに歌い上げるダイナミックバラード。
ギターの演奏がうますぎて、本来フレットが全くフレットの引っ掛かりのようなものがなく、バイオリンとのオブリガードも完全に決めてしまっている。
ピアノの優しい音色が「穏やかな」「緊張感」という相反する概念を結びつけてしまっている。

■Enslaved
デジタルの力を使って敢えてプリミティブに
粗く創り出したバッキングギターの音色が心地よい。
ピコピコ鳴る電子音は、快感と耳障りの丁度中間を滑っていく。
コーラスはシャウトをバックに、エモくてクリーンなシンガロング。

■Disappear
一聴するとBad Omensを感じるオルタナティブさがありつつもThe Rusmusあたりの北欧哀愁ハードロックバンドの香りも遠くでしていたり。
2:50あたりで、「流れ的にここでブレイクダウンするだろー!」と世のメタラー達が首の準備をしていた所に、謎の変拍子パートを展開してニンマリしているバンドの顔が浮かぶ。

■Lost And Left Behind
オールドスクールなディストーションギターかき鳴らしから始まり、一気にエレクトロな近未来サウンドに展開し、激昂系グロウルとクリーンボイスが乗ってきた所で、バイオリンの都雅な調べが、良い意味で空気を読まずに、悪意なく緩やかにふわりと被さってくる。
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ایننیزبگذرد
いや、読めないんだわタイトル笑
シタール?琴?の旋律に民族的な打楽器が加わり、今までとは完全に異次元の雰囲気。
そこにバイオリンの調べが乗っちゃうもんだからもうアジアの民族臭しかしない。

■∞
このタイトルも読み難い笑
インフィニティ?
バイオリンの旋律美で宇宙までトリップさせてくれる1分間の小旅行。

■Heaven In Hiding
タイトルチューンにして、彼らのメロディセンス、演奏スキル、ブルータリティ全てを詰め込んだ短いながら情報量がふんだんな曲。


総合満足度 82点(優雅なバイオリンに誘われて、隠れていた天国まで表に出てきちゃうレベル)

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