To/Die/For『Epilogue』(2001)
厳寒フィンランドの地から生まれたゴシックメタルバンドTo/Die/For。
フィンランド南部のKymenlaaksoで1993年に結成されたMary-annというバンドが母体となり、1999年にミュージックスタイルをそれまでのヘヴィメタルからゴシックメタルにチェンジするとともに、バンド名もTo/Die/Forに変更。
大手レーベルNuclear Blastと契約し、『All Eternity』でデビューする。
Dark TranquillityやSentenced 、In Flamesとヨーロッパツアーを重ね、確実に知名度を上げていくが、オリジナルメンバーであったベースのMiikka Kuismaが人間関係を理由に脱退、一時的にNIGHTWISHのマルコ・ヒエタラが加入するも、結局はMary-ann 時代のベーシストであったMarko Kangaskolkkaが正式メンバーとして迎えられる。
この後バンドは解散したり再結成したりメンバーチェンジを頻繁に行っていく忙しい時期にはいっていくが、その中で生み出されたアルバムも素晴らしいのでまた別の機会にレビューしたい。
本作は2001年にリリースされた『Epilogue』。
実質2枚目のスタジオアルバムだが、すでにEpilogueと名付けるだけあって完成されたサウンドが並ぶ。
前作と比べるとポップで、ややゴシックメタルというにはヘヴィさと荘厳さに欠ける楽曲が目立つが、”ノリのいいゴシックメタル”という形容矛盾が成り立つその独特の雰囲気はやっぱりクセになる。
やたらとキラキラしたシンセと、クドさすら感じるアウトロも、彼らの様式美と解釈してしまえばしっかりと心地よい世界観に浸れる。
そしてJape Perätaloは、今では渋いハスキーボイスで漢っぽくシャウトするタイプのシンガーに進化しているが、この頃のアルバムは粘っこくて、インディーズのビジュアル系バンドのような非常に賛否ある歌い方。
逆にこの時代のこのキモさは今は聞けないので、おスキな方はハードリピートしている一枚だと思う。
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* Jape Perätalo – vocals, keyboards
* Juppe Sutela – rhythm guitar
* Joonas Koto – lead guitar
* Tonmi Lillman – drums, keyboards
* Marko Kangaskolkka – bass
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■Crimson Twins
開幕からキラキラandポップキャッチーにキメる「ノリノリゴシック」のジャンルを確立させた一曲。
Vo の歌い方に(否多めの)賛否はあることは重々承知。
しかし、慣れればこのねっとりと粘りつくようなビジュアル系のキモい歌声(褒め言葉)がクセになる…はず
■Vale Of Tears
爽やかな風を吹かせながら北欧の哀愁も感じる、好きな人にはたまらないミドルテンポロックチューン。
The Rasmusにも通ずるメランコリックなメロディラインが適度に甘くてイイ。
■Hollow Heart
Voの歌い方のクセが極致に達してしまったが、同時に感涙哀愁メロディも極まってしまっている。
個人的には全然アリだし、この上質なキモさは彼らにしか出せない味だと思う。
■Veiled
ギターのフレーズが北欧的ではあるものの、Fair WarningやScorpionsといったジャーマンメタルレジェンドの調べも想起させるバラード。
こういう曲の方がキモさが緩和されて聞きやすい。
■The Unknown
ミドルテンポでザクザク進む勇ましいハードロックチューン。
やっぱり高音部に転移する時の微妙に裏返る歌い方に抵抗感は覚えつつも、透き通るようなキーボードのキラキラが叙情感をしっかり出してて不可欠だなと思いました。
最後のアウトロみたいなギュイーンキラキラはやり過ぎ。
■Frail Without You
ギターソロに妙に気合が入っている北欧メタルテイスト溢れる一曲。
ユニゾン速弾きはありふれた手法だが、こんな風に使われるとすごく新鮮に聞こえて効果的だなと。
コンパクトながらしっかりとボディを感じる。
■In Solitude
スローに粘っこく展開するバラード。
散々キモいと言ってきたが、こういう聴かせる系の曲だとvo のJape Perätaloの声が割としっかりハマっていて、ほらなんとなくamorphisのトミヨーツセンに聞こえませんか…?
■Chains
叙情ポップメタル。
個人的にTo/Die/Forのイメージに一番近い。
キャッチーなメロディもありつつ、キレイなサウンドとさらりと美しいギターソロも展開してくれる、そしてどことなく古臭い(20年以上前に出たアルバムなので実際古い)
■Immortal Love
ノリノリのキャッチーなハードロック。
口笛メロディとか「ハアッー」と吐息効果音楽がとても2000年代に作られたとは思えない80年代サウンドがいい。
■Garden Of Stones
美しいピアノで始まり、壮大で荘厳なサウンドが絡み合うエンディング。
散々キャッチーでポップな曲ばっかりやってて「ノリノリゴシック♪」と不名誉?なレッテルを貼られたので、ここに来てようやく硬派なゴシックメタルバンドの名誉挽回か。
総合満足度 79点