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The Black Dahlia Murder『Nightbringers』(2017)

アメリカ ミシガンはデトロイト発のメロディックデスメタルバンドThe Black Dahlia Murder

歴史上稀に見る残虐な殺人事件Black Dahlia事件から名前をとり2001年に結成。
2003年にMetal Blade Recordsと契約すると、アルバム『Unhallowed』でデビューし、Unearthらと全米をツアーするなど徐々にエクストリームシーンで知名度を上げていく。
2005年に2nd『Miasma』をリリースすると、ビジュアルもイマイチで、グロウルも決して上手いとは言えないTrevor Strnad(R.I.P.)の吐き捨て型デス声が界隈で有名になり、その荒削りながら激情を喚き散らすスタイルと、ギターの流麗で叙情的なメロディが絡み合うサウンドにファンが増えていく。

この初期2枚と2007年にリリースされた『Nocturnal』くらいまではメタルコアの中にある「メロディ」がフィーチュアされる曲が大半を占めており、メロディックメタルコアという訳分からないジャンルに分類されることもあったが、2009年に発表された『Deflorate』あたりからさらにその傾向はさらに進化してしまい、ギターユニゾンをふんだんに混ぜる等ギターサウンドに妙な奥深さを持たせたり、ネチネチっとしたクサすぎるメロディをさらに糸引くまでこねくり回すような音像になる期間に突入する。

しかし、2011年にリリースされた『Ritual』で、洗練された北欧メロデスへの接近を見せ、急に綺麗なジャイアンばりのサウンドの変化を見せてくる。
もちろん、しっかりと暴虐なエクストリームサウンドはあるが、その中に琥珀のように潜む透き通るようなメロディ、寒気すらする北欧の叙情性を身に纏った音を聞いた時、あぁ彼らはこれからはメロデスバンドとして生きていくんだなって思った。

そのあと数枚のアルバムをリリースし、より方向性を煮詰めた先にできた本作『Nightbringers』は、まずプロダクションがすごく良く、砂嵐のようなブラストビートと暴虐すぎるトレモロリフが絶え間なく襲い来る中でも、粒が立っていて聞きやすい。
メロディもそこまでクサくなく、サクッと聞きやすいタイミングとデュレーションで入ってくる感じが良い。
逆にクサくてネチっとしたメロディが無いと餓死してしまう方には物足りないかもだが、しかしまず、TBDMのアルバムどれから聞こうか迷っている人にはそっと差し出したい一枚。

nightbringers


2022年にTrevor Strnadの訃報が伝えられ、未だ喪失感に苛まれている…R.I.P.

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* Trevor Strnad – lead vocals
* Brian Eschbach – rhythm guitar, backing vocals
* Brandon Ellis – lead guitar, backing vocals
* Max Lavelle – bass
* Alan Cassidy – drums
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■Widowmaker
ツーバスドコドコ、時々ブラストを織り交ぜる豪放磊落なビートに、ザクザクギュンギュンなギターがのたうち回る終始ハイテンションで隙の無いデスメタル。
メロディアス要素はやや弱いものの、スラッシーな嵐が吹き荒れる開幕曲。


■Of God And Serpent,Of Spectre And Snake
勢いそのままにひたすら疾り抜ける憤怒に満ちた豪快なスラッシーメロデス。
暴走する激情を必死にコントロールしようとするようなスリリングなメタルチューン。

■Matriarch
相変わらず暴虐な振る舞いで辺りを蹴散らしながら進むアグレッシブなメタル。
ギターソロが北欧味を感じられて良い。

■Nightbringers
ミドルテンポで怪しく捻れるようなリフが特徴のアルバムタイトル曲。
ギターソロではハーモニックマイナーやナチュラルマイナーを行き来する自由無双な高速弾き倒しで緊張感を高めてくる。
ギャーギャー喚きちらしの他の曲と比べるとやや地味だが、確実に殺意の成分が入っている底知れぬ危うさを感じる曲。


■Jars
左右確認せずに頭から突っ込むタイプの猪突猛進デスラッシュ。
速度制限無視の勢い重視チューン。


■Kings Of The Nightworld
余計な成分は全て切り捨て、硬さと切れ味を磨き上げた前のめりなメロデス。
腹を空かせたヘッドバンガーたちのモッシュ全面展開待ったなしのAlan Cassidyが叩き出す超絶ハイテンションのビート、Brandon Ellisが奏でるネオクラ風味のキレッキレのギター、ミシガンの眼鏡グロウル野郎Trevor Strnadの激情がぶつかり合う。

■Catacomb Hecatomb
爆烈ブラストビートが威丈高に鳴り散らすデスコア、マスコア風味なエクストリームメタル。
裏側に見え隠れする北欧を連想させるような叙情メロディがまた高揚感を引き立てる。

■As Good As Dead
連続スウィープアルペジオで幕を開ける、90年代初期のSentencedあたりの冷たい風を感じるスラッシュ:メロディアス=8:2の割合で配合されているデスチューン。

■The Lonely Deceased
激烈ビート、勇壮なギターソロ、万華鏡のように千変万化の展開が押し寄せる、最後までテンションマックスで押し切るアルバムを締めくくるには最高の曲。


総合満足度 85点

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