The Getaway Plan『Other Voices, Other Rooms』(2008)
オーストラリア メルボルン発のオルタナティブロックバンドThe Getaway Plan。
VoのMatthew Wrightが学生時代の友人と結成したバンドThe Thirty-five hoursが母体となり、ギタリストのClint Ellis、ドラマーのAaron Barnettを加え2003年に最初のライブを行う。
その後Boomtown Recordsとサインし、EP『Hold Conversation』をリリースするも、デビューアルバムのプロデュースするパートナー探しに難航する。
オーストラリアでのリリースに見切りをつけたバンドは2007年にアメリカに渡りJames Paul Wisnerと出会う。
「オーストラリアには沢山の優秀なプロデューサーがいるが、どれもバンドの向かう方向とは違った。Jamesとは膨大なコミュニケーションを取るうちに目指すべきサウンドやバンド像が初めて一致したんだよ」とギターのClintは説明する。
意気投合した両者はレコーディングを開始し、2008年にデビューアルバム『Other Voices, Other Rooms』を発表、オーストラリアのIndependent Chartで1位、ARIA(オーストラリアでの国内チャート)でも3位まで昇り詰め、上々の滑り出しを飾ったアルバムである。
バンドはこの後、活動休止、再結成、主要メンバー脱退などの荒波が待っているが、それはまた次の機会に…
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* Matthew Wright – Lead vocals, piano, rhythm guitar
* Clint Splattering – Lead guitar
* Dave Anderson – Bass guitar
* Aaron Barnett – Drums, percussion
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■Other Voices/Other Rooms
アルバムの幕開けを告げるオーケストラのチューニング
■Streetlight
Matthew Wrightのグラムロック的な歌い回しがHIMやThe Darknessを一瞬連想させるが、この爽快9割:哀愁1割の極上配合されたロックチューンは、はやくもこのアルバムに対する期待が爆上がりするのを止められない。
■Where the City Meets the Sea
軽やかなキーボードピアノに合わせてファルセット混じりで伸びやかにキメてくるMatthewの声がクセになる曲。
途中で入ってくるカッティングギターもエモすぎてたまらぬ。
コーラスで「It would all be gone」の箇所が「イオービギャンネー!イオービギャンネー!」って吐き捨てるように歌うの好きすぎて500回くらいリピートした。
■Sleep Spindles
美しいメロディラインに心身ともに整う一曲。
無理やり入れてきたグロウルが吐きそうで気持ち悪そうで、本気で心配になるが、その一瞬以外は本当にクリスタルクリアな透明感を放つビューティフルなチューン。
勝手なイメージだが、映画のエンディングテーマにも使えそうだなと思ったり。
■New Medicine (Stay with Me)
落ち着いた雰囲気から、徐々に盛り上がっていき、まるで星空に続く階段を上って行くような若いファンタジックなイメージを駆り立てる一曲。
クリーンなバッキングギターが飛花落葉の虚しさも演出している。
■Shadows
奇を衒わない王道パンクチューン。
オーオーのバッキングボーカルも、途中から練り込まれるストリングスも曲の邪魔をせず爽快快活な音像イメージに一役買っている。
■A Lover's Complaint
美しいハードバラード。
「恋人の文句」、、なかなか甘々しい曲だこと
■Red Flag
リスナーに語りかけるような歌い方から始まるが、コーラスでは大仰に、伸びやかに叫ぶ。
後半はミステリアスなパートとカオティックなスクリームが差し込まれるパートもあり、プログレ的な、悲劇のミュージカル調の雰囲気にすら変化して行く。
■Entr'acte
クワイヤにのせて語るモノローグ。
■Rhapsody on a Windy Night
王道のコード進行&八分ストロークリフから、アンニュイなヴァースを挟み、再び力強いコーラス、揺蕩うようなサウンドスケープ、そしてグランドフィナーレに流れて行く。
めくるめく展開に忘我の境に入る。
オルタナロックバンドとしての矜持を感じる。
■Transmission
全てが終わり、穏やかにエンディングを歌う曲。
目の裏で勝手にエンドロールが流れていた。
総合満足度 88点(南半球のHIM!)
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