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AはアメリカのA

シェー!

以前いた会社の上司が、イヤミもびっくりのアメリカかぶれなのである。

50過ぎての中途入社でいきなり部長。すわ、次期社長か!とも目されていたが、残念ながら入社後直ぐに化けの皮が剥がれてしまった…。

何せ、バリバリの縁故入社なのだ。それで、常務まで昇進。さすが、会長の娘婿は違うぜ。

本人は、かつて証券会社に勤めてアメリカに行った事が自慢らしく、ことあるごと、誰彼構わずに「アメリカでは〜」と言い出す始末。

ウォール街の証券マンよろしくサスペンダーを纏い、メガネはジョン・レノンモデルなのが自慢だ。

会議では、誰からも頼まれていないが、ご丁寧に株式市場の説明。
長すぎる会議がもっと長くなるので、みんな辟易してる。しかも日経に載ってる記事の受け売り。
コロナ前に「景気拡大もオリンピックまで」と予測。そんなの誰でも知ってるし!(当時)、しかも予想は見事に外れた。そんな会社の厳しい状況を乗り越える手段は、「みんなで力を合わせて頑張ろう」とか(笑)。

華々しいデビューを飾ったものの、周囲からは無視されまくるという、憂目だったが、そんな常務が密かに注目される時がある。

それは、その常務が電話をかけている時だった。

いつもの如く、「アメリカでは〜」とか電話の相手に話していたが、電話が終わる寸前で、「AはアメリカのA、IはインドのI」とか、なんか訳わからないことを口走っているのた。

それを聞いてた同じフロアーの社員全員、その言葉に耳を傾けながら、心の中で「なんそれ!」と、ZAZYばりのツッコミを入れていた(に違いない)。

どうやら、メールアドレスを口頭で説明する「フォネティックコード」とやららしいのだが、「一文字一文字、そんなん必要かぁ」と、社員全員心の中で思っていた(に違いない)。

で、何度も聞いているうちにその説明にも一定の法則があることがわかった。

「Aはアメリカ、Cはカナダ、Iはインド、Jはジャパン」とか、まぁここまではわかる。

しかし、その法則も「Sは佐藤のS」とか、急に日本語もぶっ込んできた。

次第にボキャブラリーが少なくなってきたなーと思いつつ、相変わらず行なっている常務の電話でのメアド説明に、周囲の社員全員は聴き耳を立てていた。が、事件が起きたのは、そんな時である。

常務が放ったひとこと

「Pは、アルファベットのP」。

「アルファベット…」

恐らくPの説明が、常務が咄嗟に思い浮かばなかったのはわかる。わかるのだが、今まで自分が築きあげてきた説明を全て「ぶっ壊わーす」一言。

「ズコっ!」同フロアの社員全員は、心の中で「ダメだこりゃ」と、ドリフばりにずっこけていた(に違いない)。

常務が離席した途端に、社員が集まって話題の中心になったのは、言うまでもない。

そんな面白い出来事があったにも関わらず、相変わらず常務は社員から無視され続けているのである…(悲)。

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