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Day 1 - the first film you remember watching

Day 1 - the first film you remember watching
となりのトトロ(My Neighbor Totoro)1988年

言わずと知れたスタジオジブリの名作、「となりのトトロ」。

さて、初めてトトロを見たとき、あなたは何歳だっただろうか。
私はまだ物語の内容もろくに理解できない4〜5歳だったと記憶している。正直物語の内容自体も正確には覚えていないのだが、抱いた感情が恐怖心だったことを強烈に覚えている。だって、あんなに大きなクマのようなウサギのような生物、見たことがなかったから。加えて小さな黒いオバケたち(まっくろくろすけ)ときたものだ。4歳かそこらの子どもにはトラウマである。私が育った伯母の家も、私よりうんと年上の古い家だったので、そこら中軋むし、畳には慣れてないし、お風呂も一軒家特有の広さが怖かった。ふとした瞬間に窓や畳の隙間から、まっくろくろすけが現れないか冷や冷やしたものだ。そして何より、サツキとメイはまた母親と父親と一緒に暮らせたのだろうか?お母さんは無事に退院できたんだろうか…それとも…。
物語の中で描かれることは殆どなかったけれど、幼少期に母と離れるという経験に、幼い姉妹は慄然としたに違いない。母親を亡くし、伯母夫婦の家に預けられたばかりの幼い私は、画面の中のこの姉妹と、自分自身を重ねていたように思う。母親不在の中、見知らぬ土地にやってきて、父親は家を空ける事が多く、不安でいっぱいだったに違いない…そんな少女達と。

この作品は両親の不在という状況の中で、物語が進んでいく。両親は部分的にしか描かれない。姉妹と、ふしぎな生き物トトロの物語だ。妹がいなくなった時も、助けてくれるのは父親ではなく、トトロとネコバスだ。そしてその生き物たちは、両親にはもちろん、彼女たちの以外の誰にも見えない。
松任谷由実の「やさしさに包まれたなら」という曲の歌詞にこんな一節がある。「小さい頃は神様がいて 不思議に夢を叶えてくれた」。トトロを見るといつもこの曲を思い出してしまう。彼女たちにとっての「神様」は、トトロだったのだろう。私にとってのトトロは、伯母だった。怖くもあり、優しくもあり、夢を叶えてくれる「神様」だった。
子どもにとっての親は、「神様」なんじゃないか、と思うことがある。崇めるべき絶対の存在として、という意味もあるけれど、子どもの夢を叶えてくれる存在として。そしていつか、自分の力で立てるようになったときに、「神様」の存在に気付いて、私達はそれを必要としなくなっていくのだろう。そして今度は、誰かの夢を叶える「神様」になっていくんじゃないかな。

今思い返すと、同年代の子たちが「ネコバスかわいい〜」なんて言いながら観ていた映画を、なんて暗澹とした気持ちで観ていたのだろう…と少し悲しくなるけれど、私が最初に観た映画として覚えているのは「となりのトトロ」でした。

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