その③ 声に出す

今回は、読んでてそのテンポの良さに惹かれた歌です。繰り返し読んじゃうし、声に出さずにはいられないし、口にすることでまた好きになる、という幸せなループにハマることのできた3首。


1首めは、粘菌歌会(@nennkinnkakai)の第46回「インターネット」より、心細いさんの1首。


声に出せ!例えそしりを受けるともインターネットインターネット/心細い


読んだ瞬間に元気になりました!笑 「インターネット」がテーマでの1首なんだけど、このインターネットと対極にある感じの元気の良さ。すごく好きです。しかも「そしりを受ける」覚悟までして声に出してる! そもそも、なんで声に出すのか。声に出したらそしりを受けるものなのか。全く何も分からないんだけど、それらの疑問を払拭するくらいに元気があって斜め上に力強い感じにすごく惹かれました。個人的に元気をもらえる歌です。


次ー!


2首めは、共佳さん(篠永恭佳さん  @kyo_ka112)の連作「マッチングアプリ2022」から。


アウトドアどいつもこいつもアウトドア一生河原で石を積んでろ/共佳



ね!思わず声に出したくなるよね!笑 9首からなる連作はどれもエッジが効いててユーモラス。
中でもこの歌は、声に出しても良いし、字面も「どいつもこいつも」が「アウトドア」に挟まれてて、蔓延るアウトドア感が伝わってくる。そして、そこからの「一生河原で石を積んでろ」の力強さと言ったら!!河原にいることは許してくれるんだ…でも、石しか積んじゃいけないんだ…。アウトドアが嫌なのか。アウトドアって書いとけば良いだろって人が嫌なのか。悪口感があるのに、どこかさっぱりしてて一目惚れした歌です。


最後!


これは、昨年の推したい短歌(現:今年の短歌 @tanka_fun)で紹介されていた、あの井さん(@_anoi_)の1首。本当は「推し短の推し短」というテーマ(推し短で出会って惹かれた歌についてぽちぽち感想を書く予定)で触れようと思っていたのですが、口に出したときの響きもすごく好きなので、ここで登場です。


本当になんでもなんでもバスケット生きるのつらい人は走って/あの井


歌集『マカデミアナッツ』(書房  短/2021年)の中の1首。はじめ、なんでもバスケットという遊びを知らなかったので、ピクニックとかに持っていく籠バスケットを想像しました。不安や生きづらさをなんでもかんでもバスケットに仕舞ってくれるのか。不思議だけど何故か心に残る歌だな、と。しかし、推薦コメントを読み、「なんでもバスケット」をググり、改めてこの歌を読んだとき、そういうことか!やはり良いなぁ、と感じました。人それぞれに生きるつらさがあって、共有も比較もできない中で、「なんでもバスケット」でフラットにお題にしてくれたら。「生きるのつらい人は走って」と言われたときに、自分がつらいと感じていることだけを理由に動き出せたら。誰とも比較されることなく、生きるのをつらいと感じていることを受け入れてもらえたら。それだけで少し、ほんの少しは生きづらさが紛れるかもしれないと思いました。口にすることで救われる、私にとってお守りみたいな歌です。


今回はこの辺で。長くなってしまいましたが、最後まで読んで下さってありがとうございました。

ではまた。



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