鬼は疽と
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鬼は疽と
今宵は暦(こよみ)に誘われて
鬼を払いに豆をまく日で
邪(じゃ)を払って福を呼ぶという
ぽんと渡された枡にざらりと入った豆は
「魔(ま)を滅(めっ)する」という意味で
あちこちで鬼を払って福を呼ぶ声が響いている
おには、そと
ふくは、うち
私の鬼と私の福はいったい、さて
なにを払ってなにを呼べばいいのかもわからず
枡を投げだして目をつむる
はらわれたおには
どこにいくのか
そとにいくのか
きえていくのか
この家(うち)にいるのか
心の内(うち)にいるのか
おにとはそもそも私ではないのか
私の内(なか)から鬼が払われ
代わりに福を詰め込んで
そんな話、まったく都合がよすぎるじゃない
小さな鬼は私のそこかしこに棲みつき
かりかりと爪を立て
ぎらぎらと牙を剥き
ぐりぐりと角で掻いて傷をつけていく
治ったようにみえた小さな傷は思いのほか深く
汚い願いと飲んだ言葉が詰まり
腐敗し、黒く変色して悪臭を放つ
腐ったところだけを慎重に、少しでも小さく
切り捨ててしまわないと
疽(はれもの)のままにしておけば
やがて奥でぐじゅぐじゅと泡立ち
壊疽(えそ)はひろがり続ける
ひろがりきらないように、なんとか間に合えばいい
きっとまだしばらくは
この小さな鬼といなければならないのだから
ひとまず今宵は
小さな鬼を追い出すために豆を投げよう
鬼の数だけ投げたなら
歳の数だけ豆を食らって
ほんのひととき邪鬼を払って
今日も心を眠らせる
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