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【ショートコント100】11→20

11.ランドセル

共働きの兄夫婦に頼まれて、何故俺が…と思いながらイトーヨーカドーに甥っ子のランドセルを買いに行った。すると甥が赤が良い!と言い出したから「これは女の色だよ」って言いかけたけど、考え直して「赤持ってるのは女の子が多いよ。いつかそれを茶化される時が来るかもしれないけど、それでもいいくらい赤が好き?」と訊いたら「うん!」と首がもげそうなくらい頷いてたから、赤のランドセルを買ってあげた。

レジで会計してる時「お兄ちゃんありがとう!」と言われて、少し照れ臭くなったのを、今でも鮮明に覚えている。


六年後、小学六年生になった甥っ子が俺の部屋にノックもせず入って来た。

「あの時はよくもこんなもん買わせやがったな。ぶち殺してやるぜ!!!」

「いつかこの時が来ると思ってたよ。さあ、来いよ」

戦闘態勢で向かい合ったその時〝この戦いはどちらかが死ぬまで終わらない〟二人はそう確信した。


12.会社の朝礼!

「え〜社長今日は凄く怒ってます。はっきり言って、ルールを破る人は、この会社には要りません!
これは我々がお昼休みに欠かさず行なっているかくれんぼでの出来事です。

かくれんぼとは、一度隠れた場所から他の場所に移動する事は許されないものです!それなのにこそこそ動き回ってるゴキブリ野郎共がいるらしい!ああもう勘弁ならねえ!

移動しても鬼にバレなかったら問題ない!?気付かれなければそれでいい?そんな甘い考えは言語道断だ!!

じゃあなんですか、あなた達はバレなければ、コカインもヘロインもMDMAもLSDも食って大丈夫だと思ってるのか!?その全てをゴリゴリに混ぜて爆食いしても大丈夫だとでも思っているのか!?私はそれでダルクに7年ぶち込まれたんだ!私は身を持って体験した!お前らもいっぺん治療施設入らんと分からんか!?

脳味噌の小せえ馬鹿共が。

まあそういう事なので、私今回、ピストルを持ってきました。

もし私が鬼の時に、動いている人間を見つけたら、このピストルでそいつを撃とうと思います。

これはわざわざ私が横浜のカラーギャングから15万で買って来たんだ!お前らの為に!

もうこれ以上会社に迷惑をかけるな!わかったな!
それでは昼休み、きちんとルールを守って楽しみましょう。朝礼、終わり!」



「あっ、社長!」



「なんだクソガキ」



「新作のリカちゃん人形のデザイン出来ました」



「ん〜、可愛いねえ!採用!」


13.南京錠

「陽子ちゃん、この川沿いの柵に南京錠をかけると、そのカップルは永遠に一緒にいられるんだって」

「素敵な話〜!私達もずっと一緒にいられる様にさっそく錠をかけましょう!」

夜闇の中で、なにやら柵の南京錠をガチャガチャといじくっている男がいる。

「…おじさん何してるんですか?」

「ん?南京錠、増え過ぎると困るから、外してんの」

「え、外すんですか?」

「そりゃ定期的に外さないと、新しく錠かけるスペース無くなっちゃうでしょ」

「ちなみに、それ、外してどうするんですか?」

「これ?工場持ってって、溶かして、チャカ作ってヤクザに売んの。人の愛が人を殺すんだから、皮肉だよね。ゼハハハハ!」
「黒ひげと同じ笑い方だ!」


14.校舎裏にて

男子生徒A「ごめんね、いきなり呼び出しちゃって。俺、分かりやすいタイプだから、もう気づいてたかもしれないけど……お前の事、好きなんだ。一年の時から、ずっと…」


ボビーオロゴンA「おいぢょっど待てよ!俺男だぞ!?おい、嘘だろ!?」



男子生徒A「……オロゴン、気付いてなかったのか?」



ボビーオロゴンA「気付いてる訳ねえだろ!おいぢょっど待てよ!俺男だぞ!?言わないでも、見たら分かると思うけど!お前ふざけんじゃねーよ!…………ふざけてんだろ!?なんだよお前!なんだよ!こえーよ!ナイジェリアにも居ねえぞ俺の事好きな男!そんでBなんて出て来ねえじゃねえかよ!!」


15.高本君と和田君1

学生服の青年二人が歩いて下校している。

高本「最近ふと気になったんだけどさ」
和田「うん」
高本「お前って文化祭とか体育祭とかそういうイベント事の時いつも学校休んでるよな。なんで?」
和田「んーっと、それにはちょっと、恥ずかしい理由あって」
高本「家庭の事、とか…?」
和田「いや、僕さ、一年の時に凄い美人のパンチラ見た事があって」
高本「うん。ん?」
和田「走馬灯でそのパンチラをまた見たいから、それ以上の思い出できないようにしてる」
高本「そんな奴いる?」


16.ぬいぐるみ

俺は一流司会者K。

今日もバラエティ番組の司会を見事に熟し颯爽と自分の楽屋に帰って来る。そして革のソファに深く座り、タバコに火をつける。

達成感と多幸感が俺の全身を包み込む、至高の時間。

「はあ」

吐いた煙の行方をなんとなく目で追っていると、俺の楽屋に異様な物が置いてある事に気が付いた。

これはなんだろう。

床にピンクのクマのぬいぐるみが置いてあったのだ。

「あ〜あ、今日も誰も相手してくれなくて、退屈だな〜」

ぎょっとした。その声は確かにそのぬいぐるみから発せられたのだ。

「あなた、なんでずっと私の事見てるの?…もしかして、私の声が聞こえるの!?」

冷や汗がどっと出て来る。

「ねえ、私の声が聞こえるんでしょ?もしそうなら、一緒に遊ぼうよ!私の友達になってよ!」

「この手のどっきり成人男性に来る事ある…?」


17.ホームラン

やあ、こんにちは。
君か。僕がホームランを打ったら手術受けるって言ってる子は。
本当にあるんだね、こんな事。でも困ったな。
僕は去年、高校三年の甲子園でもう野球は辞めたんだ。
今じゃ色気づいて髪もこんな伸ばしてるし、筋肉の退化も凄い。見てみろよこの腕、ホームラン打つ奴の腕じゃないだろお。

いや、君の、僕にまた野球やってほしいっていう気持ちは凄く有難いんだよ。高校野球頑張ってて良かったなって心から思える。
でもさ、君の人生変える為に、僕の人生も変えなきゃいけないか?
少し酷いことを言うかもしれないんだけど、君は、僕にとって、知らねえガキだ。
病気だからかわいそうだとは思うよ、病気だからかわいそうだとは思う。思うけど、それを差し置いたら、知らねえガキだ。

僕は今、大学で軽音サークルに入ってます。野球と真逆のやつ。
野球部時代もそこそこモテたけど、野球部を好きになる感じの女子を、僕は好きじゃなかった。
もっと違うタイプの女も、ガンガン行きてえんだ。
今こんな感じだけど高校時代は野球やってましたっていう、ギャップでモテていく事に決めたんだ。
チームメイトとの3年間の思い出を、モテる為のギャップとして利用していく。
なんか、ごめんね。

それに君……今、高校二年生だろ?
もう結構でけぇじゃねえか。このお願いしていいのは中一までだ。
え、なに?……ああ、その病気で、なかなか学校行けてなくて留年もしちゃってるのか。じゃあ君は今何歳なんだ?21?おい俺より上かよ。
だったら年下に夢を見させてもらおうとするな、お前が勝手に頑張れ。じゃあな、ばか。


18.学校の廊下

「ねえ高本!なんで逃げんの!?」
「うるせえなあ、付いてくんなよ!」
「大体あんたなんで部活辞めたの!?先生も心配してるよ!」
「なんなのお前!ずっと俺の事つけ回して!うざったいんだけど!もしかして俺の事好きなの!?」
「べ!別にあんたみたいな、一重のだんごっぱなのしゃくれ顎のワキガの、デブの若ハゲの髪の毛油ギトギトの、片親の在日のトランスジェンダーの、ブレイクダンスだけが取り柄でその一本槍で一年の最初だけ人気者になったけど後々話してて楽しい奴ではない事がバレてじわじわカースト最下層まで落ちた男、全然好きじゃないんだからね!!」
「そこまで言えるなら本当に好きじゃないんだな」


19.誘拐

「ねえ、おじさん!ここどこ!?お菓子くれるって言ったんじゃん!嘘だったんだね!ねえ!」

「うるせえ黙ってろ!」

ドスッ!

「ぐうっ……」



「もしもし、今日は夜になってもお子さん帰って来ない様ですねえ。なんで知ってるかって?お前の息子は俺が預かってるからだよ。今声を聞かせてやる。おい、起きろガキ!」



「わっ!なんだよおじさん!」

「電話に出ろ。てめぇのオヤジと話すんだ」

「え、お父さん!?もしもし、ごめん、僕誘拐されちゃったみたい。助けに来て!…お父さん…なんでだよ…僕だよ!待ってよ!お父さん!あっ…切られちゃった…」

「なんだって!?何故切られた!?」

「お父さんなんで…お父さんは僕の事いらないの…?」

「………待てよ。お前元々そんな声だったか?」

「そんな声ってどういう……え、あれ……ぼく、寝てる間に声変わりしたかも…」

「最悪だ……うわ最悪……金にもなんない声低いガキが一番気持ち悪い……大失敗じゃん……まじで無理……スポッチャ行って帰ろ……」


20.高本君と和田君2

学生服の青年二人が歩いて下校している。

高本「俺ゴールデンウィーク福岡旅行行ってたじゃん」
和田「うん」
高本「でもなんか豚骨ラーメンとかよりマック食べたくなっちゃって、ずっとホテルでマック食ってたわ」
和田「なにそれ〜、月でうんこ見るみたいな話だね」
高本「ある言葉みたいに、なに!?」

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