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「純心と劇薬」編集後記

 こんにちは、りとち(一代螢)です!
 4/30に公開いたしましたボイスドラマ、「純心と劇薬」はもうお聞きいただけましたでしょうか?もし聞いていない場合は今すぐ聞いてください!!!!(無茶振り)
 なぜならこちらの記事は編集後記、ネタバレがたんまりです。作品を聞かずになんとなくこの記事だけ読みたい方はこのままお進み頂いても問題ないのですが、素敵な作品になりましたので聞いていただけると嬉しいです!
作品ページはこちら

 それでは早速、作品についてれていきたいと思います!ドンドンパフパフ!

ストーリー解説

 本作品「純心と劇薬」は、主人公・朝倉美優が、路地裏で黒猫につられてとある老婆と出会うところから始まります。
 作品の最後でも茉莉花がつぶやいておりましたが、美優は子供の頃から大人ぶっていましたが、メルヘンチックな童話や絵本が大好きな、夢見がちな女の子でした。そのため、路地裏で出会った黒猫になにか運命的なものを感じ、思わずついていった先には、謎の老婆、ステラが。
 彼女から渡されたのは、口にした者の不要な記憶を一つずつ消すという不信極まりない“飴玉”。しかし恋人である茉莉花にもっと自分を見てほしい、どれだけ愛の言葉を囁かれても不安で仕方ない美優は、訝りながらもその飴玉を持ち帰ってしまうのでした。
 この飴玉を手渡したステラという老婆は、実は美優の恋人である今作のヒロイン・白鳥茉莉花が演じた架空の人物です。猫はこのあたりで餌をもらっており、餌があれば誰にでもついていくことを知っていた茉莉花。大好きな自身の祖母のモノマネが得意な彼女は、今回の計画を思いつくまでそう時間はかかりませんでした。

 翌日、ステラからもらった飴玉を眺めていると、何も知らない(ふりをした)茉莉花がいつものように教室へ足を踏み入れます。
 いつも一番に茉莉花に声をかけるのは、密かに茉莉花に憧れている松永イツキという運動部員の女子生徒です。学級委員でもあるため、先生の手伝いなどで稀に始業時には教室にいないこともあります(それが物語最後のところですね)が、基本的には茉莉花に会えるのをとても楽しみにしています。
 次に挨拶してくれた男子は林圭介という同じく運動部員の男子生徒。親切で人気者、男版茉莉花のような存在です。ちなみに林君は茉莉花に特別な感情は抱いておりませんが、クラスのみんなから「林くんと茉莉花ちゃんってお似合いだよね」とよく噂をされるため、美優からはかなり警戒されています。

 挨拶を終えて真っ先に美優のもとにかけてくる茉莉花。美優は茉莉花の前ではかっこいい姿でいたいため、慌てず騒がず、「あ、来てたんだ」みたいなお返事をします、かわいいね。ちなみに茉莉花が寝坊するのは夜中に美優ちゃんのこと考えて夜更かししてるからです。この女は大変スケベ。
 ここで美優はステラからかけられた言葉を思い出しつつ、茉莉花に飴玉を差し出します。正直かなり怪しい、しかも人からもらった食べ物を茉莉花に食べさせるのは流石に気が引ける部分もありましたが、それが些細なことに感じる程度には、美優は魔法にすがりたい気持ちでいっぱいだったんですね。茉莉花はもちろん、その飴玉を渡したのは自分だったのでなんのためらいもなく口にします。ちなみに飴玉はたまたま立ち寄ったセレクトショップで購入したもので、もちろん魔法なんてものはかかっていません。ただ、透明で表面には特殊な加工がされており、見た目は占いに使う水晶をそのまま小さくしたような神秘的な雰囲気があったため、ある種の信憑性を表現するにはもってこいの代物だったようです。
 茉莉花に飴玉を食べさせることに成功した美優でしたが、自分に向けられる愛に自信がないため、もし自分に関する記憶が消えてしまったら?と、ここから彼女の不安が大きくなっていきます。

 帰宅後、美優を一番に迎えてくれたのは彼女の母。美優は母と仲が悪いわけではありませんが、年頃と言うこともあり、面と向かって会話をしたり、一緒の部屋にいるとすこし息が詰まるような、そんな距離感です。美優自身母親に愛されていることは理解している、しかしその愛が鬱陶しく感じる年頃ですね。少し長めな反抗期です。
 美優は部屋に戻ると、ベッドに倒れ込み、老婆との会話を思い出します。老婆から言われた言葉は否定したくなるようなものでしたが、すべてが事実。美優は飴玉を渡されたときから、それを茉莉花に食べさせる選択しかすでに残されていなかった。それでも美優は、“こんなものを使わなくても茉莉花の一番は私。だからこそ使っても何も変わらない”と、自分で選択したように強がるのでした。

 翌日から、早くも茉莉花の不要とされる記憶が少しずつなくなっていっていることを感じる美優。もちろんこれは茉莉花が忘れているかのように振る舞っているだけなのですが、日直を忘れていたことは実は本当です。これは美優に聞かれて答えたものではなく、茉莉花は美優以外には“不要な記憶がなくなっていく”という嘘をつく必要がないからです。これだけは、美優が聞いて勝手に勘違いしただけです。
 茉莉花の地道な努力により、魔法を信じ始める美優でしたが、茉莉花の優先順位が変化していることに気づき始め、急に不安が膨れ上がります。裏で茉莉花は美優といる時間が少なくなり美優不足に陥るかと思いきや、彼女は別の方法で美優を観測することができるため、そこまでのダメージではないようです。むしろ美優の意識がどんどん自分に強く向き始めていることにワクワクしていることでしょう……。

 部活を優先する。今まで名字で呼んでいた男子生徒を急に名前で呼び始める。一緒に帰ることをせがまなくなり、ついに。美優が嫌悪している男子生徒・林とともに三人で帰ることを提案され、美優は不安と嫉妬と怒り、悲しみが爆発し、二人の前で声を荒らげます。林はめちゃくちゃびっくりして戸惑っていますが、茉莉花は内心ニッコニコです。林くん的にはクラスメイトである美優とも普通に仲良くなりたいと思い声をかけただけだったので本当に可哀想。
 美優はその後茉莉花から“一番の友達”という現在の自分の立場を思い知らされ、絶望し絶句します。ここから少しの間ノイズが低減するのは、美優が放心状態でもはや何も聞く気がなくなってしまったせいです。

 茉莉花に連れられなんとか帰宅した美優は、母親に呼び止められます。母は本当に心配しており、どうにか力になってやりたいと思っていますが、美優が飛び込んでいった自室の扉を叩く勇気はありませんでした。扉を叩いてしまったら、同時に美優の心も壊してしまうのではないかと考えてしまったのかもしれません。本当に優しい母親なんですこの人は……。
 美優は一人部屋にこもり、茉莉花の言葉を反芻しながら、頭を抱えて苦しみます。その最中、自分の鞄から顔をのぞかせていた飴玉の瓶に気づき、憎しみを込めて壁に投げつけます。
 まだ残っていた中身があたりに散らばり、光を反射してキラキラと。こんなものが、魔法なんかがなければ。こんなものを使ってしまったせいで。美優はとてつもない空虚を抱え、うずくまって泣き続けるのでした。
 そんな美優の姿を、茉莉花は自宅のパソコンで観察していたのです。美優の部屋には実は茉莉花が設置した監視カメラがあり、茉莉花は部屋にいる美優の姿をいつでも眺めることができます。もはや茉莉花に対する縋る想いだけで心を埋め尽くした美優に至極興奮している様子の茉莉花。自分のことを一つも疑わず、魔法などというありもしないものを信じて苦しむ美優の姿に、茉莉花は身悶えしながら悦ぶのでした。

 翌日茉莉花が登校すると、昨日の美優の様子をただただ心配してくれていた林が茉莉花にこっそりと窺うも、茉莉花は昨日のことをさも忘れたようにけろっとした態度で応対し、美優に対しても同じように声をかけます。
 すべてが茉莉花の思惑だということを知りもせず、世界が終わったかのような絶望感を抱えていた美優は、いつもどおりの茉莉花の態度に大きく戸惑いますが、何事もなかったかのように愛をささやく茉莉花の言葉を信じるしかなく、茉莉花に泣き縋ります。
 そんな美優の姿に、茉莉花は至極の笑顔を浮かべるのでした。終わり。

参加キャスト紹介

霜月彗さま(朝倉 美優 役)

 今作の主人公兼ヒロインを演じてくださったのが、いつも仲良くしてくださっている霜月彗さまです。
 今作、美優は完全に彗さんへの当て書きで、彼女の演じるまだ見ぬ少女を浴びたい!!!という想いから、あまり彗さん自体が演じられていないかな?と私が感じているタイプの少女・美優が生まれました。
 演技に関してはほぼ彗さんへお任せしていたのですが、「茉莉花といるときは気持ち男前に、一人でいるときは気持ち少女強めに」というご注文にとっても素敵な演技でアンサーしてくださり本当に感動しました……。
 茉莉花の前ではさも何も気にしてませんけど?というような少しクールな雰囲気を醸し出していて、かつ一人でいるときは、爪を噛んで部屋の隅で体育座りをしてそうな暗い雰囲気。彗さんの持ち味だと私が感じているとても自然な飾り気のない演技の中で感情の機微を演じてくださり、完成品を聞いても改めてこのひとの演技は本当にじんわりとしみてくるなぁ……と浸ってしまいます……。
 あと演技とは関係ないんですが、私は編集がすべて終わってから最終確認的にしかイヤホンで音源を聞かないんですが、いざ完成音源をイヤホンで確認したとき、思いの外びっくりするくらい霜月彗ASMRになっていてフフッとしてしました(笑)
 編集でそれを軽減することもできたのですが、今作は彗さんの素敵な演技を聞いてくれ!!!という気持ちから組み上げたものなので、あえてそのままにしています。あまりにもよかったため……。

弥/ひろさま(松永 イツキ 役)

 物語序盤、茉莉花が教室に入ってきて真っ先に声をかけてくれた女子生徒はひろさんが演じてくださりました!
 ひろさんとは以前にも他の方の企画で共演させていただいていたのですが、自創作「Sugar Box」にて楠木 稔という女性キャラクターを演じていただいたことをきっかけに、こちらからいろんな作品への出演をオファーさせえて頂いております!(ひろさんの演技は前々から大好きだったのですが、当方がはちゃめちゃな人見知り故にお声がけできずにいたところご応募いただき死ぬほどありがたやになっていました。感謝……!)
 今作の松永も、いいね応募の中からお声がけさせていただいたのですが、たった一言の挨拶で花が咲くような明るさで場面を彩ってくださいました。
 彼女の存在は茉莉花が男子ウケだけじゃなくて女子にも人気があるよ!ということを表現するのに必要不可欠だったわけですが、何なら松永自身も人気絶対あるでしょ無自覚に……!と勝手に松永ちゃんのファンになってました。ちなみに松永は茉莉花に憧れていますが、それが周りにはバレていないと思っています。二言目には「白鳥さんって~」と言い始めるので周りにはバレバレです。かわいいね。

藤城ハクさま(林 圭介 役)

 私発企画ではおなじみのハクさんですが、今回はクラスのリーダー的な男子生徒を演じていただきました。
 ハクさんはハイテンションもローテンションもかなり器用に演じられるので、林はどんな感じになるのかな?と密かに楽しみにしていたのですが、少しチャラめだけどとってもいいヤツ!な雰囲気に仕上げてくださいました。
 林は冒頭ストーリー解説でも描きましたが、ただ美優と仲良くなりたいだけ、かつ茉莉花とも普通に友達でワンチャンな下心はまったくないかなりの好青年です。驚き方や笑い方に爽やかさが滲んでおり、さすがだなぁ……という気持ちでいっぱい。
 後半に美優の気持ちが爆発→呆然からの、茉莉花からケロッとした態度で今日は美優ちゃんと一緒に帰るね、のあとの「あ、ああ、うん……また明日……」が個人的にすごく好きです。とても戸惑っていて置いてけぼりな感じが凄く出ていてニッコリ。

田中さま(美優の母 役)

 美優の生活感を演出する上でとっても大事な役回りである美優の母を演じてくださったのは田中さんです!
 田中さんもとあるCV募集時に当方がものすごく惹かれ、いいね募集にてご反応いただけたため個別にお声がけをさせていただいた演者さまです。
 田中さんの演技力の高さを本当に尊敬しておりまして……少し演じるのが難しいと個人的には思っている母親役だったのですが、その距離感や心境をとても丁寧に演出してくださいました!
 母親に対して考察を重ねてくださり、寄り添ってくださる暖かさなど、そのお人柄に私まで包まれました……バブ……。
 美優の母は本当に優しく、しかし年頃の娘とどうやってうまく付き合っていけばいいのかわかりかねており、美優の知らないところで母も苦しんでいると思います。そんな雰囲気まで感じられて、田中さんの演技の情報量がとっても多い……!
 改めて美優の母を演じてくださったのが田中さんで良かったと思えました。
 あと個人的には美優との掛け合いの際、お二人のお声の親和性に驚かされました。本当の……母娘だ……。

一代螢(白鳥 茉莉花、猫、老婆 役)

 最後は当方一代でございます。わかる人は声ですぐ気づいたかと思うのですが、老婆は茉莉花が変装した姿ということで、一代がそのまま演じておりました。ネコチャンも素材を探すよりは普段からウニャウニャ言っている自分で演じたほうが時短だったので……。
 作品として違和感がないように入り込めていたらいいな……と思いながら各キャラクターを演じておりました。

最後に

 今作「純心と劇薬」を聞いていただけた方が何人いらっしゃるか定かではないのですが、聞いてくださった方々の心に少しでも残る作品になっていればいいなと想います。
 改めまして、今作にご出演いただいた演者の皆様、とても素敵な演技とお声でお力添えいただき本当にありがとうございました!!
 今後とも何卒よろしくお願いいたします!(*‘ω‘ *)

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