映画パンフ感想:ヒットマン(2024)
映画『ヒットマン』(2024)の映画パンフ感想。
年代入れているのはなぜかというと、別に『ヒットマン』(2007)というゲームを元にした映画があるからなんですね。(2007は未見なのでパンフの感想を書くことはないが)
本作の原題は「Hit Man」2007年の映画は原題「Hitman」
…分かりにくいわ。
しかし久々に来ましたよ。特殊なつくりのパンフです。
【基本情報】
判型:特殊パンフ(※以下に説明)
価格:1000円(税込)
発行日:2024年9月13日
発行権者:(株)KADOKAWA
発行・編集:(株)ムービーウォーカー
編集:細矢草平(ムービーウォーカー)
デザイン:石井勇一(OTUA)
【企画/編集元の熱意を感じさせる特殊パンフ】
久々に来ましたよ…特殊パンフが(他にあるかもしれませんが)
つくりはこんな感じ。
[本体]
A4横(左綴じ)
24ページ
[カラーページ]
表紙/縦208mm×横219mm(全長)
本文/縦197mm×横272mm(全長)
16ページ
…文章だと分かりにくいので実物の画像をちらっと。
本体とカラーページがドッキングされているんですね。
カラーページで本体を挟む形式になっている。
管理が悪いのでもうすでに折れ曲がり等が発生していますが。(特殊パンフは管理が大変なんよね)
あとは購入されて是非現物を確認してください。
自分では2000強~3000弱のパンフレットを購入していると思う(リスト化サボっているので実数が分からない)が、このパターンはちょっと覚えがない。もう忘れているだけかもしれんが…
【構成】
<本体>
・1ページ:表紙
・2、5、7-8、13-14、19-20、24ページ(裏表紙):映画スチル
・3ページ:導入
・4ページ:物語
・6ページ:グレン・パウエルインタビュー
・9ページ:アドリア・アルホナインタビュー
・10ページ:スタッフ
・11ページ:監督インタビュー
・12ページ:コラム1 リチャード・リンクレイター作品からスターの階段を駆け上がった”兄ちゃん”グレン・パウエル(山崎まどか)
・15ページ:コラム2 なりたい自分に向けた行動をすれば、ゲイリーのようにより良い未来に近づける⁉(浅野昭祐)
・16-17ページ:コラム3 ミックステープみたいに愛情たっぷりの選曲
・18、21ページ:プロダクションノート
・22ページ:ゲイリーとマディソンの猿芝居
・23ページ:キャスト/スタッフ
<カラー部分>
・表紙(二つ折り)本作主人公ゲイリー・ジョンソンの変装"ロン”
・表紙(二つ折り)裏:本作主人公ゲイリー・ジョンソンの普段の姿
・中表紙:HIT MAN マガジン形式の表紙 マディソン・マスターズ
・2-3ページ:キャスト紹介(グレン・パウエル)&キャラクター紹介(ゲイリー・ジョンソン)
・4-5ページ:キャスト紹介(アドリア・アルホナ)&キャラクター紹介(マディソン・マスターズ)
・6ページ:本作主人公ゲイリー・ジョンソンの変装”タナー"
・7ページ:本作主人公ゲイリー・ジョンソンの変装”ニコ"
・8-9ページ:ゲイリーの扮装一覧
・10ページ:キャスト
・11ページ:映画スチル
・12ページ:本作主人公ゲイリー・ジョンソンの変装”ディーン"
・裏表紙(二つ折り)裏:本作主人公ゲイリー・ジョンソンの変装”X"
・裏表紙(二つ折り):本作主人公ゲイリー・ジョンソンの変装"ロン”
長い。
ページ数はHIT MAN マガジンとして振られているページ数に準拠。
裏表紙の裏という書き方は訳分かんねえな…
【内容】
カラーページはグレン・パウエル、アドリア・アルホナ他主要キャストの紹介と演じたキャラクターの紹介ページとして切り出されている。
本体は主演男優女優監督インタビューとコラム3本と充実したつくり。
セピア色のスチールが多すぎると思う方がいるかもしれないが、個人的にはこういうつくりも嬉しい。
・<本体>グレン・パウエルインタビュー
インタビューを読んで驚いたのは、監督とグレン・パウエルは『ファーストフード・ネイション』(2006)(見ているんだけれどもう記憶のかなただ)からの付き合いだということ。もう約20年になる計算だ。
また今作はリンクレイターとパウエルの共同脚本になっているんだけれど、イーサン・ホーク&ジュリー・デルピーとの共作を連想させる。2人とは3作続いたわけで、パウエルとのコラボはまだまだ続きそう。
本作の元になっているのは実在の潜入捜査官のエピソードだが、実際に「元夫に殺される前に殺し屋を雇おうとした」女性の話がキーとなっているというのが興味深い。
・<本体>アドリア・アルホナインタビュー
インタビューは短め。実質半ページ。マディソンは”ファム・ファタール"ではない、というアドリア・アルホナの解釈が面白い。"運命の女"でもあるのだから”ファム・ファタール"でいいのでは。
・<本体>監督インタビュー
本作の着想は実在の潜入捜査官ゲイリー・ジョンソンの記事から得ているそうだ。
記事から元に映画を作成したという意味では『バーニー みんなが愛した殺人者』(2011)以来かな。パウエルと監督が両方同じ記事を読んでいてパウエルの方から声をかけたそう。
共同脚本・男女の関係性の変化を描く(真の自分に会う)という意味では、今作は『ビフォア』シリーズに相通じるものがあるかもしれない。はるかにコメディ寄りだが。
・<本体>コラム1 俳優論として白眉 流石のコラム
過不足のない記述で俳優論として見事なコラムだと思う。さすがプロの仕事。
『ヒットマン』が変身の物語だということ、それが”映画スター”としてのパウエルに重なるということ。
子役出身のパウエルが、リンクレイターが発掘してきた数多くの俳優たちの中でも"テキサス男"マシュー・マコノヒーの系譜に続いていること。
パウエルが隣の家の兄貴だということ(※ボーイネクストドアってことですかね。それだと今では韓流アイドルか)。
また女優を輝かせる俳優でもあること(※コラムには同時期公開のせいか言及がないが快作『ツイスターズ』でも同様の個性が発揮されていたと思う)。
…うん、コラム自体が見事なのであまりうまくまとまらない。魅力が伝わらないね。是非読んで欲しい。
ところでこのコラムのポイントの一つはパウエルのブレイク作である『トップガン マーヴェリック』(2022)に全く触れることなくパウエルの魅力を書き出していることにあると思う。多分意図的。
・<本体>コラム2 心理学者によるコラム
一般企業にお勤め(常設研究員)かつ大学非常勤講師でホラー映画部の部長といういろいろな肩書を持った方によるコラム。
映画に冗長性がない、という指摘には同意。アメリカ映画はすぐ主題に入るのがいいよね。変身がテーマならすぐ変身しなければいけない状況が作られる。
心理学については無知なので類型論と特性論の話が面白い。元妻との会話で出てくるのは特性論で利用される特徴。
・<本体>コラム3 熟練の音楽/映画ライターによるコラム
アメリカ映画の音楽解説では熟練のおなじみの方。
唐突だけれど音楽映画でなくとも、ことアメリカ映画においては必ず選曲に関するコラムを載せて欲しい。
アメリカ映画では音楽(既存曲)が重要なので。
(オレは音楽に疎いのでコラムが載っていると理解が助かる)
リンクレイターの映画はミックステープを作るように選曲がなされているという指摘がなされている。
本作ではニューオーリンズが舞台でニューオーリンズ出身のミュージシャンの曲が使われており、その曲がかかる場面や意味について詳細な解説が行われている。面白い。
ところでコラム中に『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016)で野球部部員が「Rapper's Delight」を一緒に歌うシーンを監督実体験ではないかと指摘するところがある。
リンクレイターは実際にサム・ヒューストン州立大学の大学野球部出身よね。…実体験なのかもしれない。
アメリカに大学野球部出身の映画監督は他にいるんだろうか。(日本には何人かいる)こういうところも特異。
・プロダクションノート
監督とパウエルが同じ記事を読んだことから映画の企画が始まっているが、元記事を書いたスキップ・ホランズワースも監督の友人らしい。
世界が狭い。
あと観客が思う通り、”ディーン"は『ノーカントリー』(2007)のアントン・シガー(ハビエル・バルデム)だし、”X"は『アメリカン・サイコ』(2001)のパトリック・ベイトマン(クリスチャン・ベール)がモデル。
・<本体>ゲイリーとマディソンの猿芝居
劇中で二人が大ピンチに陥る場面でスマホを使って一芝居打った場面の全文(日本語訳)が読める。
・<カラーページ>ゲイリーの扮装
劇中でゲイリーが扮装した別人格(4人分)の外見・服装・言葉(アクセント)のポイントについて解説がなされている。
【評価】
映画パンフレットという文化がこの先どれだけ続くか分からないが、その中でリンクレイター映画で特殊パンフを作ろうという心意気(変身という映画のテーマも絡んでくるのかな)がいい。企画・編集の方を褒めたい。
いわゆる”川勝パンフ”とはちょっと毛色の違う特殊パンフなれど、是非とも購入して自分の目で確かめて欲しい。買え。
さりとて見た目の特殊さだけではなく、内容も映画について理解がかなり深まるものになっていると思う。
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