第一印象の科学

日本語タイトルは「人は見た目が9割」とか「面接での姿勢の作り方」とかのノウハウ本かと思われるが、中身はビッグデータ分析と脳科学と発達心理学の話である。原題のfacevalueは「額面(通り)」の意味があるらしく本の内容をよく表している。

我々は顔を一瞬見るだけで即座にその人の性格や活性度のイメージを作ってしまうらしい。ゆっくり話をしてよく理解してから評価しようという理性的な動きはもちろんあるが、それ以前に顔からのイメージを作り、それに囚われるのだ。(文字通り額面で価値判断してしまう)この顔による一瞬の判断は進化的に脳に仕組まれている。生後数時間の赤ちゃんへの実験で〇が2つ平行位置で上にあり、その下に横棒がある図を長く見つめるのに位置がバラバラだったり白一色(輪郭はある)だったりするとすぐに視線を外す。(これを赤ちゃんの認知実験の時の「選考注視パラダイム」という)さらに女性らしい顔つきの図案に注視時間が長くなる。これは当然、授乳者、世話をしてくれる人への関心の自己アピールの準備になる。この顔認知反応は生得的で生まれながらに持っている。脳のある部分にはこの顔認知ニューロン(おばあさん細胞!)が集積しているいる。もちろん1ケ所ではなく数か所のネットワークを形成しているが、顔にしか発火しない個別ニューロンも観察されている。

この顔ニューロンは成長すると同じ部族の人の顔をより見分けるようになる。持って生まれた200近い音素が言語獲得時を過ぎると失われるのと同じことが顔識別ニューロンでも起こる。使われないニューロン接続システムは削除されてしまう。(成長は足し算だけでなく強力な引き算が働く)同じ部族のメンバーの顔が細かく識別できるのに他部族(遠く離れた集団)の顔識別能がだいぶ落ちる。我々も日本人の顔は細かく識別できるが、外国人の集団の顔識別(同一人物認定)は困難なのである。これを知覚狭窄という。

始めて出会う人の場合、顔を見た瞬間、自分が知っている顔を基準に判断する。見た瞬間(数十ミリ秒)で性格や好悪の感情のイメージができあがる。観相学が言うように顔が全てを語ることはないのだが、我々は顔の印象で相手を判断する認知バイアスを持っている。

以上がこの本から得た知識である。その他断片的には、ダヴィンチのコトバで「画家の欠点のひとつは自分に似た顔を描いてしまう」

目と眉、生え際、額の最上部が顔認識の重要な部分。なじみの顔から目をマスキングするより眉をマスキングした方が同一人物判断の精度が下がる。

迷信的知覚p130

まとまらないが、人の認知バイアスが寄り集まったのがこの顔の第一印象である。・生得的である ・成長のある段階で能力の一部を失う  ・無意識に行っている  ・要素分解できない  ・観相学のように深い分析をしてしまう  ・人種差別を内包している


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