恒大集団(evergrande)事件の概要と今後を投資の視点から整理・考察
負債総額は33兆円。その33兆円、貸借対照表にある負債勘定に記載のある金額で、借金という側面もあるが、不動産など固定資産保有する上での負債という側面がある。とはうえ、事業拡大に必要な資金調達を融資、社債発行などにより行っている。その債務の利払いが出来ないことは今問題となっている。中国国内の投資家に対する信用リスクの低下、抗議行動の広がり等、暫く注視する必要がある問題と思っている。
経営者は大富豪
中国・広東省の深圳市を本社とする不動産開発大手の恒大集団。創業者の許家印(シュー・ジアイン)は、Alibabaのジャック・マー、Tencentのポニー・マーに次ぐ富豪。(写真はフットボールチャネルより)
放漫経営
とにかく手広く事業をする。そのため社債を発行など資金調達を繰り返す経営をしていたとのこと。サッカーチームの買収もその一つで、2011年から7連覇し、ACL優勝2回、そしてCWCベスト4も2回の実績を有する。
下の画像はチームのエンブレム。
また、EV事業に積極的に投資をしていた。集団傘下にEV開発会社「中国恒大新能源汽車集団(恒大汽車)」がある。昨年9月、香港市場において第三者割当増資と発行済み株式の譲渡により合計40億香港ドル(約546億円)を調達したとされる。その際、出資引き受け先には騰訊(テンセント)、滴滴出行(ディディ)、雲鋒基金、セコイア・キャピタル(米国のベンチャーキャピタル)など。そして、恒大汽車の前身は「恒大健康」という香港上場の集団傘下の企業。恒大健康は、病院や老人ホームなどの経営を手がけていた。下の写真は恒大汽車HPより引用
さらにテーマパーク事業も手がけ、テーマパーク部門である「恒大童世界」を通じた観光サービスを行なっている。海南島で進む巨大プロジェクト「海花島」(写真参照)は「中国のハワイ」と呼ばれるている。
問題となる債務は何?
大きく2つに分類でき、一つは日本でいう投資信託(理財商品)の債務不履行、もう一つは不動産です。理財商品を購入した7万人を超える個人及び機関投資家が損失を被り、同集団が関与する契約済みの建設中、建設済みや建支援などの不動産関連に約100万人超に被害があったとされる。このような背景もあり、中国全土で抗議活動は行われて、報道されている。
https://jp.reuters.com/article/china-evergrande-debt-protest-idJPKBN2G9296
今後の動き、救済か破産か
市場経済の原理からすると債務不履行では債権者と債務者の相互で契約に基づき処置をする、つまり破産なり再生の道を探る。その再生にあたり、第三者が救済に乗り出す場合があり、金融の場合は政府機関ということになる。その政府関与の場合、主幹部署である「住宅建設部」が恒大集団を監督する部門となる。しかし、今債務不履行に係る問題では、中華人民銀行(人民銀)と中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は共同声明を出し、事業を聴取している。
恒大は「積極的に債務リスクを解消し、不動産および金融市場の安定維持を図る」必要があると強調。「不動産最大手として、中央政府の策定した戦略的取り決めを真剣に実施」(以下のロイター記事から引用)
https://jp.reuters.com/article/china-evergrande-idJPL4N2PQ49D
人民銀は先日リバースレポにより1200億元の資金供給を市場に対しおこなった。今日(9/23)の債務履行期限(利払い)に必要な元建て債務は330億元である。つまり中国当局は、金融危機に関する問題認識を保持し対応する意思表示と、必要な処置はすると考えることができる。しかし、今まで恒大集団が行なってきた事業が継続可能か含め、集団が存続するかは不明。言論や集会に関し自由のない国大における投資家は抗議行動を、中国当局は取り締まらない。この現状からも、政府当局は関与しないという意思表示をしているとも受け取ることができる。
そう考えると「生かさず殺さず」が当局方針と思え、注視すべきは当面、中国当局の動きでありまだ楽観は出来きる状況にない。